コロナ禍の今こそ渋沢栄一から学べ!この大転換期を乗り越える方法
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BW_machida

2021/03/08

 

「日本経済の父」と呼ばれ、その功績から1万円札の次の顔に内定している渋沢栄一。2021年度大河ドラマの主役にも選ばれたことで今、その生涯に注目が集まっている。幕末から近代化へ向かう目まぐるしい時代を生き抜いた男の根幹にあった思想とはいかなるものか?『渋沢栄一に学ぶ大転換期の乗り越え方』(光文社新書)は、彼の残した名著『論語と算盤』と『論語』そのものを題材に、現代の生き方やビジネスのあり方を考える。

 

私たちは大転換期を生きている

 

世界は今、転換期にある。近代化の過程で作られた前時代の仕組みは、格差の拡大、物質至上主義、個人化といった現象が象徴するように、限界を迎えている。加えて、2019年末から続く新型コロナウィルスの感染流行は、人々の生活、経済のあり方、働き方を大きく変えた。「ニューノーマル」があらゆる場面で生まれ、前時代からの脱却が推し進められているのが、今の時代だ。
本書の著者・田口佳史氏はこのような転換期は周期的に訪れるものであり、今がちょうど、30年周期で訪れる経済の転換期と、150年周期で訪れる文明の転換期の両方に当たっていると説明する。

 

そもそも、私たちが生きる経済社会は「転換」「成長」「安定」という三つの変化をぐるぐると繰り返しながら動いています。

 

「文明の転換」とは経済社会のみならず、人々の暮らしや前提となる考え方、価値観、思想など、私たちの生活ベースがガラリと転換することを指します。

 

150年前、ひとつ前の「文明の転換」があった当時、日本は明治維新の真っただ中。開国によって急激に西洋の思想が流れ込み、経済も政治も、法体系も、人々の暮らし、価値観などあらゆるものが変化した時代だった。その時代を、渋沢栄一は生きていた。1840年に生まれた渋沢は、13歳でペリー来航を、18歳の時には日米通行条約締結、また安政の大獄を目の当たりにしている。20代になると攘夷思想を持って幕府へ反発していた身から幕臣へ転身、パリ万博の視察も経験した。
田口氏は、こうした渋沢の生き方から現代の私たちが学ぶところがあるという。

 

激動の時代を駆け抜けた彼の生き方や考え方は、新しい大転換期を生きる私たちにとても大きく、現実的なヒントを与えてくれるのです。

 

時代に合わせてしなやかに生きた渋沢栄一

 

渋沢は、農民の家に生まれた。農民と言っても貧しい農家とは違い、当時高級品だった藍染めに使う染料の藍玉を作る豪農。経済的に何不自由ない暮らしをしていた渋沢だが、16歳の時、転機となる出来事が起こる。
ある日、地域の農民たちが代官のもとへと招集された。父の代わりにその集まりに参加した渋沢はそこで、代官が「今度、お姫様の輿入れがあるから」と一方的に農民たちに追加徴税を申し付ける場面を目にするのだ。
「普段からきちんと税を支払っているのに、そんなことでさらに徴税するのはおかしいじゃないか!」と渋沢は腹を立てるものの、士農工商の身分制度がある時代、そんなことを言っては首が飛びかねない。「私は父の代理なので一度持ち帰らせていただきます」と答え帰宅するが、武士にそんな生意気を言う農民に代官は大激怒。徴税に反発する渋沢を父がいさめる形で結局は支払うことになる。

 

このできごとは、渋沢の生き方や考え方に少なからぬ影響を及ぼしました。
渋沢にとって士農工商という身分制度こそ憎むべき対象で、幕府政治に対する大きな反発心を抱くようになっていきます。

 

時代はまさに、ペリー来航から日米通商条約の締結を経て、次第に攘夷思想に傾いていく頃。渋沢も例外なく攘夷思想を持ち、政府への反発心を強めていった。渋沢は23歳の時には外国人居留地を焼き払うことを計画。しかしこの計画は実行されず、紆余曲折を経てその後、なんと渋沢は一橋慶喜に仕えることになる。

 

ここが渋沢のおもしろいところで、ただ感情に任せて騒ぎ立てるだけでなく「農民ではダメだ」「武士にならなければ、世の中は変えられない」と冷静かつ的確な思考力を持ち合わせ、必要とあらば、軽々と身分を飛び越えていきます。

 

今の時代も、渋沢のような大胆なキャリアチェンジが求められる時代だ。刻々と変化していく世の中にあって、「自分はこの仕事しかできない」「自分の立場、身分はこれだ」なんて固執していたら足元をすくわれる。しなやかに自分の立場を変えて生きる方法を渋沢から学ぶべきだろう。

 

渋沢栄一のサステナブルに生きるための哲学

 

私たちが参考にすべき大転換期の生き方は、渋沢が残した著書『論語と算盤』の中にもある。

 

今、世界はさまざまなところで「利他の大切さ」が盛んに取り沙汰されています。自分のことだけを考え、自分の利益ばかりを追い求めていたら、世界は遠からず行き詰まってしまう。「そんな発想はサステナブルではない」と多くの人が気づき始めているからです。

 

世界中でSDGs(持続可能な開発目標)が掲げられ、サステナブルを目指す動きが加速する現状を、田口氏はこのように分析する。そして田口氏は、サステナブルな世の中を実現するカギは『論語と算盤』の渋沢の言葉から見つけることができるという。
『論語と算盤』は、渋沢が76歳の時に出版したビジネス書だ。それまで500近くもの企業の設立に関わった渋沢の経営哲学が記されている。タイトルにある論語とは儒教思想の大家、孔子の『論語』のこと。対する算盤はビジネスを指す。渋沢は、『論語』から世の中の道理や道徳を学び、それを生かすことでビジネスがうまくいくと説いているのだ。
利己的な利益だけでないものを目指す現代にうってつけの指南書ではあるが、これだけを聞くと「道徳や道理は大事だ」などという理想論を並べた内容を想像するかもしれない。しかし、それだけでないところに『論語と算盤』の妙はある。

 

算盤は論語によってできている。論語はまた算盤によって本当の富が活動されるものである。

 

ここで渋沢が言っているのは、優れた道理や道徳を理解するだけでは意味がなく、ビジネスによって活かされて初めて本当の価値を生む、ということだ。田口氏はここに渋沢の絶妙なバランス感覚が現れていると話す。

 

渋沢の理想主義的なところと、リアリストの側面がありありと感じ取れる気がします。
しかし、これこそが現代の「サステナブルな企業運営」「サステナブルな社会作り」に必要な部分ではないでしょうか

 

自分の立ち位置に縛られず大胆なキャリアチェンジをし、ビジネスと道徳の両方を重視した渋沢。私たちと同様に変化の時代に生きた彼から学ぶことは多くある。

 

文/藤沢緑彩

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渋沢栄一に学ぶ大転換期の乗り越え方

渋沢栄一に学ぶ大転換期の乗り越え方

田口佳史

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