美少女、その一瞬の永遠『夢の迷い路』西澤保彦
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bw_manami

2019/04/02

 女優、佐倉(さくら)しおりさんの出演作として有名なのは映画『瀬戸内少年野球団』やTVドラマ『アリエスの乙女たち』あたりだろうか。どちらもわたしは観ていない。佐倉さんが女優業のみならず歌手活動もされていたことも今回ウィキペディアで調べて初めて知った。我ながらあまりにも無知すぎる。ファンなどと口が裂けても自称できないのはもちろん、佐倉さんの話題を取り上げること自体、はばかられるくらいだ。が、しかし。

 

 一九八四年に劇場でたまたま観た『瀬戸内少年野球団』の予告編、そこで目の当たりにした少女、佐倉しおりさんは当時二十四歳だったわたしにとって、なにからなにまで規格外と圧倒されるばかりに美しかった。その強靱で中性的なイメージはいまなお鮮烈に心に残っている。それほど衝撃的だったのならなぜ肝心の映画もドラマも未見のままなのか、我ながら不思議で仕方がない。その後のPENTAXのCMにしてもテレビで何度か目にしているはずなのだが、佐倉さんがどんな衣装を着けていたのかとか詳しい内容はよく憶えていない。Vシネマなどに活動の場を拡げていたことなどもまったく知らなかった。現在までこれほど無関心なままでいる己れに愕然(がくぜん)となるが、逆に言えばわたしにとっての佐倉さんの魅力はあの映画の短い予告編に凝縮されている。いやむしろ、そこにあるものが全てだった、ということなのだろう。四十歳以下の女性には興味を抱けないと公言する自他ともに認める熟女趣味の自分にも、こんな中学校に上がるか上がらないかの年頃の少女にときめく感受性が隠されていたのか、と。そういう意味でも衝撃的だった。

 

 イメージキャスティングとかモデルとして語るのは少し的外れになるかもしれないけれど、本書『夢の迷い路』のヒロイン、読書熱中少女エミールこと日柳永美(ひさなぎえみ)のキャラクター造形や描写に、あの一九八四年の佐倉さんの一瞬にして永遠のインパクトが大きく影響しているのはたしかだ。

 

 

『夢の迷い路』
西澤保彦/著

 

本好き美少女エミール&ジャンク映画フリーク男子ユッキー。置き去りにされた古い事件の話を当事者から聞かされ、二人の高校生が辿りついた真相とは!? 記憶違いと忘却で、こんがらがった謎をほぐします。追憶と慕情の本格ミステリー。

 

PROFILE
にしざわ・やすひこ
1960年、高知県生まれ。’95年、『解体諸因』でデビュー。近著は、『回想のぬいぐるみ警部』『帰ってきた腕貫探偵』『悪魔を憐れむ』『幽霊たち』など。

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