“シニアの知能”は20歳代に負けない!?『失敗しない定年延長』(1)
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ryomiyagi

2020/10/29

 

 

少子高齢化による生産者人口の激減。100年安心を謳った国民年金制度の破綻。そして政府は、今年3月、高齢者雇用安定法を改正し、65歳定年制を70歳へと引き上げるか、または定年そのものの廃止を企業に対する努力目標とした。

 

昭和40年代。右肩上がりの好景気に日本は沸騰していた。白黒TVはカラーTVに変わり、冷蔵庫、クーラー、ステレオと、暮らしは目に見えて豊かになっていく。そんな高度成長期生まれた子どもが、今や50代。
「あと20年は働かなきゃ」と、少なからず慄いているに違いない。
日々衰えを感じる体力は勿論のこと、5Gなどと言うわけのわからない通信用語が身近になった昨今、スマホにすら苦手意識が出始めている自分自身が、さらに加速していくIT化に順応していけるかどうか等々、不安要素が多々あるからだ。

 

とは言え、まだ50代。促進するIT化に、不安こそあるだろうが、それはまだまだ得手不得手の範疇でしかないだろう。中には、IT化を推進する部署を統括していたりする心強い50代の方もいらっしゃるはず。そんな知的対応力はもとより、さらに不安を掻き立てられているであろう基礎体力についても、『失敗しない定年延長 「残念なシニア」をつくらないために』(光文社新書)は、心強いデータを並べている。

 

歩行速度
人間の加齢に伴う体力変化を測定する指標として、歩行速度、すなわち歩く速さが用いられます。

 

本書では、1992年と2002年の高齢者の歩行速度を比較している。
すると2002年の75~79歳の歩行速度は、1992年の65~69歳の歩行速度とほぼ同じ。

 

これは高齢者の歩行速度が昔に比べて大幅に速くなっている、つまり体力的に若返っていることを意味します。

 

本書はさらに、「全身持久力」「筋力」「敏捷性」「視力」「聴力」「平衡覚感」と、いずれもシニアが衰えを感じている基礎体力について、年齢別の測定値を示している。
片道20メートルの往復走による持久力テストによれば、確かに60歳代の持久力は、ピーク時(男性14歳、女性13歳)に比べて男性で約30%、女性で約25%に低下している。
しかし、握力テストによる筋力テストでは、60歳代前半でもピーク時(30歳代前半)の約92%を維持している。

 

ただし、これは、握力という上半身の筋力であり、やはり下半身の筋力は加齢に伴い徐々に落ちて行く傾向にあるようだ。
そしてそれは、悲しいかな「敏捷性」「視力」「聴力」「平衡覚感」においても同じようなデータが示されている。

 

さらに気掛かりな、知力のほうはどうだろう。

 

知力のベースとなる知能には、大きく分けて流動性知能と結晶性知能の2種類があります。これらの内、主に加齢の影響を受けやすいのは前者の流動性知能と言われています。
流動性知能とは、新しいことを覚える、新たな環境に適応するといったことに必要な知能です。

 

確かに、この「新しいことを覚える」という辺りは、日頃悩まされているIT化への適応力の低下で自覚していることだろう。もっとも不安を覚える項目である。
対して結晶性知能は、蓄えられた知識……。言語能力・理解力・コミュニケーション能力などを指し、加齢の影響を受けにくい傾向にあるという。

 

ただし、加齢によって知能が低下するとはいっても、流動性知能と結晶性知能のいずれも、60歳代が25歳時点よりも高い水準にあるという研究結果があります。それまで右肩上がりに上昇していた知能が60歳前後から衰えていく感覚になるため、「頭の働きが鈍くなった」という体感があるのかもしれません。しかし、知能の高さを絶対値で測れば、シニアの知能は自らが20歳代だった頃に負けない水準にあると言えます。

 

と、心強い言葉で締めくくられていた。

 

また、加齢に伴う記憶機能の低下は、短期記憶を担うワーキングメモリと長期記憶の一部であるエピソード記憶の2つに限られるようだ。

 

ワーキングメモリの機能が加齢によって衰えてくると、素早い判断や同時並行の判断など、スピードやマルチタスク、集中力が求められる思考・行動が困難になってきます。

 

自動車の運転に例えて考えるとわかり易い。
加齢によって著しく衰えを感じさせられる車の運転などに求められる機能が、このワーキングメモリ機能であるらしい。

 

長期記憶の一部であるエピソード記憶は、その言葉が示す通り「いつどこで誰がなにをした」という特定の事象に関する記憶です。

 

「昨日、誰と何を食べたか」と自問し、人知れず首をかしげる方も多いはず。これがエピソード記憶であり、確かに加齢とともに衰えを感じさせられる一つだ。
そしてこの問いに答えるべく、「確かパスタを食べて幾ら払った……」という辺りから徐々に振り返り、誰と一緒だったとか、何を話したなどのエピソードに辿り着くといった経験をしたシニアは多いはず。

 

そういった出来事に関するエピソード記憶は加齢によって薄れがちです。しかし、カレーライスとはどういうものかという意味記憶や、電子マネーの使い方といった手続き記憶は薄れにくいのです(中略)従って、シニアの活躍を知力の観点から最大化するためには、加齢による影響を受けにくい結晶性知能や意味記憶・手続き記憶の活用が鍵になります。

 

確かに、加齢による体力・知力・記憶力の衰えは否めない事実である。
しかし、それをわきまえた上で職種・業務を選択すれば、まだまだ十分に社会や企業に貢献できるはずである。体力面でも知力面でも「すべからく衰えている」わけではなく、なかでも知力においては以前より向上している部分があるという事実を忘れてはならない。
50年前の50代・60代・70代の方々と比べ、その年頃を自らが迎えた今、改めて周囲を見渡すと、同年代はもとより先輩方のなんと若々しいことか。
これが真実であり、「60歳還暦。赤いちゃんちゃんこ」などという、かつての固定概念は捨てた方が良い。
と同時に、「体力は言うまでもなく、知力も衰えてしまっている」という固定概念も捨てなければいけない。

 

文/森健次

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失敗しない定年延長「残念なシニア」をつくらないために

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