“女性リーダーがいない国”日本――役員への道に男女差はない5つの理由
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ryomiyagi

2020/05/26

日本は153カ国中121位ーー。2019年12月に世界経済フォーラムから発表された、ジェンダー・ギャップ指数での順位だ。G7では最下位である。国内で女性役員として社内のトップランナーとなった女性たちは、未だ根強いジェンダー・バイアスをいかに乗り越えて今に至ったのか? 女性役員10名への取材で聞き取った45の「一皮むけた経験」を分析し、男性役員と比較。そこで見えてきた共通項から、改めて職場での女性幹部育成のヒントを考えます。

 

本稿は、野村浩子『女性リーダーが生まれるとき 「一皮むけた経験」に学ぶキャリア形成』(光文社新書)の一部を再編集したものです。

 

 

■役員への道に男女差はない

 

女性役員への道のりは、男性と何か違いがあるのだろうか。どのような職場環境が女性役員を育てるのか。

 

結論から言ってしまおう。女性役員への道のりは、男性のそれと大差ない。もう少し丁寧に言うなら、男性と大差ない経験を積んだ(積むことができた)女性が、生え抜きで執行役員になる時代を迎えている。

 

今回取材した10人の女性役員の「一皮むけた経験」から、その理由を5つ挙げたい。

 

■理由1 キャリア初期の平等に鍛えてくれる上司との出会い

 

第一にキャリアの初期で、仕事を任せて鍛えてくれる上司と出会っている。そんなことは当たり前だろうという人もいるだろう。

 

しかし、今なお女性総合職をどう鍛えたらいいのかわからない、男性と同じように営業現場に出すと顧客から文句をいわれる、と戸惑う管理職は少なくない。無意識のうちに男性のほうにより厳しい、成長につながるような仕事を与える管理職もいる。

 

そうしたなかで数十年前から先進的な上司に恵まれ男女差なく鍛えられてきた女性が、成長の機会を得て役員に就いている。

 

例えば、パナソニックの小川理子さん(57)は新卒で配属された新規事業部門で「世の中にない音楽機器を開発する」というミッションのもと、寝食を忘れるほど仕事をしたという。ホンダの鈴木麻子さんは、通算14年に及ぶアジア赴任を経験するが、海外ビジネスの基礎は20代から席を置いた海外事業部門で叩き込まれた。

 

初期キャリアで、性別を問わず育ててやろうという育成マインドのある上司に恵まれるか否か。これは女性にとってキャリア形成の重要なポイントとなる。今回紹介した10人に共通するのは、こうした上司に恵まれたことである。

 

■理由2 転勤や海外赴任もいとわない

 

2つ目は、転勤も海外赴任もいとわずキャリアを築いてきたことだ。キリンの神崎夕紀さん(56)は、福岡で地域限定職として入社しながらも次のステップに進むため、神戸工場立ち上げに参画したいと手を挙げた。日本航空の屋敷和子さん(62)も、地域限定の一般職で入社しながらも、管理職になってから神戸、札幌と転勤を経験した。

 

2人とも「いつの間にか全国型総合職になっていた」と笑う。ホンダの鈴木麻子さんは、30代半ばでタイに赴任する際に結婚していたが、単身赴任の道を選んだ。

 

女性にとって転勤がキャリア形成の壁となるといわれているが、少なくとも今回紹介した10人にとって転勤が壁となることはなかった。国内のみならず海外への転勤もあり得るという従来の男性型キャリア形成と同じコースを歩んできた、だからこそ役員への道が拓けたともいえる。

 

ただし、幹部候補の総合職に転勤を命じることが果たしてプラスになるのか、転勤を織り込んだキャリアパスを見直すべきだという議論もあり、今後は昇進にも多様なコースが用意されることになるだろう。

 

■理由3 修羅場を経験できるか

 

3つ目は、修羅場の経験である。仕事を長年続けていれば、修羅場のひとつや2つあるだろう、そう呟く人もいるだろう。ところが、修羅場を経験できるほど大きな仕事を任されたり、重責を担わされたりした女性が、これまでどれほどいただろう。

 

楽天の河野奈保さん(43)は、執行役員に就いて間もなく楽天優勝セールの値引き問題で記者会見の場に立ち、批判の矢面にさらされることになる。みずほ証券の絹川幸恵さんは、43歳の時に部長をクビになる経験をしている。パナソニックの小川理子さんは、40歳前後でネットサービスの部門に社内公募で手を挙げて異動したものの、新サービス立ち上げで開始の遅れという手痛い失敗をしている。

 

過酷な経験、失敗体験、こうした経験により「胆力」をつけた人たちがさらに上のステップに進んでいる。少数派の女性幹部は、多数派である男性からの無言の圧力を感じながらも、それをものともせず結果を出さなくてはいけない。そのためには、胆力なくして生き残れないのだ。

 

■理由4 よき相談相手やスポンサーとの出会い

 

4つ目は、「目をかけ引き上げてくれる人」に早い時期に巡り合っている。よき相談相手であるメンター、昇進の手助けをしてくれるスポンサーに恵まれたのだ。

 

高島屋の安田洋子さん(59)の場合、同社初の代表取締役となった元専務の肥塚見春さんがメンターとして支えてくれた。肥塚さんはまた、同社初の女性取締役石原一子さんに引き上げられた。女性役員のメンタリングチェーンが続き、女性役員を育ててきたともいえる。

 

JFEホールディングスの馬場久美子さん(54)は、前職の東芝時代に西田厚聰社長(当時)から大局的な判断を学んだという。楽天の河野奈保さんは、20代の若さで三木谷浩史社長から新規プロジェクトを任された。鎌田由美子さん(53)もまた、JR東日本でエキナカを立ち上げるにあたり、直属上司の新井良亮氏など経済界でも著名な経営者から教えを受けた。

 

優秀ならば男女を問わず目をかけて引き上げる、こうした上司に巡り合わない限りチャンスは訪れない。

 

組織でチャンスをつかむために必要なメンターにせよスポンサーにせよ、優秀な男性幹部にとっては当たり前の存在であっただろう。しかし、長らく女性にとっては、性別に関係なく引き上げてくれるような上司に巡り会える機会は限られていた。

 

今回紹介している10人は、幸いにもそうした上司に恵まれた。そうした「幸運」任せではなかなか女性幹部は育たないとして、スポンサー制度、メンター制度といった仕組みを設けて、経営幹部と女性の管理職候補を人事部が引き合わせることも過渡期の策として求められている。

 

■理由5 ガラスの天井、ガラスの壁が存在しない

 

第五に、「ガラスの天井」も「ガラスの壁」もなかったことだ。女性が上のポストを目指そうとすると見えない天井にぶつかるとする「ガラスの天井」はよく知られている。

 

これに加えて、女性は往々にして人事、広報、経理、法務など専門性を問われる部門でキャリアを積むことが多く、経営層になるために必要な製造、営業、製品開発、経営統括といった部門で経験を積む機会が限られていた。このように女性の配属が専門性の高い特定の職域に限られてしまうことを「ガラスの壁」と呼ぶ。

 

今回登場した10人は、いわゆる女性職種に限られることなく、幅広い経験を積んでいる。この点でも男女差のない経営層へのキャリアパスといえそうだ。

 

女性リーダーが生まれるとき』光文社
野村浩子/著

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