なぜ「赤色」は人を惹き付けるのか? 心理学が解き明かす本当に効果的な広告
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ryomiyagi

2019/12/09

 

「差別化」がマーケティングの常識と言われるこの時代に、なぜ通販会社はあえて似たような広告を作るのか。答えはもちろん、「勝ちパターン」があるから。本書では、その「勝ちパターン」のための『7つの鉄板法則』を、東京大学大学院の心理学者の監修の元、解き明かす。

 

※本稿は、香川勝行・妹尾武治・分部利紘『売れる広告 7つの法則』(光文社新書)の一部を再編集したものです。

 

「赤色」が消費者にもたらす心理効果とは

 

CTA(CMなどで購買を煽るテロップのこと) に用いるのは必ず「赤色」だという断言がある。値引き価格は必ず赤字で書かれる。これは一体なぜなのか? 心理学で真相に迫ってみたい。

 

■「赤いユニフォーム」は強い

 

ネイチャー誌に報告された、ヒルとバートンの2005年の論文(Hill & Barton, 2005)が、オリンピックで行われているある慣例が、選手に対して不公平な事態を招きかねないことを発見した。その慣例とは、ユニフォームや防具の色の指定である。

 

オリンピックには様々な競技種目があるが、その中のフリースタイルレスリング、グレコローマンレスリング、テコンドー、ボクシングでは、慣例的に、片方の選手には赤のユニフォームや防具が、もう片方の選手には青のユニフォームや防具が、ランダムに割り当てられる。ランダムであるから、ある試合では実力的に勝つべき選手が赤になり、別の試合では実力的に勝つべき選手が青になることもある。ただ、多くの試合について平均を求めれば、本来は、赤の選手と青の選手で勝率に差はなくなる、つまりどちらも5割の勝率に収束するはずである。

 

ところが、2004年のアテネオリンピックの実際のデータを解析すると、赤を着ていた選手の勝率は5割5分、青を着ていた選手の勝率は4割5分となり、差し引き1割の差があった。この差は単なる誤差とは考えにくい(専門用語を使うと“統計的に有意な”)もので、無視できない。しかも、この赤の優位性は5種目すべてで確認できるほど、頑健なものだった。

 

さらに、彼らは2004年に行われたサッカーヨーロッパ選手権についても、ユニフォームの色別に勝率を分析した。その結果、オリンピックと同様に、やはり赤いユニフォームのほうが勝率は高いことが分かった。赤を着ていると強くなると言うのである。

 

ちなみに、柔道では片方の選手には白の道着、もう片方の選手には赤ではなく青の道着が割り当てられる。こちらではどのような結果になるのだろうか。アテネオリンピックの実際の結果を解析してみると、白でも青でも、その勝率は5割ちょうどになり、差は生じないことが分かった(Dijkstra & Preenen, 2008)。つまり、やはり赤が特別なのである。赤は本当に不思議な色なのだ。

 

■購買行動にも影響を与える「赤」

 

赤色は、人の購買行動にも影響を与える。「ジャーナル・オブ・コンシューマー・リサーチ(直訳すると、消費者研究誌)」に掲載された論文を紹介しよう(Bagchi & Cheema, 2012)。

 

 

いま、図9にあるように、あなたは日本製家庭用ゲーム機をネットオークションで入札しようとしていると想像してほしい。入札開始価格は110米ドル、希望落札価格(その金額であれば競りなしで即購入できる金額)は149・99米ドルとなっている。あと数時間でオークションは締め切られるが、あなたは所用のために値動きをチェックすることができない。そこで、自動入札を使う。つまり、こちらの提示できる上限の金額(最高入札価格)を先に入力しておき、自動で入札を進めてもらうのだ。では、あなたなら、最高入札価格としていくらを提示するだろうか?

 

以上が、被験者に行われた場面設定である。この設定に際して1つ細工がしてあった。それは、これらの表示が行われるページのトップ(ホームページのヘッダー部分)が、被験者ごとに赤色、青色、灰色、白色のいずれかに変わっていたのである。ある被験者は赤色の画面で最高入札価格の入力が求められ、別の被験者は白色の画面(ページの背景は白色であったため、実質的にページヘッダーがない状態)で価格入力が求められたという具合である。

 

この細工を行うことで、背景の色が支払意志価格(Willingness-To-PayでWTP。この場合は最高入札価格)に与える影響を検証したわけだ。

 

このように最高入札価格を入力した後、各被験者は希望落札価格の149・99米ドルでゲーム機を購入したいかどうかを尋ねられた。これにより、最高入札価格とは別に、購買意向が色にどのような影響を受けるかを調べたのである。この評定は、「1=全く購入したくない」から「7=とても購入したい」までの7段階で行われた。

 

なお、一部の被験者については、オークションで競るという場面設定は行われなかった。最高入札価格はオークションを行う際に発生するものであるため、このグループでは、単に「希望落札価格が149・99米ドルとなっており、その金額で購入したいかどうか」という質問、すなわち、購買意向のみが尋ねられた(固定価格群)。

 

気になる実験結果であるが、入力された最高入札価格の平均値は、青色で125米ドル、灰色で123米ドル、白色で126米ドルとなっており、これらの間に統計的な差はなかった。つまり、偶然でも生じうる程度の差しか見られなかった。

 

一方で、赤色では131米ドルとなり、統計的に意味のある差をもって、他の色よりも最高入札価格が高いという結果になった。赤色のヘッダーで入力を行ったグループでは、「ゲーム機にこれくらいまでなら支払ってもいい!」という上限が上がったのである。

 

また、購入意向の評定値は、青色の時と灰色の時が同じ3・9、白色の時が4・1に対し、赤の時は4・7となり、最高入札価格と同様の結果となった。つまり、赤色のページにすることで、最高入札価格と同様に、「購入したい」という心理・購買意欲も強まったのである。

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