『天災は忘れる前にやってくる』著者新刊エッセイ 鳥飼否宇
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天災vs.天才

 

誰しも一度は耳にしたことがあるであろう「天災は忘れた頃にやってくる」という箴言(しんげん)は、物理学者であり、夏目漱石と交流のあった文筆家としても知られる天才、寺田寅彦のことばだと言われています。彼が生きた明治から昭和初期にかけて発生した大規模自然災害をざっと振り返ってみても、磐梯山(ばんだいさん)の噴火、濃尾(のうび)地震、明治三陸地震、桜島の大正大噴火、関東大震災、室戸(むろと)台風などが起こっており、とても忘れる暇などなかったのではないかと思われます。ようするに日本は、昔から自然災害大国だったのです。

 

連作『天災は忘れる前にやってくる』は、そんな自然災害大国である日本を舞台にして書いた、災害てんこ盛り本格ミステリです。大地震、火山の噴火、大雪による孤立、強風と火事、河川の氾濫、竜巻の襲来、巨大台風という自然災害と、なんらかの人為的な事件がからみあって話が展開していきます。洪水で流される家の中で他殺死体が見つかったり、竜巻で巻きあげられた首と足先のない死体が教会の十字架に突き刺さったり、そんな不可解な事件ばかりが起こります。

 

事件の謎を解くのは、ネットニュースのコンテンツ制作会社の代表・郷田(ごうだ)と、その下でアルバイトとして働く三田村(みたむら)という少々怪しげなコンビです。自然災害を引き寄せる天賦の才能を持ち天災ハンターと呼ばれる郷田は、洞察力にも恵まれており、神の如き推理で謎に満ちた事件の真相を解き明かします。郷田にこき使われる立場の三田村はいわばワトスン役ですが、門前の小僧を実践していつしか郷田を上回る推理力を発揮します。彼もまた天才なのかもしれません。

 

自然災害というとどうしても暗い話題になりがちですが、本作はあえてコミカルに描くことで、災害に翻弄される人々の人間模様に迫ってみました。イクタケマコトさんによる装画も明るく元気のあるものに仕上げていただきました。ひとりでも多くの読者の方に楽しんでいただけたら幸いです。

 

 

 『天災は忘れる前にやってくる』
鳥飼否宇/著

 

「特ダネ ゴーダニュース」の代表・郷田とバイトの三田村智己は災害現場へ突撃取材するが、なぜかいつも災害の陰に怪しい事件が! ブラックなギャグとダークな欲望が軽快に展開し、意表を突くトリックと鋭い推理満載の傑作ミステリ。

 

PROFILE
とりかい・ひう
1960年福岡県生まれ。第21回横溝正史ミステリ大賞優秀賞受賞作『中空』でデビュー。2016年『死と砂時計』で第16回本格ミステリ大賞(小説部門)を受賞。『隠蔽人類』『とり研の空とぶ事件簿』など著書多数。

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