ブラックホールは4種類?――宇宙はなぜブラックホールを造ったのか(5)
ピックアップ

bw_manami

2019/02/26

ブラックホールは単純な天体?

 

星や惑星、銀河などの天体に比べると、ブラックホールはかなり単純な天体です。なぜなら、ブラックホールの性質を決める物理量はたった三つしかないからです。質量、角運動量、そして電荷。たったこれだけです。

 

1 質量

どんな天体も質量を持っています。ブラックホールも例外ではありません。

 

2 角運動量

どんな天体も回転しています。星も、惑星も、銀河までも回転しています。回転しているということは角運動量(回転する能力)を持っていることになります。角運動量を持った天体が重力崩壊してブラックホールになったとすれば、必ずゼロでない角運動量がブラックホールに残されるはずです。ただし、角運動量の極めて小さな天体からブラックホールができた場合は、角運動量がゼロに近いケースもあるかもしれません。

 

3 電荷

例えば星は原子でできています。原子核を構成するものは陽子や中性子、そして電子です。中性子は電気的に中性ですが、陽子はプラスeクーロンの電荷を持ち、電子はマイナスeクーロンの電荷を持っています。ブラックホールができるとき、これらの陽子や電子が持っていた電荷が取り込まれるので、電荷を持っていて当然になります。

 

これしか情報を持たない天体は珍しい。ブラックホール は事象の地平線に囲まれて見えません。しかし、仮に見えたとしても、皆、同じ顔つきをしているので区別がつかないことになります。

 

そのため、この性質は“ブラックホールの脱毛定理(あるいは無毛定理)”と呼ばれています。ホイーラーが解説記事の中で「Black hole has no hair」と言及したことに端を発します。彼は極めて優秀な物理学者でしたが、まるで文学を嗜(たしな)む人のようでもありました。天は二物を与えることもあるということでしょうか。この定理が名付けられたのは1971年のことでした。

 

4種類のブラックホール

 

結局、ブラックホールの基本物理量は、質量、角運動量、そして電荷の三つです。これらの物理量の組み合わせで、ブラックホールは次の4種類に大別されます。

 

 

4種類のブラックホール。角運動量があると回転のために時空の引きずり効果が出てくる。そのため、赤道方向に膨らむが、この領域は“エルゴ領域”と呼ばれている。(出所:谷口義明著『マンガでわかる宇宙「超」入門』(サイエンス・アイ新書)より一部改変して作成)

 

下記の括弧内の年は、解が見つけられた年である。

 

1 シュバルツシルト・ブラックホール(1916年)
  質量だけを持つブラックホール。電荷を持たず、回転もしていない。

 

2 カー・ブラックホール(1963年)
  質量を持ち、回転しているブラックホール。ただし、電荷は持たない。

 

3 ライスナー・ノルドシュトルム・ブラックホール(1916年)
  質量と電荷を持つブラックホール。ただし、回転はしていない。

 

4 カー・ニューマン・ブラックホール(1965年)
質量を持ち、回転していて、さらに電荷を持つブラックホール。

 

ここで、解が求められた年を見ると面白いことに気づきます。まず、質量だけを持つブラックホールであるシュバルツシルト・ブラックホールと、質量と電荷を持つブラックホールであるライスナー・ノルドシュトルム・ブラックホールは、アインシュタイン方程式が発表された1915年から時を経ずに、それらの解が見つけられています。

 

ところが、回転が絡むブラックホールであるカー・ブラックホールと、カー・ニューマン・ブラックホールは、約半世紀の時を経てから、ようやく解が見つけられているのです。

 

これは、ブラックホールが回転していると、途端にアインシュタイン方程式の解法が複雑になるためです。ロイ・カー(1934-)が、いわゆる「カー解」と呼ばれるアインシュタイン方程式の解を見つけた論文はあまりにも難しすぎて、ほとんど誰も理解できなかったという逸話が残っているぐらいです。

 

日本人も活躍しているブラックホールの基礎研究

 

ブラックホールの基礎研究では日本人も活躍しています。現実に存在するブラックホールの種類は上にあげた4種類と考えられていますが、「冨松―佐藤ブラックホール」というものもあります(冨松彰と佐藤文隆が1972年に提案しました)。

 

時空が扁平に歪んでいて、さらに自転しているブラックホールです。自転していない場合は「ワイルブラックホール」と呼ばれます。ただ、これら二つのブラックホールは現実には存在しないと考えられています。それは、特異点がむき出しになるためです。ブラックホールの世界では、これは禁じ手なのです。

 

 

以上、『宇宙はなぜブラックホールを造ったのか』(谷口義明著、光文社新書)から抜粋し、一部改変してお届けしました。

関連記事

この記事の書籍

宇宙はなぜブラックホールを造ったのか

宇宙はなぜブラックホールを造ったのか

谷口義明(たにぐちよしあき)

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitterで「本がすき」を

この記事の書籍

宇宙はなぜブラックホールを造ったのか

宇宙はなぜブラックホールを造ったのか

谷口義明(たにぐちよしあき)

RANKINGランキング