私たちは溢れんばかりの情報をもつが、誰も「信頼」をもっていない|フェイクニュースを見極める力
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ryomiyagi

2020/06/09

Twitter社がトランプ大統領の投稿を初めて非表示とし話題を呼んだ。マスコミだけでなくSNSやネットメディア上にも情報が溢れる現代において、データの真偽を検証する力は各個人に求められる。NYタイムズ元東京支局長が訴える、メディア・リテラシーならぬ「データ・リテラシー」の高め方を、トランプ大統領が発信してきたフェイクニュースの問題点から探っていく。

 

※本稿は、マーティン・ファクラー『フェイクニュース時代を生き抜く データ・リテラシー』(光文社新書)の一部を再編集したものです。

 

 

■フェイクニュースの特徴…前提条件、ファクトがない

 

16年の大統領選挙で、トランプはいくつものとんでもないフェイクニュースを宣伝戦に利用した。代表例をいくつかご紹介しよう。

 

まず、「オバマはアメリカで生まれていない」という虚構だ。このフェイクニュースを信じる人は、birth(誕生、生まれ)の派生語としてbirtherと呼ばれる。この話が完全にフェイクであることは、オバマ自身が出生証明書を示すことによって判明した。

 

次に、「民主党は移民をたくさん使って得票数を操作した」というウソだ。選挙で負けたときに言い訳がほしかったから、こういうウソをついたのだろう。ホワイトハウスでは、真相を解明するための調査チームまで作られた。だがそのチームはまともに稼働していない。こんなものは、誰が調べてもウソだとすぐにわかる。だから調査チームは本気で動こうとしないのだろう。

 

3つ目は、「ヒラリー陣営の民主党は私のスマートフォンを盗聴している」と繰り返したこと。その証拠は何もない。大統領になったのだから、事実を調べようと思えば簡単にできる。なのに彼は自称、盗聴疑惑とやらを調べようとはしない。たちが悪いウソだから、事実かどうかなんて確かめようがないのだ。

 

4つ目は、「FBI(連邦捜査局)はじめ、アメリカの機関がみんな私の統治に反対している」という言説だ。これまた具体性がまったく伴っていない。

 

5つ目は、ヒラリー・クリントンのメール問題をめぐる「ヒラリーは法律に違反した」とか「あいつは犯罪者だ」といった発言だ。こういうことを平気で言うものの、どの法を破ったのか、何の犯罪なのか明確な説明はない。

 

トランプが妙なことを言い始めたときには、前提条件やファクトの有無に注意して、内容を冷静に見極めてほしい。

 

こちらにアクセスすると、大統領選挙戦の際に広がったフェイクニュースの事例がわかりやすくまとめられている。「Misinformation Attacks During the July 2019 Presidential Debates」というキーワードで検索すると見つかると思うので、こちらの記事も参考にしてみてほしい。

 

■ステレオタイプは記憶に残りやすい

 

ウォール・ストリート・ジャーナルの報告によると、20年大統領選挙の候補者にもなっているピート・ブティジェッジ(Pete Buttigieg)が、フェイクニュースで犯罪者に仕立てられたそうだ。インディアナ州のサウスベンド市という自治体で市長を務める彼は、自分がゲイであることをカミングアウトして男性と結婚した。その彼が性犯罪を起こしたというデマが拡散されたのだ。

 

「ピート・ブティジェッジはゲイである」という事実の中に、「彼は性犯罪者である」というウソを混ぜこむ。ゲイに対しては、「男の子をねらった小児性犯罪を起こす可能性がある」といったステレオタイプが一部に存在する。その偏見を利用して、悪質な偽情報が流されたのである。

 

彼が性犯罪などを起こした事実はない。だがこういう噂が広がると、人は「火のないところに煙は立たない」「根も葉もないとは言い切れないのではないか」「この人は信頼できない」と疑念をもってしまう。それこそがフェイクの作り手の狙いだ。

 

民主党の下院議員を務めるベト・オルーク(Beto O’Rourke)についても、フェイクニュースが流されている。彼はラテン系やアフリカ系をはじめあらゆるバックグラウンドの人々の権利を尊重し、多様性を支持する政治家だ。だから地元のテキサスではとても人気がある。

 

その彼に関して、「ベト・オルークは90年代、人種差別的なメッセージを留守番電話に吹きこんだ」という完全なでっち上げが巷に広がった。皮肉にもこういうバカバカしい情報こそ、人々の記憶に強く残りやすい。

 

民主党の上院議員を務めるカーマラ・ハリス(Kamala Harris)もデマ攻撃にさらされた。彼女のお父さんは黒人、お母さんがインド人であることは事実だ。それを曲解し、「カーマラはアメリカで生まれていない」というウソを織り込んだ情報が流されたのだ。

 

「カーマラ・ハリスは黒人のフリをして有色人種から支持を集めているが、彼女はハーフだから黒人ではない」とか、「外国生まれのインチキアメリカ人だ」というステレオタイプの言い方で、イメージダウンが図られた。オバマ大統領をバッシングしたときと同じ手法により、差別的で感情的な言説が拡散されたのである。

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データ・リテラシー

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マーティン・ファクラー

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