戦後のキーマン・白洲次郎が独立を迷う舞踊家にかけたひと言
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agarieakiko

2019/03/08

首藤、梅津、TAKAHIRO(写真左より)という一流ダンサー3人が集結

 

好きなことを仕事にすべきかどうか――。

 

 2月24日、25日の2日間に渡り、東京・南青山のスパイラルホールで日本舞踊の梅津貴昶、バレエの首藤康之、ヒップホップのTAKAHIROという異なる分野で“踊り”を職業としている3人がトークショー『天才の舞台裏』を開催した。

 

 初日、梅津は「(今までの人生で)嫌なこともいっぱいあるし、良いこともいっぱいあるんですけど、思い出すことと言えば、舞台で拝見したこと、教わったこと。踊りは酸素より大事ね」と語り、TAKAHIROは「ダンスが大好きで、大好きなことを仕事にして大丈夫かなと思ったが、仕事にしたら20年経っていた」と明かした。

 

 学生時代に教師から「好きなことを仕事にすると辛い」と諭され、社会人になっても自分の夢を叶えようと転職しようとすると「そんな世の中は甘くない」と先輩や同僚から説教を食らい、諦めた人もいるかもしれない。

 

 TAKAHIROは著書『ゼロは最強』(光文社)でこう綴っている。

 

ある先生からは「隆博にはできない」「お前には無理だ」と決めつけられたことがある。(中略)「お前には無理だ」という呪いのような文句は、誰かに言われない時でも自分の頭の中に思い出された。悲しいけれど、それは偉い人が言ったことだから受け入れないといけないと思っていた

 

 学生時代、こう思い込んでいた男は23歳の時に単身でニューヨークにダンス留学をすると、全米のコンテスト番組で9大会連続優勝というマイケル・ジャクソンを抜く記録を作り、帰国後は振付師として引く手あまたになっている。周囲の無責任な声より、自分の気持ちに素直になることが大事だと教えてくれた好例だろう。

 

 花柳流、尾上流で舞踊を学んだ梅津貴昶は、34歳の時に「梅津流」を立ち上げる。己の道を邁進できた背景には、戦前は近衞文麿首相、戦後は吉田茂首相の側近として活躍し、日本で初めてジーンズを履いた男と言われる白州次郎の助言があった。

 

「人間は二度とは生きられない、お前は独立したほうがいいね。相手がどう思おうと、ちゃんと挨拶をして、失礼のないようにして」(梅津の著書『天才の背中』より)

 

 トークショーでの3人の話は、好きだからこそ探究心が湧いてくると思わせるものだった。TAKAHIROが「(梅津は)朝、屈伸運動をしながら歯磨きをする。その歯ブラシを扇子だと思っているとおっしゃっていた時に、なるほどなと思いました」と言えば、現在70歳の梅津は「異常ですからね」と事もなげに返した。

 

 話は“骨”にまで及んだ。首藤がTAKAHIROに「生活の中で、すごく骨を意識しているように見える」 と質問すると、「(椅子から立つ時に)足の骨を筋肉として見立てると、すぐ立てるんです。いかに骨を骨として終わらせず筋肉のように意識するかでパフォーマンスも変わってくるんです」と熱弁した。

 

 天才ならではの3人のトーク。好きを突き詰めると、常人にはわからない領域に辿り着ける。

 

『ゼロは最強』
TAKAHIRO/著

 

『天才の背中』
梅津貴昶/著

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