日本になぜ「男子医大」は存在しないのか? 女医が語る医師業界の建前と本音
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bw_manami

2019/07/10

2018年7月――東京医大の入試不正事件をきっかけに明るみに出た、女性の医学部受験者への減点操作。フリーランス麻酔科医として政治家・プロスポーツ選手・AV女優など様々な患者の手術を行い、ドラマ『ドクターX~外科医・大門未知子~』(テレビ朝日系)
など医療ドラマの制作協力にも携わる著者が、今まで誰も公言できなかった女医問題の真実を語る光文社新書『女医問題ぶった斬り!~女性減点入試の真犯人~』が刊行!これを記念して、本書の一部を公開します。東京医大事件は何を世に問うたのか? 第3回です。

 

 

◆若い学生が欲しい医大側

 

今回、女性差別ほど問題視されなかった多浪差別だが、基本的に医大入試では、就職試験と同様に、若い受験生ほど好まれる。

 

かつて東海大学医学部は、米国のメディカルスクール(大学を卒業後に4年制の医科大学院を修了して医師になる)を手本にして、「医学部3年次(その後4年間で卒業できる)から40名の学士(4年制大学を卒業した人)編入者」を受け入れていたが、効率的に医師免許を取得した後は、母校の大学病院の医師不足を気にせず、早期開業や美容クリニック就職を果たす者が相次いだらしく、2018年度編入試験では「1年次後期(その後5.5年で卒業できる)から15名」に枠を縮小している。

 

多浪受験生や社会人を経験した再受験生の扱いは、医大によってかなり違う(らしい)。

 

ネットを検索すると「3浪以上が皆無」やら「3~4浪やら40代再受験生もゴロゴロいる寛容な医大」のような内部情報がザクザク発見できるが、学長の交代などを契機にガラリと方針が変わることもよくある(らしい)。

 

2018年、東京医大発の一連の騒動を受けて、13年前に群馬大学医学部を55歳(当時)で受験して高得点を叩き出すも不合格になり、裁判に訴えたが棄却された女性が再び注目されて、いくつかのメディアに登場した。

 

68歳になっていたが、医大不合格の理由についての公式な説明は、結局のところなかったそうだ。「年齢差別だ! けしからん!」「医大卒業時に60代なんて使い物にならない、税金を投入するのだし不合格は当然」「不合格は当然だが、大学は予め募集要項に明記すべきだった」と、SNSの匿名コメントは3つに分かれた。

 

自衛官として募集されて、入学と同時に就職する防衛医科大学校は、かねてより「入学時に21歳未満(2浪以内)」と募集要項に明記されており、東京医大騒動を経験した後でも2019年度の募集要項を変更しなかった。

 

しかしながら、他に若年者優遇を公言する医大はない。

 

◆過疎地域出身者に加点も

 

また今回の騒動では、神戸大と金沢医科大学が、地域枠入試で特定地域(過疎地域)の出身者に加点したことが判明して、文科省に「不適切入試」と認定されている。

 

「神戸大医学部の入試で、灘高校のような名門私立進学校と僻地公立高出身者が完全学力競争をすれば、後者はまず合格できないんじゃ……」と、私は思ってしまったが、「予め明示していない加点」が問題となったらしい。2校とも、謝罪記者会見を開催して、追加合格者を発表した。

 

医大入試における地域枠とは、地方の医師不足を受けて、「卒業後に指定地域で一定期間(9~11年)働く」「義務年限を終了すれば返還しなくてよい奨学金を貸与」という自治医大のミニチュア版のような制度で、多くの医大では一般入試より偏差値的には低くなる。

 

2018年度入試では「医大定員合計の9419名のうち15~18%程度が地域枠」と推定される。「受験テクニックを磨きぬいた都会の進学校出身者」よりも「地元高校現役トップ層」を優先させる構造になっている。

 

◆女子医大はよくても男子医大はペケ

 

2018年11月、一連の騒動を受けて、全国医学部長病院長会議は「大学医学部入学試験制度に関する規範」を発表した。要約すると以下のとおりである。

 

男女差別:厳禁、ただし、東京女子医大は「国民が広く承認している」ことから容認
浪人年数(年齢)による減点:厳禁
内部進学、同窓会子弟、推薦、学士編入、帰国子女枠:予め要件を明示すれば容認
地域枠:(出身地による加点)予め要件を明示すれば容認
また地域枠内の男女差別は厳禁だが、予め明示された年齢制限は容認

 

東京女子医大のように「男性は100%不合格」の医大が容認されるならば、予め明示すれば男子医大や男女別定員枠医大入試は可能なのだろうか?

 

現在のところ、東京薬科大学には男子部と女子部があり、男女半々となるように募集定員が予め設定されており、文科省も容認している。これは、同校が東京薬学校(男子校)と上野女子薬学校が合併したという歴史的経緯に由来する。

 

同様に、防衛大学校の採用試験では、「1学年300名のうち女性35名」と定めており、これも防衛省に容認されている。

 

また、2016年度に医学部が新設された東北医科薬科大では、開設の際に「男子校にしたい」という強い要望があったらしい。

 

同校は東北地方の医師不足対策として設立された経緯があり、僻地の厳しい勤務に耐えられる男性医師の養成を自治体病院などから強く求められていたことが推察される。

 

しかしながら、同年の第五回医師需給分科会の会議録では、全国自治体病院協議会会長の蓮見公雄氏が、「東京女子医科大があるなら東北男子医大に」と要望したが「憲法違反とか何とか言ってペケされました」との発言が記されている。

 

国立お茶の水女子大学は合憲だが、防衛大学校や防衛医科大学校が女子学生を受け入れないのは違憲と問題視されるのが今の日本社会である。

 

今後、男子医大や男女別定員を新設することは、ポリティカル・コレクトネス的には厳しそうである。

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女医問題ぶった斬り!

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筒井冨美(つついふみ)

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