『織田一(おだいち)の男、丹羽長秀』著者新刊エッセイ 佐々木功
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2019/06/19

覇王信長を支えた「真面目男」の記

 

「織田信長を知っていますか?」

 

こう聞けば、ほぼ全ての方は頷くでしょう。その印象は、天才、革命児、非情、独善等々、様々でしょうが。

 

「では、丹羽長秀(にわながひで)という人物を知っていますか?」

 

ああ、随分減ってしまいますね。いや、そうでしょう。

 

そんな有名人の陰に埋もれてしまう人物にたまらない興味がわいてしまう変わり者の私です。偏屈が高じて書き、幸運にも作家デビューとなったのは、信長家臣の滝川一益(たきがわかずます)を描いた作品でした。この一益、史実では地味なのですが、諸説では「忍者武将」という抜群な個性の持ち主です。小説にしがいのある男でした。

 

その本を気に入ってくれた光文社編集F氏と練った構想。しぜん、題材はマニアックな人物を掘り出すこととなります。なかなか渋く通好みの武人が我々の前に並び立ちました。そんな中、「一益、信長と対等に話せるってすごいですね」という、F氏の言葉が鍵になりました。

 

信長とはいえ、人。なら、気の置けない「友」もいたはずではないか。しかもそれは、忍者だの、牢人だのというアウトローではない、もっと近い者の中で。

 

現れたのが、側近中の側近、丹羽長秀でした。

 

しかし、なんとも地味で真面目な、そしてかなりの好人物です。教科書から「川中島(かわなかじま)の合戦」が消えるかもしれないというご時世。戦国史で著名というのは、信長、秀吉、家康といかに絡み、争ったか、です。信長にはひたすら忠実に仕え、秀吉、家康とは戦っていない。これでは、面白くありません。

 

でも、己のために動く者ばかりの乱世に、こんな男がいて、生き残った。それこそがドラマなのではないか。

 

実直で鳴らした男が、無二の主(あるじ)を失くしどう動いたのか。そこに謎もあったのではないか。歴史に影はないのか。

 

そんな想いで描き、史実を紡ぎ、繙(ひもと)く物語となりました。

 

沢山、賛否のお言葉があれば、嬉しい限りです。

 

『織田一(おだいち)の男、丹羽長秀』
佐々木功/著

 

織田家随一の活躍を果たしてきた丹羽長秀。その右筆・太田牛一は、長秀の記を秘かに残そうとする。本能寺の変で窮地に立たされた長秀だが、信じるべき未来を見据え、ある秘策を立てていたのである……。男たちの熱い生き様を描いた、新鋭による戦国秘史!

 

PROFILE
ささき・こう
大分県大分市出身。東京郊外に育つ。早稲田大学第一文学部卒業。『乱世をゆけ 織田の徒花、滝川一益』で第9回角川春樹小説賞を受賞しデビュー。他に『慶次郎、北へ 新会津陣物語』。

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