栗山英樹監督「難局に立たされたら尺取り虫のように……」五輪神話継続へ
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ryomiyagi

2020/01/10

写真・野口博(flowers)

 

2020年が、五輪イヤーが、幕を開けた。

 

プロ野球の北海道日本ハムファイターズは、五輪イヤーに好成績を残している。ロンドン五輪が行われた12年は、栗山英樹監督の就任1年目でパ・リーグ優勝を果たした。4年後の16年には、10年ぶり3度目の日本一に輝いている。

 

メディアからすれば、記事にしやすいトピックである。『五輪神話継続を誓う』とか「五輪イヤーは日本ハムイヤー』といった見出しの記事が、新年早々から配信されている。

 

栗山監督も「オリンピックの年に勝ってきている。優勝しか考えていません」と話した。念頭にふさわしい大きな目標を掲げた裏側で、指揮官は覚悟を固めている。

 

ファイターズが本拠地とする北海道の札幌ドームは、東京五輪でサッカー競技の会場となる。このため、6月16日から8月16日までは札幌ドームで試合をすることができない。道内各地はもちろん東京と静岡、果ては沖縄でも主催試合をすることになった。

 

そもそも、ファイターズはビジターゲームのすべてが飛行機移動となる。セ・パ両リーグの12球団のなかでも、年間の移動距離はスバ抜けて長い。東京五輪前後の熱狂の片隅で、彼らは例年以上の負担を強いられることになるのだ。

 

メディアが「死の2カ月」とも「地獄のロード(遠征)」とも評した6月から8月の転戦に、栗山監督はどのような思いで立ち向かっていくのか。昨年10月に光文社から発売された著書『栗山ノート』に、率直な思いが明かされている。

 

監督就任以前から読書欲が旺盛だった彼は、『論語』、『韓非子』、『易経』、『四書五経』などの古今東西の古典にあたり、京セラ創業者の稲盛和夫氏の経営論なども読み込んでいった。そのうえで、自らを律し、戒め、リーダーとしてのあるべき姿を模索するために、心に残る言葉をノートに書き留めていく。そのなかから監督自身が言葉を抜き出したのが『栗山ノート』である。

東京五輪開催時の心持ちを、栗山監督は『易経』から引いている。「尺蠖の屈するは、以て信びんことを求むるなり」だ。

 

写真・野口博(flowers)

 

「12球団で唯一となる過酷なロードを乗り切った選手たちは、精神的にも肉体的にも確実に逞しくなっているはずです。その後また厳しい試合日程が組まれたとしても、『あの長期遠征に比べれば、大したことはないよな』と考えることができるでしょう。ですから、20年に私たちが体験する長期遠征は、尺取り虫が屈んでいるときに置き換えられるのです」

 

かくも長期にわたるロードは、栗山監督自身も経験したことがない。「どのような困難が待ち受けているのか想像がつかない」と苦笑いを浮かべつつ、「難局に立たされたら尺取り虫のように身体を屈め、グッと足を踏み込んで、『この苦しみを必ず喜びに変えるぞ』との思いで戦っていきます」と力強く宣言するのだ。

 

将来の大きな飛躍のために、一時の不遇や困難に耐えることも大事である──『易経』の教えは栗山の心に深く根ざし、こんな思いさえ呼び起こすのだ。

 

「何よりも、サッカー・ワールドカップ、ラグビー・ワールドカップと並んで、世界の3大スポーツと呼ばれる五輪に、間接的とはいえ関わることができるのです。日本選手団を精いっぱい応援しながら、ファイターズも勝利に向かって邁進していきます」

 

仕事に悪戦苦闘するビジネスマンに。
友人関係に悩む学生に。
『栗山ノート』には、誰の心にも響く言葉が収められている。

 

スポーツライター 戸塚啓

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