「“遊び”の年間計画書を作ろう」幸せな老後のために「してはいけない」5つのこと(後編)
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BW_machida

2020/12/29

 

前編では、『定年前、しなくていい5つのこと』(光文社新書)を紐解き、幸せな老後を送るために「してはいけない」ことの2つを、感想を交えてお話しさせていただいた。1つは老後資金にまつわる「お金」「年金」について。そして2つ目は、定年後の仕事を「再雇用」と「起業」を比較して考察した。

 

いずれも納得の考え方だ。私自身も、叶う限り「そうありたい」と思う。そしていよいよ、残る3つ。「夫婦関係」「地域社会とのかかわり方」「趣味」と、先の2つと同じく、現代人の老後生活を考えるうえで常に問題視されるテーマを読み解いていく。

 

それまで、「家庭」とは別に「会社」という、もう一つの生活圏を持っていたサラリーマンにとって、会社を失うとは「家庭」で全てを完結することに他ならない。そしてそこには、多くの場合「妻(パートナー)」という先住者がおり、彼女にこそ全権が委ねられている。

 

いうまでもなく、このたとえそのものがステレオタイプであり、夫婦の在りようは千差万別ではある。しかし、様々な事情や考えで独身である方や、さらにドラスティックな思いで熟年離婚された方は別として、あえて夫婦二人で過ごす(子どもは独立している)カップルを例にすることで、多くの共感が得られるであろうことも事実だろう。

 

以降は、このステレオタイプの熟年夫婦を例として話をすすめる。

 

・定年後は奥さんを大切にして良好なコミュニケーションを
・夫婦で旅行に行ったり、共通の趣味を持ったりすべし
・家にいると奥さんに嫌がられるので、外へ出て活動すべし
・地域活動や付き合いを大切にすべし

 

以上は、シニア層に向けて開かれる「セカンドライフ・セミナー」的な催しで講師が諭す「より良い熟年夫婦の在り方」だが、著者はこれを「間違ってはいないが、突っ込みどころ満載」と否定してみせる。

 

かくいう私も、同種のセミナーにこそ足は運ばないものの、聞きたくもないのに聞こえてくるこの手の話に、いつも眉に唾して苦笑いしている一人である。

 

職場がいかに戦場とはいえ、まさか本当に命のやり取りをしてきたわけでもないのに、定年を迎えるや、まるで憑き物でも落ちたかのように家族に対する態度が豹変するのも気味が悪いし、用も無いのに外出を繰り返すのも妙なものだ。

 

定年を迎えた自分と、そんな自分を長年支えてくれた妻に対するご褒美とでも称して熟年旅行をするくらいが関の山だと思う。それにしても独断は禁物。ここはやはり、奥方の意見を最大限尊重すべきところだと思う。

 

以心伝心では伝わらない

 

そういう意味ではコミュニケーションがとても大事です。そしてこれは、決して甘く見ない方がよいと思います。つまり、長年夫婦でいるのだから、以心伝心で心が通じ合っていると安易に考えない方がいいということです。(中略)
たとえば、サラリーマンであれば、部下とのコミュニケーションにはそれなりに気を使ってきているはずです。「何も言わなくてもわかるだろう」ではなく、それなりの努力をしないと、伝えたいことがうまく伝わらないという経験は多くの人がしていると思います。

 

要は、関の山とする熟年旅行ですらも決定的な一事ではなく、何より大切なのはコミュニケーションを取ること。他にもこの章には、「名も無き家事」の大切さなど、目から鱗の提言があるが、それもこれも、夫婦間のコミュニケーションこそが大切と著者は言っている。

 

地域コミュニティとは付き合わなくてもいい!

 

そもそも地域コミュニティというのは「壮大なヨコ社会」であり、サラリーマンがそれまで所属していた「大きなタテ社会」とは根本的に構造が違います。そんな大きな違いのあるところに、前にいた組織の感覚で入っていったらどんなことになるでしょう。

 

それまで町内会などとは無縁だった私が、妻に促されて町内会デビューをしたとき、まず最初に感じたのは圧倒的なアウェー感。議事進行がグダグダしてるし、何よりそこに居並ぶ面々の力関係がわからない。皆さん、初めて参加する私ににこやかに挨拶してはくれるけれど、誰が誰だか、ましてやこれまで妻とどんな関係性を持っていた人なのかもわからない。

 

そんな風に何から何までわからない世界の問題を、ただ手元に配られたA4サイズの資料に目を通し、「これはこうだろう」と簡単に答えを出そうものなら、たちまち無下に却下される。しかし、これがもしも職場で起きた問題ならば、やはり同様の答えが瞬時に出ただろうし、それ以前に議題にすらならなかっただろう。そんな感じの議題である。

 

しかし本書の著者が、「伏魔殿」と称する地域コミュニティには、この当たり前の答えを当たり前に遂行できない「前例踏襲」と「暗黙知」という厳然たるルールがある。そんな場所に、定年を迎えたからといって意気揚々と踏み込んでいくなど勘違いも甚だしい。

 

地域活動に参加するとしても、やはりそこで求められるのは、せいぜい嫌な顔もせずに参加する……くらいが丁度いい。なぜなら、そんな私が参加する以前から、その活動は営々と営まれていたのだからだ。

 

無理して趣味を持つ必要はない

 

「定年後は趣味に生きる」という生活には、ある種の憧れがあるものです。(中略)
でも私は、趣味がないのであれば、必ずしも無理して趣味を持とうとする必要はないと思っています。なぜなら、人から言われて無理に趣味を始めても、失敗するパターンが多いからです。

 

と言う著者が、定年後の「三大趣味」をあげている。それが、「陶芸」「油絵」「山歩き」。
思わず「う~ん」と苦笑いを浮かべて首を傾げた人は多いはず。なぜなら先の三つは、老後の趣味を模索する方々が、かなり最終的な選択肢として思い浮かべたに違いない事々だからだ。かくいう私も…。そして本書は、この三大趣味こそ、初めてはみたものの続かず、結局はやめてしまうことが多いとも言っている。少し耳が痛い。

 

著者は、「もしも興味があるなら定年後とは言わず、今からでも初めてみればいい」と、「定年後の…」と勢い込むのではなく、本当に好きになれるかどうかを試してから取り組むことを推奨している。

 

さらに著者は、

 

時間をお金で買うのではなく、時間でお金を買う生活

 

を提唱する。

 

「なかなか時間が取れないから」と、旅行や外食などで提供されるサービスに支払っていたお金を、有り余る時間を使って、自分で「料理する」「旅のプランを考える」というパターンに変換する。それまで費やしていたお金を、自らの時間を費やすことで節約する。確かにこれは、「時間をお金で買う」ことだと思う。

 

そして最後に、

 

勉強することは最高の贅沢

 

と著者は断言する。

 

前述した陶芸に興味があるなら、まずは陶芸の何たるかを紐解くのもいいし、苦手な英会話を習得するのだっていい。それが何であれ、決して夫婦が揃ってしなければならないものではない「勉強」に費やす時間こそが本当の贅沢かもしれない。

 

そんな勉強の集大成(分岐点かも)として、著者は

 

“遊び”の年間計画書を作ろう

 

と言っている。なんと素敵な響きだろう。

 

そこには、妻のお友達を招いてのランチパーティーがあってもいいし、窯を求めて旅をしたり、海外にまで足を運んでもいい。そんな老後が送れたならどんなに素晴らしいか…。

 

そんな風に、とても前向きに老後生活を考えることのできる、「稀有な定年対策本」。
それが『定年前、しなくていい5つのこと』(光文社新書)だった。

 

文/森健次

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