「隠す」のではなく「伝える」――令和を生きるAV女優と家族の肖像
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ryomiyagi

2020/07/29

 

「AV女優」それから「家族」というタイトルに、まずドキリとさせられる。これまで彼女たちの家族について触れられてこなかったのは、AV女優という職業についてまわる、どこか後ろ暗い印象のせいかもしれない。最近ではそんなイメージも変わりつつあるようだけれど、それでも、彼女たちに向けられる世間の目は厳しい。AV女優という職業を選択した彼女たちは、家族にどのような思いを抱いているのだろうか。

 

著者によれば、AV女優の仕事が親にバレたことでAVを辞めたり、離婚することになった人もいるという。確かにAV女優という仕事は、ほかの職業とはすこし違うのだろう。AV女優をしていることがバレた後、両親との関係はどう変化したのか、妹や弟はどんなふうに思っているのか。自分の子供に将来AV女優の仕事を知られることに抵抗はないのか――。著者は彼女たちに質問を投げかける。

 

家族についての踏み込んだ質問に、読んでいるこちらのほうがドキドキさせられてしまう。「極力前向きな内容の本にしたい、でも綺麗事は一切書きたくない」という著者の言葉通り、ここでは綺麗事だけでは済まされないリアルな「家族の話」が語られている。

 

「周りの誰が批判しても、両親だけにはわかってほしいし、自分がすることを理解してほしい」(当真ゆき・つむぎ)という言葉からは、家族にこそ自分のことを理解してもらいたいとの切実な想いが伝わってくる。

 

小学校の頃からジュニアタレントとしてCMやファッション雑誌などで活躍してきた白石茉莉奈さんは、AV女優をしていると家族に伝えた時のことを次のように語っている。「親の方が深刻な感じでしたね。『旦那や子供は知っているのか』とか『あなた自身はどうなりたくてこの仕事に就いたの?』とかまぁ色々言われましたね。でも、素直に言ったんですよ『ちゃんとこの仕事でやってみたいから』って」。

 

両親に真っすぐ気持ちを伝え、家族に応援されながら働く女優たちのなかには、妹と食事や旅行に出かけたり、良好な関係を築いている女性たちもいる。両親だって、大切に育ててきた娘の活躍を応援したいという気持ちがあるにちがいない。大事な、家族の一員であることに変わりはないのだから。

 

著者によれば、彼女たちからは、自分の人生を納得のいく充実なものにしたいという前向きな姿勢が伝わってきたという。辞めるも進むも自分次第。

 

AV女優のなかには結婚、出産し、ママをしながらAVに出演している女性たちもいる。家庭と仕事どちらも大切にしながら夢を追いかける彼女たちの姿は、現代のすべての女性たちのロールモデルと重なるようにも思える。

馬場紀衣(ばばいおり)

馬場紀衣(ばばいおり)

文筆家。ライター。東京都出身。4歳からバレエを習い始め、12歳で単身留学。国内外の大学で哲学、心理学、宗教学といった学問を横断し、帰国。現在は、本やアートを題材にしたコラムやレビューを執筆している。舞踊、演劇、すべての身体表現を愛するライターでもある。
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