田丸雅智「あのとき助けてもらった」おとぎカンパニー日本昔ばなし編発刊エッセイ
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ryomiyagi

2020/01/14

鏡に向かって、同期で一番仕事ができるのは誰かと尋ね、慰めを得ているOLの話。かつて最強の名をほしいままにしていた赤い頭巾の老婆の話。一年前、海外童話をもとにした二次創作ショートショート(SS)集『おとぎカンパニー』を上梓した。今作『おとぎカンパニー 日本昔ばなし編』はその第二弾となる、日本昔ばなしをもとにした一冊だ。

 

童話とSSは、アイデアと印象的な結末があるという点でとても近く、近いがゆえに二次創作も難しい。が、それにしても今作では前作以上に頭を抱えた。日本昔ばなしというものが、海外童話以上に手ごわい相手だったからだ。

 

最たる理由が、類似のパターンが多いこと。助けた何かが恩返しにやってきたり、A爺さんが成功し、B爺さんが失敗したり。あるいは、桃太郎や浦島太郎のように、すでにさんざんいじり倒されているものも多い。原作のどの部分をどう活かし、どう自分なりの新しいアイデアへとつなげるか……。

 

苦心はなんとか、十二編の物語へと結実した。一寸法師から生まれた「一寸上司」。上司の身長が本当に一寸、つまり三センチほどであったなら? 浦島太郎から生まれた「RYUーGU」。ジムでいじめられ、悲鳴をあげていた筋肉を助けたら?笠地蔵から生まれた「ピン」。単に自分が下手(へた)で倒せなかっただけのボウリングのピンが、情けをかけてもらったのだと勘違いして人の姿でやってきたら?

 

子供のころ、ぼくは昔ばなしが大好きだった。それらが、退屈な時間をいかに輝かせてくれたことか。いかに想像力を育んでくれたことか。

 

「どうも昔ばなしさん。あのとき助けてもらった田丸です」

 

本書が、少しでもみなさまに楽しんでいただけるものになっていますよう。それと同時に、この本が昔話に対するぼくなりの恩返しにもなっていれば。そんなことを願うばかりだ。もっとも、恩を仇(あだ)で返すようなことになっていやしないか、いささか心配ではあるけれど。

 


おとぎカンパニー日本昔ばなし編
田丸 雅智/著

 

【あらすじ】緊張の入社当日、はじめて挨拶した上司は生まれたときから一寸、つまり三センチほどしかなく!? 桃太郎も浦島太郎も花咲か爺さんも、誰もが知っている日本昔ばなしを、ユーモアたっぷりの現代ショートショートに奇跡のアレンジ!

 

PROFILE
たまる・まさとも 1987年愛媛県生まれ。ショートショート作家として幅広く活動中。坊っちゃん文学賞などで審査員長も務める。著書に『海色の壜』など多数。

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