お金がたまらないのは、「キツネ」が理由かもしれない
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ryomiyagi

2020/04/22

勘違いしていた。「稲荷神社」と「キツネさん」というタイトルのせいだろうか。参拝の仕方、とか神社の由来だとかについて書かれた本だと思い込んでいたのである。これは半分正しくて、半分間違っている。「キミは今の会社で何の才能使ってお金もらってんの?」「不平不満でいることに安心感を持つのは凡人だ」「キミの才能をお金に換える時がきたよ」なにかおかしいと思った。

 

主人公の井上正助は一見、どこにでもいるさえないサラリーマンだ。安月給でこき使われ、やりたい仕事をやらせてもらえない。好きで就職したはずの旅行代理店では激安ツアーを紹介しているが、旅マニアの彼が本当に提案したいのは、情報収集能力に長けた自分の特技を活かした、贅沢でゆとりのあるツアーだ。

 

今の仕事と給料に不満のある正助は、うさばらしの京都旅行で、よく喋る白狐に出会う。訝しがりながらも、狐に誘われるまま稲荷山を登り、辿り着いた先に見つけたのは、稲荷神社。不思議な白狐はその使いだったのだ。どうやらこのキツネ、お金儲けが得意だった今は亡きおじいさんに憑いていたらしい。まったく金儲けの才気のない主人公に、お金の話をするために現れたのである。主人公はこのキツネにお金儲けの方法を教わり、文句を言いながらも実践し、起業のノウハウを叩き込まれる。

 

 

起業本は山ほどあるが、こんなに笑った本はない。著者は神託に基づいたアドバイスでビジネスを向上させると評判の神託コンサルタントで、企業経営者など多くの顧客を持っている。作画は、ヒットを連発する人気漫画家の東村アキコだ。

 

本書は実在の人物の経験をもとに書かれているらしい。それにしても、このキツネ、性格がけっこうキツイ。「キミ今百円玉放り込んでお願いしてたよね?キミの願いは百円で叶うような安物なのかい?」「いいかい?ここは日本一の商売の神社なんだぞ?」「キミだってたった百円で願いが叶うなんて思ってないだろ?」「「どうせ叶わないし」って前提でお参りしてるから百円なんでしょ」といった、感じだ。

 

事実、私たちは誰しも神社でたくさんのお願い事をしている。お金持ちになりたい、とかボーナスがアップしますようにとか、お金を溜めて好きなだけ旅行に行きたとかである。しかし、いっこうに願いが叶わないのはどうしてだろう。お賽銭が足りないせいだろうか。

 

著者は、お金を儲けるために必要なのは「才能」だと指摘する。

 

才能とは、ずばり、頑張らなくてもできること。
そして才能は、お金に換えられると著者は喝破する。

 

 

まずは頑張らなくてもできる得意な技術、すなわち「得技」を見つけること。出来るわけがないと、自分を縛り付ける思いこみは禁物だ。無理をしなければお金は稼げないとの考え方に囚われているのも、自分の願いが叶わなくなっている理由らしい。どういうことだろうか。

 

願いは、叶えるためにある。
願いを叶えるためには、まず自分を信じることが大切だ。信じるのは自分自身、ということは、神様とは自分のことである。自分の役割はそのお手伝いにすぎないと述べた上で、キツネはこうも言う。「だから、神様におそなえをするように神様にお賽銭をはらうように自分にギフトをたくさん与えていいんだよ!」

 

本書に書かれているお金を儲ける方法は、お稲荷さんへの信仰心がなければ実践できないというものではない。著者は、お稲荷さんや自分を「信頼」してお願いする心と、奉納を足したバランスこそが大切だと説くのである。あくまでも頑張り過ぎず、仕事に、お金に、将来に向かいあってみよう。お金持ちになりたい、好きなことを仕事にしたいと思っている人はもちろん、起業に興味を持つ方にも必読の書であろう。

 

馬場紀衣(ばばいおり)

文筆家。ライター。
東京都出身。4歳からバレエを習い始め、12歳で単身留学。国内外の大学で哲学、心理学、宗教学といった学問を横断し、帰国。現在は、本やアートを題材にしたコラムやレビューを執筆している。舞踊、演劇、すべての身体表現を愛するライターでもある。

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この記事の書籍

稲荷神社のキツネさん

稲荷神社のキツネさん

作画・東村アキコ/原作・町田真知子

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