相続は突然やってくる!“地獄”をみた森永卓郎氏が教える「生前にすべきこと」
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ryomiyagi

2021/02/08

 

今やTVでお馴染みの経済アナリスト・森永卓郎氏が、実母の死から始まる父親の介護にまつわる悲喜こもごもから、そんな実父の葬式から相続までの実体験を、面白おかしく紐解いていく一冊『相続地獄』(光文社新書)が先ごろ刊行された。
いつ来るかわからない。けれども、多くの人にいつか必ずやって来る親の最期とその後の相続。それが明日の夢を膨らませるか、はたまた悲しみを倍加させる苦々しい経験となるか…。それは、すでに彼岸へと旅立った人のみが知る(本人も知らない場合も少なくないか)家族における秘中の秘である。
果たして、残された者たちにとって福となるか禍となるか。それは全て、残された者の考え方と処理の仕方一つで決まると言っても過言ではない。

 

父親を見送って20年近くになる私にとっては昔話に過ぎないが、それでも「もっと良い方法があったのでは」という思いは少なからずある。だからか、今になって「賢い相続」的なアドバイスに触れるのは、まさに寝てる子を起こすようなものだが、それでも親しい友人や、ましてや子どもたちには知っておいてほしいことが幾つかある。そんなことを考えているとき本書に出会った。タイトルからして、すでに経験済みの私には何をかいわんやなのだが、著者の森永卓郎氏が、そんな相続にまつわる必須・必見事項を分かり易くまとめてくれている。どう勧めていいものか悩むところだが、子どもたちにも読んで欲しい一冊だ。

 

「相続」は突然やって来る

 

本書の第一章は、この一言から始まる。
高校からのおよそ30年を東京で過ごした私が郷里に戻った時、まだ両親は健在だった。戦中戦後を生き抜いた父は、80歳を迎えてなお、趣味(を超えた規模)の畑や庭仕事など、壮健男子が担う仕事を一手にこなす頑健な男。
そんな私のもとに、幼馴染が数人訪ねてきた時のこと。全員が同い年、幼い頃は似たようなものだが、その後の人生は千差万別。胸を張る者もいれば、肩を落とす者もいる。しかし、そんな悲喜こもごもでさえも笑って話せる、それが幼馴染なのだと改めて郷里の良さを実感したものだ。
そんな楽しい話の中に、少し引っかかる話題があった。それが、親の死を看取ったという友人の葬式後の顛末だ。
「そう言えば、お父さんお亡くなりになったらしいな。ご愁傷さまでした。色々と大変だっただろう」そんな風に、彼らをねぎらうと、
「お前のところは元気そうで良いな……。でもいざその時になると、大変だぜ」
と続けた彼によれば……。
父親が元気なころは無かった(はずの)問題が、亡くなると同時に噴出するらしい。そしてそれは、かつての仕事関係や地域のコミュニケーションから家族・親族に至るまで、どこから何が出てくるかは、生きてるうちはわからないと、自らの経験を交えて赤裸々に語る。そこから遺産相続の話がひとしきり盛り上がったが、総じて彼ら経験者の弁は「大変だぜ」という一言に尽きるのだが、その時はまだ他人ごとでしかなかった。

 

しかし、その時は突然やってきた。
ほんの数日元気がなさそうな父を、「念のため」にと連れて行った病院で、たった一夜の検査入院の翌朝に、父は息を引き取った。
そうして私は喪主となり、葬式の手配からお墓の準備、相続と、慌ただしい日々に追い込まれていった。その間の、一部の人たちとの不毛なやり取りは、今思い返してもうんざりするし、その後、「要介護3」の認定を受けた母の介護など、本書の記す幾つもの出来事が痛いほどに身に迫って来る。

 

幸か不幸か、母は認知症を患っていたが、著者の実父は聡明だったという。
というと、「認知症を患うよりはいいじゃないか」と思いがちだが、得てして現実は異なる。その辺りの事情をよく知る人は、当時の私を前にして皆口々に同じことを言った。
「妙に頭がしっかりしているよりも、少しくらいぼんやりしている方が楽」と。
そう、介護をするうえで最も難しいのは、身体的に不自由なだけで頭のしっかりした高齢者の扱いらしい。ましてや著者の実父のように、新聞記者としての経歴を持つインテリならば、何もかもが思うに任せない現状にイラつき、勢いそのストレスは身近な者に向けられたに違いない。
本書によれば、介護は著者の奥様が担っていたらしいが、その苦労のほどがしのばれる。

 

などと、本書の冒頭にして、その飾り気の無い赤裸々な語り口調に引き込まれ、まるで見てきたように私見をつらつら書き連ねてしまった。

 

しかし、それほど突然に、その瞬間は訪れる。

 

まずは、
(1) 父にかかる生活費は、基本的に父に払わせる
(2) 自分が立て替えた経費はきちんと記録をつけておき、定期的に清算する
(中略)
先ほどの(1)(2)のルールを守り、すべての諸経費をきちんと記録して父に払わせておけば、おそらく相続税を払わずに済んだと思う。

 

著者が支払ってきた諸経費は、父親所有もまま処分せずにいた都内のマンションや介護費用など、おそらく普通にかかるそれよりもはるかに多かったに違いない。それらを生前支払った経費として計上すれば、最終的に支払わねばならない相続税は格段に軽減されたのだろう。この辺りの、経済アナリストである著者の言葉には説得力がある。
しかし、そんな当たり前のことにすら気が回らない。それが、頼るべき存在だった親の最終段階を迎えた家族の、加えて臨終から相続までのドタバタの最中には思いもよらない、かなうならば生前に準備しておくべき事々なのだと思う。

 

さらに本書には、銀行口座の有無から骨董品に至る、相続の対象となり得る品々のチェックから処分の方法など、経済学者であると同時にミニカーなどのコレクターとしても名を知られる著者だからこその多岐に渡るアドバイスが軽妙な語り口調でちりばめられている。

 

世界に冠たる長寿国・日本にあって、年老いた親の世話(介護)から相続に至る物語は、よほどの幸運に恵まれなければ凄絶なものとなる。
そしてそれは、ある日突然始まってしまう。
叶う限りの軽い負担で、出来る限りの節税(によって残すものを増やす)こそが、去りゆく者の願いに違いない。

 

文/森健次

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