羽生結弦 世界最高点をたたき出した眼球トレ
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7日に行われたフィギュアスケート四大陸選手権SPで、自身の最高得点を111.82点で更新した羽生結弦。元専属トレーナー・菊地晃氏が、オリンピックなどの帯同時におこなってきた、羽生のメンタルトレーニングとは――。『強く美しく鍛える30のメソッド』から一部抜粋。

 

■結弦はスイッチが入る言葉を持っている

 

「大丈夫だから、一つ一つ丁寧にやれ!」

 

平昌五輪のフリーの演技に向かう結弦に、僕はそう声をかけました。

 

「自信を持っていけ、できるから!」

 

その前日のショートプログラムでは、こう発破をかけました。

 

実は「一つ一つ丁寧に!」と「自信を持って!」は、結弦の口癖です。

 

肩に力が入ったまま、フリーの演技に臨むとき、
「大丈夫、一つ一つ丁寧にいくぞ!」
と、結弦はそうつぶやいてリンクに飛び出していきました。

 

それからも演技の前には「一つ一つ丁寧に」という言葉をよく口にしていました。

 

「自信を持って!」は、試合前だけでなく練習中にも、結弦がいつも自分に言い聞かせていた言葉です。

 

「一つ一つ丁寧に!」と「自信を持って!」は、結弦が自らを奮い立たせる言葉。口にすることで、気持ちが切り替わり、演技に集中できるお気に入りの言葉なんです。

 

自分を勇気づける言葉を持っているのは、数ある結弦の強みのひとつです。

 

■本番前の緊張をやわらげる「眼球トレーニング」

 

表現力が問われるフィギュアという競技をしていることが大きいかもしれませんが、結弦は喜怒哀楽の感情をうまく表情で表現します。そのため結弦はいつも表情が豊かです。

 

表情筋をよく動かすとリラックス効果があります。あの子が、それを意識しているかどうかわかりませんが、顔の表情は多彩です。

 

もしも僕がケアをしているアスリートが何か気になるような表情をしたときには、眼球を強制的に動かします。

 

後頭部から両耳の上にかけて1本のひもを回しかけます。目の前25~30センチほどで交差させ、その紐の先に3センチぐらいの錘おもりをぶら下げます。最初は、錘を見つめさせたまま、首だけ左右に振らせます。続いて、錘を左右に振り、それを目で追わせながら首も一緒に動かします。今度は、首はそのままで目だけで錘を追わせます。

 

こんなトレーニングを「6分間練習」前のウオーミングアップでやります。

 

まわりで見ている人は、かなり怪しいことをやっていると思うかもしれません。

 

でもこのトレーニングは、緊張している脳をほぐす効果があります。もし、誤った方法で緊張している状態の脳をリラックスさせすぎると、集中力が低下。パフォーマンスを十分に発揮できなくなってしまうのです。

 

眼球を動かすトレーニングは、緊張の糸を1本だけ残すようなものです。

 

結弦のトレーナーをしていると、この緊張状態というのはとてもやっかいなものだと感じます。僕は、緊張が適度な状態になるように苦慮しましたが、
「緊張でガチガチになった体と闘うことがけっこう好き」
と、結弦が話していたことがあります。

 

結弦の本番の強さを見るたびに、僕はいつも、こうしたやりとりを思い出すのです。

 

■実践メソッド「不安をやわらげる眼球トレーニング」

 

過剰な緊張状態に陥った選手には錘をつけた紐を使って眼球を動かすトレーニングをして、ガチガチになった心と体を整えることがあります。

 

眼球を動かさないと、人は悩みがちになることがわかっています。「目が死んでいる」と言いますが、悩みや不安があるときは眼球が固定されたように動かなくなります。そんなときは、眼球を強制的に動かすトレーニングが効果的です。それだけでも悩みや不安が消え去ることもあるのです。

 

ぜひご自宅でも実践してみてください。

 

1 目の前で、人指し指を爪が見えるようにして立てる。
2 まず指は動かさずに、爪を見つめたまま首だけを左右に振る。3 往復する。
3 次に指を左右に振りながら、首を動かさずに眼球だけで追う。3 往復する。

 

以上、『強く美しく鍛える30のメソッド』(光文社)から一部抜粋しました。

 

菊地晃(きくち・あきら)
1956年宮城県生まれ。’90年、「寺岡接骨院きくち」を開業。さまざまな不調や怪我を抱える数多くのアスリートや患者を診てきた。接骨院での施術の傍ら、毎週日曜に体幹トレーニング教室を開催し、多くの小中学生を指導している。2020年東京パラリンピックに向け、パラアスリートのサポートも行う。

イラスト/株式会社ウエイド

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