料理、恋愛、家族のかたち…誤解されがちなイタリア文化をユーモアたっぷりに語る一冊
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BW_machida

2021/03/10

 

著者はこれまで翻訳家として夏目漱石などの俳句をイタリア語訳し、日本語で詩を書いてきた。今回は日本に住み、日本文化を知り尽くした著者が、イタリア人の視点から見つめた母国の姿をユーモアたっぷりに綴る。日本の読者のイタリアへの勘違いや思いこみ、すなわち「誤読」を解き、イタリア文化を「正読」してもらおうというのが本書の目的だ。

 

著者が日本で暮らして驚いたのが、街にあふれるレストランの数だ。イタリアをはじめ、フランス、スペイン、ギリシャにロシア、日本の街はヨーロッパのみならず南米、アフリカ、アジア各国の料理を味わえる店で賑わっている。では著者の母国、イタリアのレストラン事情はというと、ローマやミラノなど大きな街にあるのは、ほとんどがイタリア料理を提供するお店なのだという。著者曰く、イタリア人の多くはイタリア料理が世界で一番美味しいと感じているそう。

 

「言うまでもなく、一番人気のある料理だからといって、一番美味しい料理とは限らない」そう口にしながらも、著者はどうやら日本のスパゲッティの独裁政権には納得がいかないようす。

 

「日本ではなぜか、スパゲッティもパスタだということが、あまり認識されていないようだ。イタリア人が言いそうな『ああ、パスタが喰いたいなあ~』という嘆声は、日本人の場合には『ああ、スパゲッティが喰いたいな~』に代わってしまうらしい。」

 

おなじパスタなのに、どうして麺類であるスパゲッティばかり特別扱いされているのかと物申すあたりに、著者のユーモアを感じる。パスタは、使用する小麦の種類や、形、卵や水の組み合わせで種類が異なる。だからパスタには少なくとも数百種類、千を超える種類があるらしい。各州や町や村で、昔から伝承されてきたその地域でしか食べられないパスタもあるという。イタリアには、日本人の知らないパスタがまだまだあるようだ。その種類の多さもまた、食べることの好きな日本人がイタリア料理に惹かれてしまう理由なのかもしれない。

 

パスタの神髄以外にも、陽気でおしゃべり好きなイタリア人の性格や、古い物を大切にする習慣、女性へのロマンチックな振る舞いなど、私たち日本人がイメージする極端なイタリア人像が出てきては、その行動の理由に納得したり、驚かされたりする。たとえば、イタリアには「目から離れると、心からも離れる」という諺があるらしい。イタリアの恋人たちが情熱的に愛を伝えあうのは、たとえ目に映らない距離にいたとしても互いの心が離れないようにするためだったのだ。これは納得。諺にもイタリアらしさがよく出ていて面白い。

馬場紀衣(ばばいおり)

馬場紀衣(ばばいおり)

文筆家。ライター。東京都出身。4歳からバレエを習い始め、12歳で単身留学。国内外の大学で哲学、心理学、宗教学といった学問を横断し、帰国。現在は、本やアートを題材にしたコラムやレビューを執筆している。舞踊、演劇、すべての身体表現を愛するライターでもある。
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誤読のイタリア

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