羽生結弦は小学生の頃から、人の話を理解する才能があった
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ryomiyagi

2019/12/25

変わらず続けている、日曜夜の「体幹トレーニング教室」(写真/加治屋誠)

 

羽生結弦の専属トレーナーとしてソチと平昌の2度の五輪に帯同した、仙台の整体師・菊地晃。一流のアスリートのサポートや、世界の舞台から学んだこととは何か――。体の不調や痛みに悩む誰でも応用できるように実践メソッド化した一冊、『強く美しく鍛える30のメソッド』から一部をご紹介します。

 

■ジャンプで体の軸を整える

 

アスリートとして成長していく小学生の結弦の体に合わせ、マッサージ中の会話の内容も、少しずつ変わっていきました。

 

あるとき僕がジャンプの話をしたときも、結弦は興味深そうな顔で聞いていました。

 

「なあ、結弦、ジャンプはな、跳ぶときに脚をバーンと伸ばさないといけないんだぞ」

 

高くジャンプするためには、足首だけで跳んでもだめなんです。

 

ハムストリングス(太ももの裏側)、股関節、お尻のまわりまで、足腰の筋肉をすべて使わないと高く跳べません。理想はジャンプしたときに、股関節とかかとを結ぶ線が一直線になること。ひざ、股関節、腰全体で体を持ち上げることが大事です。

 

もちろん、上半身の使い方、肩から指の先までの使い方によって、高さに大きな違いが出てしまいます。

 

そんな話をすると、結弦はじっと黙って聞いているわけですよ。

 

「普通の子どもは、跳んでみろ、と言うと、足首の力だけでジャンプしようとするんだ。でも、いいか、結弦、足首じゃないんだよ。地面からの反発力を効果的に使うためには、軸がぶれていたらダメだ。脚全体を伸ばせば軸がぶれない。そのためには、股関節の下に足首がないとダメだぞ」

 

実を言うと、これは陸上での跳躍の話で、氷上でのフィギュアのジャンプとはまったく違うものでした。

 

僕も、結弦に得意満面で話した後に、ひょっとしたら氷上とは違うんじゃないかと気づいたんですが、しばらく黙っていました。

 

彼のすごいところは、僕が話したことを自分なりに解釈して、「脚を伸ばして跳ぶということは、リンクではこうしたほうがいい」と、自分なりに吸収できることなのです。

 

小学生なのにすごいですよね。

 

■中心軸のブレが不調を招く

 

結弦が東北高校に入学した頃に、こう言われたことがあります。

 

「小学生のときに、先生から教えてもらったジャンプは、陸上でのジャンプの理論ですよね?でも、あのとき先生が言ってくれた、脚を伸ばすイメージがわかった気がします」

 

結弦がいつもジャンプの際、心がけていたのは体の中心軸がぶれないことです。

 

実際、結弦のジャンプを見てもらえばわかります。頭のてっぺんが天井から糸でスーッと引っぱられるように浮き上がっていきますよね。軸がぶれていません。

 

このぶれはトップアスリートにかぎらず、誰にとってもさまざまな不調を招きます。

 

中心軸のぶれは、骨盤を支える筋肉や腰椎などの腰まわりにストレスがかかることで生じるのです。腰まわりの左右のバランスが悪くなると背骨に負担がかかります。

 

その結果、背骨を通る神経、血液やリンパ液などの流れが滞ってしまうのです。

 

施術はいつも、体の声を聴きながら(撮影/加治屋誠)

 

【日常での実践メソッド】
体の中心軸を整えて不調を解消する「骨盤リセット・エクササイズ」

 

長時間のデスクワークをしたり腰が重いと感じたりしたときには、オフィスにあるようなキャスター(車輪)付のイスで、グルグル動きまわるだけでも、骨盤まわりの筋肉がほぐれ、体の中心軸が元に戻ります。

 

キャスター付きの椅子に、背筋すじを伸ばして座り、脚だけを使って2~3メートル行ったり来たり移動する。

 

以上、『強く美しく鍛える30のメソッド』(光文社)から一部抜粋しました。

 

イラスト/株式会社ウエイド

菊地晃(きくち・あきら)
1956年宮城県生まれ。’90年、「寺岡接骨院きくち」を開業。さまざまな不調や怪我を抱える数多くのアスリートや患者を診てきた。接骨院での施術の傍ら、毎週日曜に体幹トレーニング教室を開催し、多くの小中学生を指導している。2020年東京パラリンピックに向け、パラアスリートのサポートも行う。

 

強く美しく鍛える30のメソッド

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