主人公は葛飾北斎の風景版画『哄(わら)う北斎』著者新刊エッセイ 望月諒子
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ryomiyagi

2020/08/07

本作は、大絵画展シリーズ第三弾になります。第一作がゴッホ。第二作がフェルメールとみせかけたブリューゲル。「さて三作目は」と編集の方と相談したのが、もう四年も前のことでした。「では北斎で」と言ったものの、書く自信はありません。というのも日本の古美術の知識がまるっきりなかったんです。中に新潮社のお仕事を挟んでいたので、ちょっと先になる。頃合いをみて別の作家をするっと言い出してみよう、など、いい加減なことを考えていたわけです。ところがそのままことは進んでしまったのです(汗)。

 

天下の北斎相手に何が書けるだろうか。にわかファンからコアなファンまでざくざくいるわけで。世界で一番よく知られている日本人でもある。下手なことは書けない(汗汗)。

 

北斎を書くから北斎だけ知っておけばいいというものでもなくて、そこは土台になる物すべて、まるまる学習しないといけない。なんでこんなことを始めたのだろうと四苦八苦した二年間でした。ですから、仕上がったときには、「やればやれるものだなぁ」と、妙に感心してしまいました。

 

コンゲーム小説ですから、大きなお金が動いて、だます側とだまされる側がいるわけですが、とにかく主人公は葛飾北斎の風景版画です。魑魅魍魎が跋扈する日本古画界を相手に、クリムトの盗難絵画をダシにして、思惑と思惑がぶつかりながら、ああでもない、こうでもないと物語は突き進んでいきます。実際、フェノロサにはいろんな評判があり、本作のようなこともないとは言えない。アリよりのナシか、ナシよりのアリか。そこはアリよりのアリということで(著者願望)。

 

最後はお決まりのアクションと、まったりとした結末。

 

と思いきや。かのクリムトの盗難絵画が、作品がすっかり仕上がっていた去年の年末に発見されたのです。こういうこともあるのですね。小説家泣かせはやめて下さいね。

 

あれやこれやありましたが、無事、ぎっちり詰まったコン小説が出来上がりました。お楽しみいただければ幸いです。

 

『哄(わら)う北斎』
望月諒子 / 著

 

【あらすじ】
クリムトの絵画が発見され、ある実業家が30億円で買うらしいと業界が騒いでいる。そんな中、フェノロサの幻のコレクションが密かに買い戻されていて、そこには北斎の肉筆画が存在しているという。クリムトと北斎。繰り広げられる騙し合い。絵画を巡るミステリー。

 

【PROFILE】
もちづき・りょうこ 1959年生まれ。2010年ゴッホの絵画をめぐる『大絵画展』で第14回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。ほかの著作に『壺の町』『フェルメールの憂鬱』『蟻の棲み家』など。

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