コロナショックが変化させた「人とのつながり」の形 テクノロジーで超えられるものと超えられないもの
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ryomiyagi

2020/09/14

現在、人々の物理的なつながりが強制的に断たれたことで、「人のつながり」の在り方は大きな変化の時を迎えています。常識が揺らいだことで、意見や価値観の分断も起こっています。しかし、これまでも、電話の登場からインターネットの普及、匿名掲示板、実名SNSの登場と、「人とのつながり」の変容は繰り返し行われてきました。今、私たちの身に何が起こっているのか、テクノロジーの進歩による変化の歴史を振り返ることで、俯瞰的に見つめ直します。

 

※本稿は、斉藤徹『業界破壊企業 第二のGAFAを狙う革新者たち』(光文社新書)の一部を再編集したものです。

 

 

コロナショックは、時計の針を加速させる

 

2020年、新型コロナウイルスのパンデミック(感染症の世界的な大流行)は人類に未曽有の危機をもたらし、国連事務総長をして「第2次世界大戦以来、最大の試練」といわしめました。

 

国家によって人の流れが完全に分断されたため、大恐慌に匹敵するほどの経済インパクトを引き起こし、これまで人類が築いてきたすべてのシステムに創造的な破壊を加えています。

 

日本においても、緊急事態宣言によって「密接した場に集い、会話する」ことへの強い自粛要請があり、人々の物理的なつながりが断たれることになりました。

 

このようなかつてない試練の中、私たちの意識には大きな変化が生まれつつあります。

 

自宅に閉じ込められた人たちは、同僚や友人とのつながりを求めてオンラインで集うようになり、会議、授業、買い物、会食や飲み会、美術鑑賞にいたるまで、デジタル化の波が一気に押し寄せ、仮想空間の場が飛躍的に増加していきました。

 

2000年代後半に「セカンドライフ」という仮想空間が世界中でセンセーションを巻き起こし、トヨタや電通が次々と参入したことを覚えている方も多いかと思います。

 

あの不思議な空間は、3Dアバターで見知らぬ人と交流する世界でしたが、コロナショックによって、普通の人たちがリアルの代替として「Zoom(ズーム)などの仮想空間」で交流するようになったのです。

 

この進化は、匿名掲示板から実名SNSへの移行にもたとえられるでしょう。

 

SNS以前から「2ちゃんねる」などの匿名掲示板は存在していましたが、それは一部のコアユーザーだけの場であり、見ず知らずの人たちが責任のともなわない会話を交わす場として存在していました。

 

そこに登場したのが、実名SNSである「フェイスブック」です。

 

フェイスブックの普及は人々の行動を大きく変えました。それまで習慣のなかった「ネット上に実名をあげる」という高い心理的ハードルを乗り越えることで、普通の人々のリアルな交流を仮想空間に移したのです。

 

匿名掲示板と異なるのは、信頼関係で結ばれた人たちのネットワークであるという点です。以来、私たちはテキストや写真を通じて、リアルな友人たちと常につながりあうようになりました。

 

2020年、コロナショックによって、世界の人々は半ば強制的に、面会の場をZoomなどの仮想空間にシフトさせられることになりました。それによって、私たちはこれまで習慣のなかった「ネット上に素顔をさらして対話する」というさらに高いハードルを乗り越えました。

 

セカンドライフと異なるのは、信頼関係で結ばれた人たちの集いの場であるという点です。以来、私たちはいつでもどこでも、場合によっては初対面の人とでも、オンラインで気軽に対話するようになったのです。

 

これは驚くべき「人とのつながり」の進化であり、これによって世界は大きく変わることになるでしょう。

 

まず、私たちはこれまでの常識を疑いはじめました。

 

「印鑑や請求書って本当に必要なの?」
「そもそも、オフィスってなんのためにあるんだっけ?」

 

管理や企画、事務などをするオフィスワーカーが自宅に職場を移す一方で、医療、介護、交通、物流、小売店、ごみ処理といった社会生活を維持するために不可欠な就労者であるエッセンシャルワーカーは、生命の危機を感じながらも現場での仕事を強いられました。

 

「なぜ、私たちだけが我が身を危険にさらさなくてはいけないの?」
「あの人たちは、いったいどんな価値を生み出しているの?」

 

職場を自宅に移した人と現場で仕事を続ける人との心理的な距離が離れるとともに、仕事に対する本質的な問いも生まれてきました。

 

一方、職場を自宅に移した人々にも変化が訪れます。コロナショックによって、職場と家庭の境界が溶けてしまったのです。会社への帰属意識も薄れはじめ、人の幸せや組織の意義といったことに本質的な疑問をいだくようになりました。

 

「私は、なんのために仕事をしているんだろう?」
「私たちの組織は、なんのために存在しているんだろう?」

 

コロナショックは一部の人たちの価値観を覚醒させました。それによって、以前の状態に戻ろうとする人たちと、この危機から学んで変わろうとする人たちとの間に、深い精神的な隔たりが生まれます。

 

しかし、それまで遅々として進まなかったリモートワークが一気に進んだことで、ややもすると劣勢だった改革派やミレニアル世代の若者たちがパワーをもつことになるでしょう。

 

「あれだけ声高に叫んでいたのに、なぜ改革が進まなかったんだ」
「今まではなんだったんだ。やればできるじゃないか」

 

一度経験してしまったことを、すぐに忘れることはできません。この流れはデジタル・トランスフォーメーション(デジタル技術による、あらゆる企業活動の変革)を一気に加速させ、組織内の価値観や文化にも大きな影響を及ぼすでしょう。真の意味での「働き方改革」が進む企業も増えるはずです。

 

他方、コロナショックは「テクノロジーでは超えられないもの」も気づかせてくれました。

 

微妙なニュアンスを伝える会話。クリエイティブを生みだす雑談の大切さ。人と寄り添うことが醸し出すぬくもりや安心感。物理的に「人が集い、話をすること」が、どんなにかけがえのない価値を生み出しているのかを、私たちは深く再認識したのです。

 

人類の危機、コロナショックは、はからずも「人のつながり」を大きく変化させ、世界のソーシャルシフトを加速させたのです。

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