怪異現象に立ち向かう清楚なヒロイン『祭火小夜の後悔』西上心太
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怪異現象に立ち向かう清楚なヒロイン

『祭火小夜の後悔』KADOKAWA
秋竹サラダ/著

 

来期からミステリとホラーの二つの賞が統合され、横溝正史ミステリ&ホラー大賞となるため、日本ホラー小説大賞単独では最後の大賞受賞作となったのが本書である(読者賞も受賞)。

 

物置代わりの旧校舎の床下に潜む得体の知れない何かに遭遇する「床下に潜む」、夜間の就寝中に巨大なムカデのようなモノが部屋に現れる「にじり寄る」、幼いころに交わした契約の履行を迫りに、人間に姿形を変えた何者かが数年おきに現れる「しげとら」。本書の前半にはこの三つの短編が配置され、高校教師、同じ学校の一年生男子と二年生女子のそれぞれが怪異の体験者となる。

 

彼らに怪異の存在や対処法を伝えるのが、やはり同じ高校の二年生の祭火小夜という少女である。後半を占める中編「祭りの夜に」では小夜とこの三人が協力し、小夜と関わり合いのある怪異に挑む。独立したホラー短編としても秀逸な三編を配置することで、脇役たちのキャラクターがより際立つ効果が得られた。学園ものや若者向けの小説にありがちな幼稚さがなく、懐かしさや叙情性を感じさせる和風テイストの作品に仕上がっている。中編を支えるアイデアに驚きはないが、後味の良い読後感が得られたことも収穫だった。清楚なこのヒロインにはまた出会ってみたい。

 

同時に大賞を受賞した福士俊哉『黒いピラミッド』にも駆け足で触れておこう。こちらはエジプトの発掘現場から持ち帰ったアンクによって、悽惨な事件が起きるという、古代の呪いがモチーフの冒険小説風味の作品だ。一歩間違えれば陳腐の一言で切り捨てられる題材を、適度な蘊蓄(うんちく)を鏤(ちりば)めながら、一気呵成に読ませる筆力でしのぎきった。対照的な面白さを持った、賞のラストにふさわしい二作だった。

 

不登校中学生が解く日常の謎


『探偵は教室にいない』東京創元社
川澄浩平/著

 

第28回鮎川哲也賞受賞の本書は、派手だった昨年の受賞作とは正反対。匿名で送られてきたラブレターなど、幼なじみが通う校内で起きるちょっとした事件を、不登校の中学生が解決する地味なミステリ……、と聞いて敬遠する読者も多いかも。かくいう筆者もそうだったが、それは早計というもの。一部の年代だけに向けられたものでもなく、単なる論理パズルに終始することもなく、登場人物の人間性と結びついた推理によって謎が解明されるなど、きちんとした世界が作品の中で確立されている。新たな書き手が挑む「日常の謎」をお楽しみあれ。

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