『世話を焼かない四人の女』著者新刊エッセイ 麻宮ゆり子
ピックアップ

bw_manami

2019/09/03

私の目指す人

 

出身は埼玉だが、私は京都、愛知、静岡、東京と各地を転々としながら暮らしてきた。

 

そもそもどうして地元を遠く離れたのかというと、「この人たちと一緒にいたらヤバイ」と子供ながらに感じる人が周囲に多くいたからだ。先祖代々、同じ場所にぎゅっと集まって暮らしている人がほとんどの田舎町だった。

 

うちは本家だからと、しょうもない理由で分家の人を見下すおばあさん。医者やお金持ちの家の子ばかり露骨にひいきする学校の教師。自分の子にはめっぽう甘いくせに、他人の家の子には平気で説教してくる意地悪な親。昼休みになると職員同士がつかみ合いの言い争いをしている小さな役場。近所の人と喧嘩になると、「うちの息子は国鉄に勤めているんだ」(JRは国鉄と呼ばれていた)と必ず言うおばあさん。そういえば、おじいさんと呼ばれる年齢の人にあまり長生きする人はいなかった。

 

もちろんすべてがそんな人ばかり、というわけではない。しかし所有地の大小や家柄、子供、就職先といった自分以外のものを使って虚勢を張る人が多かった。しかも住人同士仲が悪い。

 

どこにでもそういう人はいるのかもしれない。しかし陰湿な噂話や罵り合いをくり返す町の大人たちを目にし、私は心底うんざりした。だからいろんな土地を見て、さまざまな人を知って、自分磨きを忘れずに……と具体的に思ったかどうかは忘れたが、町を出たのは確かである。

 

おかげで今、各地にいる私の友だちは、みんなさっぱりしていて優しい。どこの出身だからどうというのはない。きりっとしていて、目の前のやるべきことをしっかりやって、自律している。

 

どうやら私は、自律した人に出会いたい一心で各地を転々としてきたところもあるようだ。そんな私の目指す人の姿が、今回の本に出ているといいなと思っている。

 

『世話を焼かない四人の女』
麻宮ゆり子/著

 

住宅メーカーの総務部長を務める闘子(とうこ)。ある日、大手商社から学歴と経歴に誇りを持つ華美(はなび)が中途入社してきて……。(「ありのままの女」)わたしを幸せにするために働く四人の女性を描く短編集。頑張りすぎるあなたの背中をやさしく撫でる、新時代お仕事小説。

 

PROFILE

まみや・ゆりこ

1976年埼玉県生まれ。2003年、小林ゆり名義にて第19回太宰治賞受賞。’13年「敬語で旅する四人の男」で第7回小説宝石新人賞を受賞しデビュー。

小説宝石

小説宝石 最新刊

伝統のミステリーをはじめ、現代小説、時代小説、さらには官能小説まで、さまざまなジャンルの小説やエッセイをお届けしています。「本が好き!」のコーナーでは光文社の新刊を中心に、インタビュー、エッセイ、書評などを掲載。読書ガイドとしてもぜひお読みください。

【定期購読のお申し込みは↓】
http://kobunsha-shop.com/shop/item_detail?category_id=102942&item_id=357939
関連記事

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitterで「本がすき」を

RANKINGランキング