『新型コロナはアートをどう変えるか』宮津大輔(3)きっかけはコロナ? アートがもっと身近になるかもしれない
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ryomiyagi

2020/10/26

 

コロナウイルスの拡大が止まらない。感染拡大によるロックダウンや緊急事態宣言により、各国の経済状況は悪化しているし、ステイホームもさすがに限界に近付いている。新型コロナウイルスが私たちの生活風景を一変してしまったのだ。こうした状況のなかで、アート市場に興味深い動きがある。

 

アート作品を購入する際、コレクターたちの頭を悩ませているのが購入方法だ。著者が言うには、支払いがスムーズに進まないことが多いらしい。もともと割高な手数料のためにクレジットカードが利用できないギャラリーも多く、海外のギャラリーやアートフェアで購入した場合でも、支払いが決済・送金手段の関係から帰国後になることもある。そのため作品をそのまま持ち帰ることができなくて、結局、送料をべつに支払わなくてはならない、なんてことも珍しくないという。

 

中国では屋台でもPay Pay(ペイペイ)のようなモバイルQRコード決済サービスが使えるくらいに普及していて、こうした流れは韓国やオーストラリアにも広がっている。すでにアリペイやウィーチャットペイの加盟店となっているギャラリーも中国には現れ始めているそうだ。

 

ブロックチェーンを導入したグローバルレベルでの幅広い作品売買促進も期待されている。実用化されれば、外貨両替や海外送金サービスに伴う高額な手数料の問題が改善するかもしれない。オンラインでアート作品を販売する動きも広がっており、最近はSNSで作家と直接コミュニケーションをとって作品を購入することもできるから、グローバルな取引がもっと気軽になれば、これまでは手を伸ばせなかった若い世代もアートを所有したいと思うようになるかもしれない。

 

また、ニューヨークを拠点とする「ニュー・アート・ディーラーズ・アライアンス」では新しい利益分配モデルを用いたバーチャル・アートフェアなるものが開催されている。新しい試みとして、コロナ感染拡大によって経済的ダメージをうけた出展ギャラリーをサポートする仕組みを展開しているという。

 

アート好きとしては、美術館の取り組みも見逃せない。コロナウイルスの流行で臨時休館を余儀なくされた美術館や博物館は、そのあいだも発生する膨大な運営諸経費のために革新的な戦略を打ち出している。

 

また著者は、この10年間でアートフェアが増え続けたために、現在は飽和状態になっていることを指摘する。今回のコロナ禍をきっかけに、こうした状況が一度リセットされ、今後はアートフェアの淘汰が進んでいくというのだ。コロナがビジネスの形態を変え、アートがぐっと身近になった反面、各フェアは生き残りをかけて新しい試みに取り組んでいかなくてはならないかもしれない。

馬場紀衣(ばばいおり)

馬場紀衣(ばばいおり)

文筆家。ライター。東京都出身。4歳からバレエを習い始め、12歳で単身留学。国内外の大学で哲学、心理学、宗教学といった学問を横断し、帰国。現在は、本やアートを題材にしたコラムやレビューを執筆している。舞踊、演劇、すべての身体表現を愛するライターでもある。
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