今日から変える子どもへの接し方 3つのポイント(2)――子どもが不登校・ひきこもりにならない/から脱出するための子育て術
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bw_manami

2019/08/26

2019年5月。元号が平成から令和に変わり、日本中が新しい時代の幕開けに心躍らせていた矢先に起こったのが、スクールバス襲撃や元農水省幹部の長男刺殺といった「ひきこもり」に関連した凄惨な事件の数々でした。若者の不登校・ひきこもり問題に30年以上支援活動を続け、延べ1万人以上の生徒を立ち直らせてきた著者が、事例を踏まえて解決の糸口を贈る『不登校・ひきこもりの9割は治せる』(7月18日発売・光文社刊)より、前回に引き続き、子どもに対する親のあり方、関わり方について、2つ目のポイントをご紹介します。

 

 

◆子どもへの関わり方(2) 無条件の愛情で接する

 

次に大事なのは、条件付きの愛情ではなく、無条件の愛情で子どもと接することです。

 

不登校やひきこもりの子どもの両親に多いのが、条件付きの愛情で子どもを育ててきた人たちです。いい大学に行くのは当然で、そのためにいい高校、いい中学に行くのも当然という意識で子どもを育てているのです。

 

小さなころから過度に習い事や塾に行かせたり、中学受験をさせたりして、●級に上がったらほめる、いい成績をとったらほめる、合格したらほめる、といった具合です。

 

すると子どもは、頑張っていい成績をとらなくては、いい中学に合格しなくては、お父さんお母さんにほめてもらえない、受け入れてもらえない、愛してもらえないと感じてしまいます。

 

子どもが悪い成績でも、いい中学に合格しなくても、ありのままの子どもを丸ごと受け止めることが必要なのです。

 

いい大学に行って、いい会社に就職するのが子どものためといいますが、本当にそうでしょうか。そういった子どもに育てた自分に満足なだけなのではないでしょうか。

 

子どもは親のアクセサリーではありません。子どもは、自分で自分の道を切り開いていくのです。親はそれを応援して、見守っていればいいのです。

 

実際、ひきこもりの相談に来る両親、特に父親は、医師や大学教授など、エリートがとても多いのが特徴です。東大、京大などの名門大学の出身者がとても多く、高学歴の親がほとんどです。

 

話を聞いてみると、そうしたお父さんたちは、地方の公立高校で普通に勉強して、東大や京大などの国公立大や難関私大などに入ったといいます。それなのに、どうして自分の子どもにはのびのびと勉強をさせるのではなく、中学受験をさせるのでしょうか。とても不思議です。

 

子どもを自分の延長のように感じているのでしょうか。自分は勉強ができたからといって、子どもも同じとは限りません。子どもは別の人格を持つ別の人間なのです。

 

夫が東大出身というお母さんが、「夫の家系は代々東大卒なのに、うちの子でそれが途絶えてしまったらどうしようと不安で、小さなころから塾に通わせていました。もし、東大に行けなかったら、母親に似てしまったから、母親の教育が悪かったから、と義理の両親に思われかねません。私自身も子どもをいい大学に行かせないといけない、というプレッシャーがあったのです」と打ち明けてくれた例もあります。お母さんがお父さんに対して学歴コンプレックスを持っていたのです。

 

進路とは、自分で決めるものです。親が敷いたレールに乗っているのでは、失敗した時に子どもは親のせいにします。自分の意思ではないのですから、当然です。自分でよく考えて自分の強い意思で決めた進路なら、頑張れますし、努力できるのです。

 

私が両親に説明しても、それを理解してくれず、大学進学が絶対だという家庭もあります。これを説得するのはなかなか難しく、2~3年かかる場合もあります。そういった態度が、子どもの自律を阻んでしまうことに気づいていないのです。

 

では、逆に「無条件の愛情で接する」とは、どんな態度でしょうか。

 

それは、どんな小さなことでも、子どもが自分から考えたこと、自分から行動したことを、肯定してあげることです。子どもをまるごと受け止めて、認めてあげることです。

 

特に進路について、子どもの意見や気持ちを尊重して、応援してあげることです。

 

ひきこもりから脱出したユウキくんとそのお母さんの例を参考にしてみて下さい。

 

【ユウキくんとそのお母さんの事例】

(現在18歳。高1から不登校になり、その後退学。高卒認定試験を受けて合格し、当会のインターンスタッフを経て、現在は当会の正社員として働く)

 

ユウキくんは地元の公立小学校、公立中学校に通い、高校受験で偏差値の高い国立高校へ進学しました。

 

しかし、小中学校の合わせて9年間を同じメンバーでずっと過ごしてきたため、新しい友人関係を作ることに慣れておらず、友達ができませんでした。高1の夏休み明けからは、だんだん登校ができなくなりました。

 

「学校に行くと視線を感じ、注目されているような気がして、体がざわざわしました。みんなが僕の悪口を言っているような気がしたのです」とユウキくんは振り返ります。

 

9月下旬からは全く行けなくなりましたが、この時「父親は学校に行けないなんて情けない、気合が足りない、という態度でしたが、私は休ませるのが一番だと思ったのです」とお母さんは言います。

 

お母さんがユウキくんを病院に連れていくと、ユウキくんに自殺の恐れがあると病院で判断され、すぐに精神科に入院することになりました。約1カ月後に退院したものの、学校には行けないままで、高2に進級できず留年になりました。

 

4月からもう一度高1をやり直そうとしましたが、結局5日間通っただけで、また不登校になってしまい、6月には退学しました。

 

「子どもの幸せを考えたら、普通に高校を卒業して、大学に進学してほしいという思いはありました。でも、こういう状況になってしまったのだから、子ども自身に将来を決断してもらおうと思ったのです。勉強したいなら、どこかで勉強する道を選んでもいいし、仕事をしたいなら、就職しても、バイトしてもいいと思ったのです」(ユウキくんのお母さん)

 

ユウキくんは通信制高校に通うことも考えましたが、学費がかかるために断念し、高卒認定を選択しました。その後、当会のインターンスタッフを経て、正社員になりました。

 

お母さんは、「就職すると聞いた時、すごく自然で当然だなと思いました。素直に良かったと思いました。ユウキが自分なりに道を切り開いているのを、応援していきます」と語ります。

 

お母さんが学歴や肩書にとらわれない態度だったため、ユウキくんはスムーズに自立することができたのです。

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