SWOT分析から戦略は生まれない? ビジネスパーソンが陥りがちな“フレームワーク病”(後編)
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あなたは、経営戦略の勉強を、「経営手法やフレームワークを覚えること」で終わらせていませんか? 昨今の日本では、毎年のように新しいビジネス用語やフレームワークが海外から輸入され、関連する書籍の出版やセミナーが盛んに行われている。しかし、それらには限界があり、一見客観的に見える手法に実は作成者の意図が潜り込んでいるといった数々の“落とし穴”が潜む。こうしたフレームワークの「正しさ」と「危うさ」を解説した光文社新書『ビジネス・フレームワークの落とし穴』が発売されました。
本書から(1)経営戦略 (2)マーケティング (3)組織・人事 (4)財務・M&A (5)その他 の5つの場面におけるフレームワークとその“落とし穴”を抜粋し、全4回に分けてご紹介します。
今回は、前回に引き続き「SWOT分析」の“落とし穴”について、特に「クロスSWOT分析」に着目していきます。

 

 

■クロスSWOT分析(SWOT Diagram)

「“戦略が自動的に作れる”魔法のマトリックス」

 

 

SWOT分析をベースに、よりシステマティックに戦略を導くために開発されたマトリックスが、クロスSWOT分析である。SWOTダイヤグラムと呼ぶ人もいる。またハインツ・ワイリックは、「TOWSマトリックス」と呼んでいる(Weihrich 1982)(1)。

 

これは、環境分析の機会・脅威と資源分析の強み・弱みを掛け算し、「強み(S)×機会(O)」「強み(S)×脅威(T)」「弱み(W)×機会(O)」「弱み(W)×脅威(T)」の4つのセルを作り、その箱の中で強制発想的に戦略を考えていく手法である(図表6)。

 

アカデミックな分野ではまず登場しないが、実務ではしばしば登場する分析でもある。

 

「強み(S)×機会(O)」は、自社の強みを活かして、どう機会を取り込んでいくかを考える。

 

「強み(S)×脅威(T)」は、自社の強みで脅威を克服し、場合によってはそれを機会に換えることを考える。

 

「弱み(W)×機会(O)」は、自社の弱みを克服し、機会を上手くとらえる。「弱み(W)×脅威(T)」は、自社の弱みを克服し、脅威のマイナスの影響を最小限におさえる。

 

図表7は、前回(第1回の記事のURLを貼ってほしいです)図表4で示したSWOT分析をもとに、クロスSWOT分析をしたものである。

 

注1 Weihrich H . (1982) “The TOWS Matrix: A Tool for Situational Analysis,” Long Range Planning Vol.15, No.2.

 

 

このように掛け算するだけで自動的に戦略が策定できたら、企業の戦略スタッフや経営コンサルタントは要らなくなってしまう。

 

クロスSWOT分析で簡単に戦略が構築できると考えたら、大火傷をする。経営学のテキストも、ただのハウツー本になってしまう。

 

ところが、クロスSWOT分析は、企業の研修では大変重宝されている。特にエンジニアの多い企業では、このフレームワークを教えると、“水を得た魚”のように、受講者は“戦略作り”を始める。

 

戦略の立案という仕事に縁の薄い現場のエンジニアにとって、戦略を考えろと言っても、方法論がないとイメージが湧かない。そんな時にクロスSWOT分析を知ると、飛びついてしまうのである。

 

エンジニアは、「方程式が分かれば解がある」という教育を長年受けてきたことから、ここでも「正解のある戦略」を探しに走ってしまう傾向がある(これは、エンジニアが悪いのではなく、日本の教育システムに問題がある)。

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