「ブルー・オーシャン」は本当に未知の市場なのか?
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あなたは、経営戦略の勉強を、「経営手法やフレームワークを覚えること」で終わらせていませんか? 昨今の日本では、毎年のように新しいビジネス用語やフレームワークが海外から輸入され、関連する書籍の出版やセミナーが盛んに行われている。しかし、それらには限界があり、一見客観的に見える手法に実は作成者の意図が潜り込んでいるといった数々の“落とし穴”が潜む。こうしたフレームワークの「正しさ」と「危うさ」を解説した光文社新書『ビジネス・フレームワークの落とし穴』が発売されました。
本書から(1)経営戦略 (2)マーケティング (3)組織・人事 (4)財務・M&A (5)その他 の5つの場面におけるフレームワークとその“落とし穴”を抜粋し、全4回に分けてご紹介します。
第3回目の今回は、2005年頃に話題になり日本企業に多くの示唆を与えた「ブルー・オーシャン」戦略の“落とし穴”を探ります。

 

 

■ブルー・オーシャン(Blue Ocean)

「事後説明用のフレームワークから脱却模索中」

 

日本で2005年に初版が出版されたキム&モボルニュの『ブルー・オーシャン戦略』が売れ、新しい事業を考える時には、すでに競合企業で満杯の「レッド・オーシャン」ではなく、誰もいない「ブルー・オーシャン」市場を目指すべきだと言われてきた。「レッド・オーシャン」は既存市場、「ブルー・オーシャン」は未知の市場と定義されている。

 

また同書では、従来の戦略論は、レッド・オーシャンでの競争を重視してきたとも述べられている。

 

横並び志向の強い日本企業では、すでに同業他社が多数いる市場に後発で参入し、結果的に価格競争になり、赤字を計上するケースが少なくない。意思決定の際に、前例や同業他社の動向を気にする企業が多いからである。そのためブルー・オーシャン戦略は、日本企業に多くの示唆を与えてくれた。

 

また、ブルー・オーシャン戦略を構築するフレームワークとして、「戦略キャンバス」と「4つのアクション」という方法論が示された。

 

戦略キャンバスは、既存業界の企業が与える価値と、新規参入者が与える価値を比較した図であり、新規企業が顧客に与える価値を一目で“見える化”したものである。

 

後者の「4つのアクション」は、従来の業界の常識から (1)取り除く、(2)減らす、(3)増やす、(4)付け加えることによって、新しい価値を提供する方法を考えるものである(図表14)。

 

 

……………………………………

 

しかし『ブルー・オーシャン戦略』で紹介された企業は、もともと既存業界のプレーヤーとビジネスモデルが違う企業ばかりである。

 

例えば同書で紹介されたシルク・ドゥ・ソレイユは、既存のサーカスとはビジネスモデルが全く違い、“サーカス業界”の企業とは呼びにくい。「サーカスを観に行こうか、シルク・ドゥ・ソレイルユを観に行こうか」と迷う人はほとんどいないと思われ、既存企業との比較を後づけ的に行うことは、どれだけ意味があるだろうか?(図表15)

 

 

ブルー・オーシャンは、既存業界と次元の異なる価値を提供するから生まれるものであり、それを既存業界の企業と比較するのは、そもそも意味が薄い。

 

逆に言えば、ブルー・オーシャンを開拓した企業の成功を見て、後づけ的に戦略キャンバスを描くことはできる。従って「戦略」とは銘打っているが、事前に“ブルー・オーシャン戦略”を立てるのは難しい。

 

戦略策定にブルー・オーシャン戦略を使うプロジェクトが進行中のようであるが、今後を見守ってみたい。

 

また4つのアクションのいくつかは、ブレーン・ストーミングの考案者として知られるA・F・オズボーンが提唱した発想法((1)転用、(2)応用、(3)変更、(4)拡大、(5)縮小、(6)代用、(7)置換、(8)逆転、(9)統合)と類似しており、さほど新しい概念とは言えない。

 

新製品・新サービスのアイデアを考えるのと同じ手法で、ブルー・オーシャン市場が発見できるのであれば、この4つのアクションは、もっと普及して良いはずであろう。

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