嶺里俊介『霊能者たち』発刊記念エッセイ
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ryomiyagi

2020/11/10

今回も崖っぷちから生まれた作品である。

 

二年前の夏のこと。受賞後の新作が発表できないまま、もう三年目。このままでは物書きとして死ぬという、強烈な危機感と焦燥感があった。

 

ふと短編を打診されていたことを思い出した。日程を確認したら、次に予定している長編の取材旅行まで十日ほどある。

 

コーヒーを飲むため湯を沸かし、居間でノートを広げた。コミックを原作としたミステリードラマのDVDをBGM代わりに流しながら、いったん頭を空にする。

 

まず、自分を縛る。ネタはゼロから。取材旅行の前日までに仕上げて、担当者へ短編企画として送ること。

 

そこへドラマの主人公の決め台詞が聞こえてきた。

 

閃いた。追い詰められると、どんなものでも創作の起爆剤になるらしい。一気に話が組み上がり、ノートにペンを走らせる。

 

取材旅行の前日、無事に書き上げた短編(収録タイトル「霊能者の矜恃」)を送ったものの、頭を過るのは不安ばかり。

 

旅行から帰宅した私に届いていた、短編企画の返事。追加の短編(「鳥は涙を流さない」)とほか数編のあらすじを付けて提出した連作短編企画は、最終話はオールキャストで難題に立ち向かう書下ろしで、という注文が出たものの、刊行化まで話が進んだ。生き返るとはまさにこのことだ。

 

幽霊という概念は誰しも持っているが、十人十色である。だが既存の概念をそのまま使うつもりはない。読者に新鮮な刺激をもたらしてこそ物書きというもの。うおお。

 

世界中で語られる心霊譚は枚挙にいとまが無い。現在でも新たなスタイルや概念を伴う話がつぎつぎに生まれ、楽しまれている。

 

その理由は? そう、霊たちは生きているのだ。いつまでも、みんなの心の中に。

 


霊能者たち
嶺里俊介/著

 

【あらすじ】
中村夫妻の幼い娘姉妹が車に撥ねられ、姉が死亡。生き残った妹が変なことを言い出した。「あたし、鏡に映らない。きっと吸血鬼になったんだ」霊を巡るさまざまなトラブル解決のため、人知れず命まで懸ける霊能者たちの活躍を描く「霊能ミステリー」登場!

 

【PROFILE】
みねさと・しゅんすけ
1964年東京都生まれ。学習院大学法学部卒業。2015年『星宿る虫』で第19回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。翌’16年デビュー。著書に『走馬灯症候群』『地棲魚』『地霊都市 東京第24特別区』。

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