加藤登紀子『心をととのえるインテリア』茶話 (2)駆け足で最旬コペンハーゲンスポットを巡る
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ryomiyagi

2020/09/18

今や、家はくつろぐだけの場から「働いて、くつろぐ場所」へ。
コロナ禍のもと、インテリアへの関心は高まる一方です。7月に出版された『心をととのえるインテリア』の著者で、これまで取材で1000軒を超えるお宅を取材してきた加藤登紀子がこの本の実例取材で訪れたコペンハーゲン&パリの、本に書ききれなかった現地情報をレポートします。

 

11月6日
コペンハーゲン3日目。この出張ではコペンハーゲンとパリに暮らす7人のクリエイターの自宅を取材する予定。インテリア取材の宿命ですが、先方の都合あってのことなので、1週間のうちにコペンハーゲン、パリ、コペンハーゲンと、2都市を行き来することに。今日は夕方、いったんパリまで移動ですが、それまでの時間は、コペンハーゲンの話題のインテリアショップをできる限り見て歩くことに。

 

ひんやりと澄んだ空気の中、10時のオープンジャストに訪ねたのは「GUBI」。

 

2フロアの広々とした店内。

 

王宮に近い瀟洒な地区にある、400平方メートルの広い店内。リビングやダイニングなど、生活シーンごとのコーディネートが展開されています。デンマーク家具の輸入販売に長く携わる人に聞くと、1967年に創業した老舗の家具ブランドですが、近年大きな資本が入り事業を拡げているといいます。

 

 

今どきのモダンテイストで、おおかたの洗練の行先は国を問わず同じような雰囲気か……と思いきや、つぶさに見れば自国の名作家具など伝統の輪郭を残しています。そしてデンマークインテリアのDNAを感じるのは「色づかい」。スモーキーな近似色を組み合わせることで、静けさのなかに安らぎを生みだしています。

 

家具だけでなくオリジナルの照明も充実。生活シーンを再現したディスプレイ。
リネン類はイタリア「ソサエティ」からのセレクトが多いが、色の選びがデンマークらしい。
ミラーなどの小物類の一部は日本でも「CIBONE」(ショップ、オンライン)で購入できる。

 

ユーザーはどんな人たちだろうと思いましたが、翌日パリでこれらの家具に再会することとなり、その答えはパリでわかりました。ここで見ておくことができてよかった。

 

2軒目は「GUBI」から徒歩数分の「ルイーズ・ロー・ギャラリー」。
オーナーデザイナーのルイーズが2018年にオープンしたコンセプトショップです。フラワーベースやテーブルウエア、ラグやクッションといったインテリア小物が並ぶ店内。アイテム数は多くはありませんが、吟味した素材による洗練されたデザイン。中でもガラスのフラワーベースはひときわ美しく、その佇まいで周りの空気をかえるようなオーラを感じます。

 

カラーガラスの花器が美しい。このままでも、また水だけをガラス越しに見ても楽しめるのでは。枝物を1本など、シンプルなあしらいも試してみたい。コロナ禍でECでも売り上げが伸びているそう。https://louiseroe.dk/
光があふれるカフェコーナー。

 

インテリアとして注目したいのは、大理石×籐のコーディネート。

 

併設のオシャレなカフェスペースの家具づかいは、クールな大理石のテーブルとノスタルジックな籐のチェア。彼女の好きな素材なのでしょうが、洗練と温かみの匙加減が絶妙です。
オーガニック食材によるランチも人気、ぜひ訪ねてほしいショップです。

 

3軒目は「ホテル・サンダース」。コペンハーゲン在住のコーディネーターTさんに、「イケイケのダンサーが経営していている話題のホテルが、オシャレな人たちの社交場になっているから、ぜひ行ってみて!」と言われ、いざ現地へ。コペンハーゲンのイケイケのダンサーというのが上手く妄想できないけれど、聞けば元王立バレエダンサーのアレキサンダー・クルビンとのこと。王立劇場のすぐそばにある、54室のコージーなホテルです。

 

