今日から変える子どもへの接し方 3つのポイント(1)――子どもが不登校・ひきこもりにならない/から脱出するための子育て術
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bw_manami

2019/08/23

2019年5月。元号が平成から令和に変わり、日本中が新しい時代の幕開けに心躍らせていた矢先に起こったのが、スクールバス襲撃や元農水省幹部の長男刺殺といった「ひきこもり」に関連した凄惨な事件の数々でした。若者の不登校・ひきこもり問題に30年以上支援活動を続け、延べ1万人以上の生徒を立ち直らせてきた著者が、事例を踏まえて解決の糸口を贈る『不登校・ひきこもりの9割は治せる』(7月18日発売・光文社刊)より、子どもに対する親のあり方、関わり方をご紹介します。

 

 

◆ひきこもりは日々の接し方の積み重ねで起きる

 

当たり前ですが、不登校やひきこもりに、ある日突然なるわけではありません。

 

たくさんの不登校やひきこもりの子どもを見ていると、小さいころからの親の接し方が、その原因になっていると感じます。今に始まった問題ではないのです。

 

不登校・ひきこもりから脱したいと相談に来るお父さんお母さんに、最初にお願いするのは、子どもへの関わり方を変えることです。こうなってしまった大きな原因のひとつは親の接し方だと私は思っています。

 

具体的には次の3つの接し方が重要です。

 

(1)親(特に父親)が本気で向き合う
(2)無条件の愛情で接する
(3)甘い対応はしない

 

◆子どもへの関わり方(1) 親(特に父親)が本気で向き合う

 

親の関わり方でまず絶対に必要なのは、親が本気で向き合う姿勢です。

 

最初に相談へ来るのは、圧倒的にお母さんが多いのですが、私は必ず「次回はお父さんと一緒に来てください」と伝えます。ここでお父さんがちゃんと来るかどうかに、親の本気度の違いが出るのです。

 

お父さんが本気を出さなくては、不登校やひきこもりから立ち直れるわけがありません。

 

前述したように高学歴のエリートが多いのが、不登校・ひきこもりの子どものお父さんの特徴です。「仕事が忙しいから子どものことは妻に任せている」などと言って逃げているようでは、子どもは立ち直ることができません。本気で子どもにぶつかっていかなくては、子どもは変わらないのです。

 

私のところへ相談に来るお父さんには大学の教授なども多いのですが、大学ではある程度理解力や判断力の高い学生が相手ですから、穏やかに話せば事足りるのかもしれません。

 

しかし、不登校・ひきこもりの我が子に対する態度がそれと同じでよいわけがありません。

 

三者面談をしても、子どもの言うことをそのまま私たちに「こう言ってますので」と伝えてくるだけで、父親自身の意思や本気さが感じられないのです。

 

長期間にわたって不登校やひきこもりの状態にある子どもの精神状態は、冷静な判断を下せるものではありません。だからご両親が本気を出して、選択肢を与え、決断を促さない限り、ずるずるとひきこもり生活が続いてしまいます。

 

また、お父さんお母さん、スタッフの全員が同じ認識を持ち、ぶれない態度で子どもに対応することが大事です。これが一番手強いハードルともいえます。子どもに対する考えが、お父さんお母さんで違っていたり、ちぐはぐだったりすることも多く、そうなるとうまくいかなくなります。

 

例えばお父さんが単身赴任などできちんと話し合いができなかった場合、対応の方針がお母さんとスタッフの間で決まって、それを実行し始めたばかりなのに、効果がでないと、お父さんがすぐに別の手段をとりだすのです。お父さんが違う本を読んで、目移りしたのでしょう。不登校やひきこもりは放っておいてよいという専門家もいますから。

 

しかし、私は不登校・ひきこもりは放っておいてはいけないと思っています。早ければ早いほど立ち直れる可能性が高いのですから。

 

父親が本気を出したことでひきこもりから立ち直ったタツマくんの例です。

 

