不登校を生む教育現場の課題(1)「私立」「女子校」の闇――子どもが不登校・ひきこもりにならない/から脱出するための子育て術
ピックアップ

2019年5月。元号が平成から令和に変わり、日本中が新しい時代の幕開けに心躍らせていた矢先に起こったのが、スクールバス襲撃や元農水省幹部の長男刺殺といった「ひきこもり」に関連した凄惨な事件の数々でした。若者の不登校・ひきこもり問題に30年以上支援活動を続け、延べ1万人以上の生徒を立ち直らせてきた著者が、事例を踏まえて解決の糸口を贈る『不登校・ひきこもりの9割は治せる』(7月18日発売・光文社刊)より、不登校を引き起こす教育現場の内情についてご紹介します。「私立高校」、「女子校」編です。

 

 

◆私立高校ならではの事情

 

不登校の問題は、公立と私立のどちらに進学しても起こるものです。

 

しかし、長年、東京都内で指導してきた私の経験上、中高一貫の私立進学校に問題があるように感じます。

 

私立進学校が多い東京都の地域的な傾向もありますが、相談に来る生徒は、難関大学に合格者を大量に送り出す進学校に在籍している場合が非常に多く、約9割を占めます。

 

これまで当会に相談のあった生徒の在籍校をあげると、東京大学合格者数ランキングに名前が出ているような私立御三家をはじめとする有名進学校や、有名大学附属校の名前がこれでもかというくらいたくさん出てきます。関東だけで100校以上にのぼり、どの私立進学校でも起こっている問題といえます。

 

実際、不登校の相談を受けて、その子どもの通う私立学校側へ「一緒に問題を解決しよう」と話し合いに行くこともあります。学校によっては、話を聞いてくれるところもありますが、「うちはうちでやりますから」というところも少なくありません。

 

顕著なのは英語です。私立校の英語の進度は公立と比べると非常に速くなっています。中1のうちから高校の指導範囲の文法を教えたりするほどです。

 

進学校の先生たち自身も、特に英語の授業に問題があると思っているようで、私に愚痴をこぼすこともあるくらいです。

 

2020年度に実施される大学入試改革では、英語はリスニング(聞く)・スピーキング(話す)・リーディング(読む)・ライティング(書く)の4技能が必要になりますが、いまだにリーディングの文法中心に授業している学校ばかりです。もっとリスニングやスピーキングを重視した楽しい授業をするべきだと私は思っています。

 

また、成績が低下した後のフォローも十分とはいえません。

 

学校によっては補習などを一生懸命にしてくれるところもありますが、補習がない場合もあり、ひどい場合には、「授業についてこられないなら転校したほうがあなたのため」と辞めることを促す場合もあります。

 

俗にいう「肩たたき」です。学校の授業についていけず、学校は面倒をみてくれるどころか、辞めるように勧めてくる、または、辞めるように仕向けてくる。そんな状況では、いつ不登校になってもおかしくありません。

 

また、成績が悪いわけではなく、成績上位にいても、大学受験へのプレッシャーや、周囲の「いい大学に行くのが全て」という価値観に押しつぶされて、不登校になってしまうケースもあります。

 

◆女子校の闇

 

私立校が不登校を生むもうひとつの現状に、女子校独特の問題があります。公立校の多くは共学なので、女子校といえば私立であることが多いです。

 

女子間でのトラブルは(私が男だからかもしれないですが)、男子間でのそれよりも目に見えにくい印象です。もちろん校風にもよりますが、閉鎖的な環境だと陰湿なトラブルに発展しやすいです。

 

女子同士のいじめにあって、不登校になった生徒の実例です。

 

【アスカさんの事例】

 

(現在高校1年生。中学までは共学の公立校で、高校受験で女子校に入学、いじめを受けて不登校になり退学、現在は通信制高校に在籍)

 

アスカさんは中学の部活で経験した、女子だけの雰囲気に居心地のよさを感じていました。見学に行った女子高でも先輩たちが生き生きとしているように見えて、制服がかわいかったこともあり、第1志望ではなかったものの、その女子高を受験したそうです。

 