ダンサー時代のクルビン氏。
コペンハーゲンの中心地、コンゲンスニュート―広場に面した王立劇場から、道を一本入った場所にある。コペンハーゲンは自転車率が高い。
まずファサードにギュッと心をつかまれる。インテリアの構成要素としては、籐やアイアンという比較的よく見るアウトドア家具だが、演出(小物使い)が上手い。ファーやベロアのファブリックの量感、壁面を覆うアイビー、エントランスへ誘うように足元を照らすキャンドルなど。コーディネートで他にはない世界観をつくっている。

 

一歩中に入ると、ロビーラウンジ。日中だが夜のように薄暗く、ホテルというより舞台の開演を待つざわめきを感じる空間(写真はゲストらが移動した瞬間に撮影)。「人生はステージ」といわんばかりに、光と陰影で随所にドラマチックな仕掛けを施しています。そしてスタッフはバレエ団の人脈なのか、美形揃い。圧倒的な世界観で「ホテル・サンダース」という舞台に立ったような、魔法にかけられます。

 

全体像が見えるように明るめに撮影しているが、実際はもっと暗い。天井、壁、手元と、幾つもの場所に灯りを点在させている。Tさんの言う「イケイケ」な色気が空間に溢れる。シャンデリアはデンマークの国民的ブランド「ルイスポールセン」。客室はコージーなシングルから、6人まで泊まれるキッチン付きのタイプまでバリエーションが多い。
最上階、薄暗い廊下の奥、部隊の場面転換のように光溢れるサンルームが現れる。焼きたてのベーカリーなども楽しめる癒しの空間。ここでランチをしたいところですが、まだリサーチしたい場所があるので後ろ髪惹かれながらも先を急ぐことに。

 

4軒目は「フラマ・スタジオ・ストア」。1800年代の薬局を改装した、デザイン集団フラマの秘密基地のようなスペースです。

 

修道院を思わせるようなストイックな空気が流れる。

 

ショップというより、自身の内なる声に向き合いシンプルに生きていこう、という彼らの精神性を表すギャラリーのような趣です。ZENにも通じる価値観なのか、手水舎(ちょうずや)や天然木の浴槽など、私たちには見慣れた風景も。日本にはフラマがプロデュースしたフレグランスのみ上陸しています。ストイックな香りか、はたまたその内に秘めたパッションを感じる香りかを試してみたい。instagram@framjpn

 

自然素材、シンプルで幾何学的なフォルム、普遍性を美学として、デザインやプロデュースを手掛けるフラマ。

 

ラスト1軒は電車に乗り、少し離れた港湾地域ノルドハウンにある「オード」へ。
ところどころの窓が突起した不思議な集合住宅を見ながら歩くこと20分以上(実はすごく遠回りでした……)やっと到着。

 

デンマーク王室御用達のライススタイルブランド「メニュー」の創業者、ライフスタイル誌「KINFOlK」の創業者 ネイサン・ウィリアムス、そしてノームアーキテクト建築事務所がコラボレーションした「オード」。ショップ、カフェ、ライブラリー、ホテルを備え、人々が繋がることで新たなムーブメントを生んでいく場のようです。一度訪ねただけでは、その魅力は掴みきれず、再訪のチャンスを願ったところでタイムアウト。

 

 

中央駅近くの「アブサロンホテル」まで戻り(アクセスはよいが部屋は今一つ)、荷物をピックアップしてタクシーでコペンハーゲン空港へ。パリまでは約2時間のフライト。しかし……シャルル・ド・ゴール空港からパリ市内のホテルまでは大渋滞。夜中近くに、ようやくオデオン近くのホテルにたどり着きました。20回近く訪れているパリに着いて、少しホッとしながら、翌朝からの2軒のお宅の取材に備えます。

 

加藤登紀子 かとうときこ
東京生まれ。日本女子大学卒業。フリーのエディター、ライター。
「住む人を幸せにするインテリア」をライフワークとし、国内外の1,000軒以上の家を取材。幅広いネットワークをもち、ライフスタイルに関わる企画も多数手掛ける。また「デザインオフィス シュエット」を主宰し、住宅・商業施設のインテリアコーディネートも行う。月刊誌『HERS』の連載をまとめた著書『大人の幸せなインテリア 女性がくつろげる家・40軒』(光文社)がある。Instagram: @tokiko.maison

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