真の成功者は、「三つの自分」を持ち、自分の中でバランスを保つ。
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agarieakiko

2019/02/22

 

「決定のためには、いろいろな案がなくてはならない。可・否の二案だけでは不足であり、『決定しない』という決定もある」(ピーター・ドラッカー/経営学者)

 

 私が外資系企業A社の香港人役員と打ち合わせをしたときのこと。彼が用意した提案書には、A社が中国企業B社に販売する商品の売価が次のように書いてあった。

 

・一案――単価二一〇円。

・二案――単価二四〇円。ただし、購入数がW万個に達するたびに報奨金X円を供与。

・三案―― 単価二七〇円。ただし、円がドルに対して一円高くなるたびにYパーセント割り引く。

 

 これを見て、B社にとってどの案が最も得なのか見当がつかない私は、率直にその役員に聞いてみた。彼の答えは、

 

「I have no idea.(そんなの知るわけがないよ)」

 

 だったらなんでこんなに複雑な提案をするの?

 

 彼はこう答えた。

 

「人は複数の選択肢を見せられると、つい選びたくなってしまうものだよ」

 

 このとき、A社はB社と料金交渉を続けていたが、なかなか折り合いがつかない状況にあった。そこで、損得が誰にもわからない提案をすれば相手が合意するのでは、と言うのだ。そんな馬鹿な話があるものか、と思うだろう。しかし、結果的にB社はそのひと月後に契約書にサインしたのである。

 

 こう着状態に陥る交渉では、とかく議論が単純化されすぎていることがある。この場合、「いくら値引くのか」にばかり焦点が当たっていた。互いに落としどころが見つからず、ズルズルしているうちに熱も冷めてしまいかねない。そこで、その役員は、B社が大量購入をほのめかしていることと、通貨レートに懸念を持っていることを知り、それらに配慮したかのような「計算式」を用意したのだ。

 

 B社が合意したのは、そのメッセージを理解し、損得が双方ともわからないのも、ある意味公平だと感じたからだろう。

 

 少し角度を変えるだけでも、結果が出せるのだ。

 

 人間も同じ。自分自身についても、多角的に見るべきだ。私にそれを教えてくれた「成功者」がいる。彼いわく――。

 

 いつでも三つの自分を持つこと。

 

 渦中にいる自分。客観視する自分。そして、俯瞰で見る自分渦中にいる自分は必死。ときに感情的。客観視している自分は、冷静に自分に問いかける。上から見る自分は、シーン全体を眺めまわし、相手の反応や場の雰囲気を判断し
ている これで、自分の中でのバランスが取れる。

 

「成功者」はあらゆる角度からものを見ることができるのだ。

 

二者択一で考えず、多様な選択肢を持て。

 

 

以上、『新版 成功する男はみな、非情である。』(いつか著、光文社知恵の森文庫)を抜粋・一部改変して掲載しました。

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