入学した直後は、女子同士なので素が出せて楽しく、すぐに友達と仲良くなったといいます。悩み相談もしやすく、男子の目がないので思い切った挑戦もでき、部活での先輩後輩の仲の良さも嬉しく思っていました。

 

しかし、アスカさんと友達の間で、あるトラブルが発生すると、急に地獄に落ちたかのような気分を味わったというのです。相手の気が強すぎて、アスカさんへのいじめの歯止めがきかなくなったそうです。

 

いじめはまわりの生徒にも伝染していき、アスカさんはクラス全体の雰囲気に耐えられなくなりました。自分が思い描いていた女子校ライフと現実があまりにも違い、学校を休みがちになり、不登校で退学へ追い込まれました。

 

また、学力の高い女子校では、大学合格実績をあげようとするあまり、男子校以上に多くの課題を課している学校が一部あります。

 

女子短大が廃止されたり、女子大学の人気が低下してきたりしているのに比例して、女子中学校や女子高校の人気も低下しています。

 

それを食い止めるには、大学合格実績をあげることが必要なのです。そのため、勉強面での厳しさから、脱落する生徒が出てしまうのです。

 

さらに、女子校ではOGが卒業後にその学校の教師として戻ってくることが多いのも特徴ですが、そういったOGの先生が幅を利かせていて、生徒をいじめているケースもあります。「私の時代ではこうだったのよ」と立場を利用して、逆らえない生徒を追い詰めていくのです。

 

私が相談を受けたケースでは、小学校から高校までの一貫女子校でした。先生の評価がないと進級してコース別になる時に上のコースに進級できないので、先生に逆らえず、理不尽ないじめに苦しんで不登校になったという生徒がいました。

 

先生がOGでない場合でも、同性同士の妬みなどがあるのでしょうか、特定の生徒への嫌がらせが続くケースもあります。

 

◆ひきこもりに男子が多い理由

 

ここで、女子の不登校・ひきこもりの傾向を述べたいと思います。

 

全般的に、不登校やひきこもりの調査などでは男女比が約7対3となっていることがほとんどで、当会でも、在籍者・相談者ともに8対2の男女比率になっています。

 

ひきこもりは男子のほうが多く、女子のほうが少ないのが現状です。なぜなら、ひきこもりになる原因のひとつに父親の不在があるからだと私は考えています。

 

仕事で忙しくて家に父親の存在感がなかったり、単身赴任だったりすると、男子は父親による制御がききません。父親がガツンと言えば、お父さんが怖くて不登校でも学校に戻っていくケースもよくあるのですが、お父さんがいないのでそれがありません。

 

すると男子はお母さんに対しては「うるせえ、ババア!」などと言って手を出すことすらあります。結局お母さんの手に負えなくなって相談に来るケースがほとんどです。

 

一方、女子の場合は、父親不在でも、女同士でお母さんと仲良くショッピングしたりできることが多いので、お母さんの制御がある程度働き、不登校やひきこもりにまで至らないですむことが多い傾向を感じます。

 

女子の不登校の多くは、同性間のいじめが発端になっています。経験則ですが、女子のいじめは陰口が主です。

 

表面上は先生のいうことを聞いて仲良くやっていても、SNSや裏サイトで「死ね」「バカ」などと書き込んでいたりします。相談を受けたなかには、訴訟沙汰になったケースもありました。こういった陰湿ないじめのせいで学校から足が遠のき、次第に勉強にもついていけなくなってしまいます。

 

男子は自らサボって成績不振を招いているケースがほとんどですが、女子の場合は成績不振になってしまった発端がいじめであることが多いようです。

関連記事

この記事の書籍

不登校・ひきこもりの9割は治せる

不登校・ひきこもりの9割は治せる1万人を立ち直らせてきた3つのステップ

杉浦孝宣(すぎうらたかのぶ)

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitterで「本がすき」を

この記事の書籍

不登校・ひきこもりの9割は治せる

不登校・ひきこもりの9割は治せる1万人を立ち直らせてきた3つのステップ

杉浦孝宣(すぎうらたかのぶ)

RANKINGランキング