【タツマくんの事例】

(現在20歳の大学生。中1から中3まで約3年、高1で2カ月と、2度の不登校とひきこもりを経験)

 

タツマくんのお父さんは小さい時から厳しく、そんなお父さんをタツマくんは「マジで死んでくれと思っていた」と言います。

 

中学受験をさせられて規則の厳しい私立の中高一貫進学校に入学しましたが「勉強しないといい大学に入れない、社会でうまくやっていけないぞと脅す学校だった」そうで、中1の5月には不登校になってしまいました。

 

お母さんがカウンセラーやさまざまな教育機関に相談したところ、不登校はそっとしておけばいずれ治ると言われたのです。お父さんはどうにかしたいと思いましたが、「有名な先生に、特に父親は何も関わらないようにと言われたので、何もできませんでした」と言います。

 

不登校が続いた状況を変えようと、高校は全寮制高校に進学しました。しかし、冬休みで家に戻ってきた際、タツマくんは部屋に立て籠もってしまったのです。誰も部屋に入れないようにバリケードを作り、お母さんが部屋に入ろうとすると暴力を振るいました。

 

こうした痛い思いをして初めて、両親は当会へ相談に来ました。「お父さんが本気を出して子どもと関わって下さい」とお願いすると、すぐにお父さんは態度を変えてくれました。

 

数日後、お父さんは、タツマくんがトイレから部屋に戻ってバリケードのセットを組み立てているところに、乗り込んでいったのです。タツマくんを階段から引きずり降ろし、車に乗せて当会に連れてきました。

 

面談では「これからどうするのか、高卒支援会に通うのか、そうじゃなかったら家を出て働け」とお父さんはタツマくんに厳しく迫りました。

 

「ものすごい気迫だったので、通わなければ本当に働かされると思いました。それで、通うことにしたのです。オヤジのパワープレーがなければ、今もひきこもっていたと思います」とタツマくんは振り返ります。

 

その後は、進路に関してもお父さんは「お前が決めて、俺に説明しろ、大学受験をしないなら、働け」と厳しい態度だったといいます。浪人をすると決めた時には、「1日16時間、感謝して勉強するのが普通だからな」と釘を刺され、猛勉強した結果、有名難関私大に合格しました。

 

今ではタツマくんはお父さんに対し、「昔は嫌いだったけど、きっと当時は一生懸命にやってくれたんだろうなと今になればわかります」と気持ちも変わってきました。お父さんが本気で向き合ったからこそ、ひきこもりから脱出できた例です。

 

◆母子家庭の場合

 

お父さんがいない家庭では、お母さんに本気を出してもらいます。たとえ子どもが暴れたとしても、お母さんが毅然と立ち向かっていると、子どもが変化してきます。

 

母子家庭のケイタくんの例です。

 

【ケイタくんの事例】

(現在20歳。中1から不登校・ひきこもりになり、18歳で都立定時制高校を受験して合格。19歳で高校1年になり、現在も在学中)

 

ケイタくんが小学生のころ、お父さんの暴力が原因で両親は離婚。それからはお母さんと2人暮らしでしたが、中1で不登校になり、部屋にひきこもってパソコンゲームにのめりこむ日が続きました。

 

中学卒業後は通信制高校へ入学したものの、結局スクーリングに全く行けずに退学しました。お母さんと一緒に相談に来た時は、すでに18歳でした。

 

ゲーム依存だったので、当会でパソコンを預かることにしました。しかし、ケイタくんは家に帰ると暴れます。お母さんはそれでも、私たちと約束したからパソコンを返すことはできない、と厳しい態度で一歩も譲りませんでした。

 

そのうち、ケイタくんは当会に登校するようになり、アルバイトを始めたことで人の役に立つ実感を得て、自信をつけていきました。

 

その後「中1からできなかった学生生活を取り戻したい」と、猛勉強して定時制の都立高校に合格、19歳で高校1年生になり、現在も働きながら通っています。

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