『天下一のへりくつ者』著者新刊エッセイ 佐々木功
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BW_machida

2021/03/11

奇妙な主人公、降臨

 

「軍師が必要ですね」とは、新作に小田原籠城戦を書く、と決めた打合せの時の言葉です。言ってくださったのは、当時の編集長さんでした。
私の思考は漠然としていて、主人公は北条氏直かな、という程度でしかありませんでした。ですが、殿様の彼が動くのは限界がある、もっとストーリー上で自在に動く人物が必要。で、誰にしようか。様々思い浮かびました。やはり北条一族の誰かか、それとも、敵である豊臣方か。
「例えば、板部岡江雪、とか」と言ってくれたのは、担当編集さん。結論から言えば、私はまた人に助けられたのでした。

 

ただ、その時は、数ある候補の一人として、頭にインプットされただけでした。
では、と、候補者たちの事績を調べていく中で、この男の奇妙さに気付きました。私も歴史の出来事の端々で時折見かけ、その名は知っていましたが、思い浮かぶのは、大河ドラマ「真田丸」で見た山西惇さんの怪演。そういえば、あの坊主、およそ清廉な僧には見えなかったぞ……(スミマセン)。

 

史実では開戦前にお家の代表として秀吉と領土分けの談判をした、軍記では落城後に秀吉と対決した……こんな重責を担う男が、ただ主の意思を行儀よく伝える使僧だったとは思えない。ひょっとして一癖も二癖もある曲者だったのではないか。いや、きっとそうでしょう。そうに違いない。

 

思い至った時、目の前に新たなキャラクターが立ち上がっていました。
男はニヤけ顔で私を睨んでいます。「俺にしゃべらせよ」と。
若きイケメン武将なんかじゃない。剛勇無双の豪傑ではない、ダーティー腹黒策士でもない。
「天下一のへりくつ者」の誕生でした。

 

『天下一のへりくつ者』
佐々木功/著

 

【あらすじ】
天正十八年(一五九〇年)、天下統一をかけた最後のいくさ。豊臣軍二十万に包囲される小田原城。絶体絶命の状況の中、北条家の命運は一人の奇人に託された……。江雪左文字を携え、舌先一つで徳川家康、伊達政宗、千利休らを動かす男ーその名も板部岡江雪!

 

【PROFILE】
ささき・こう 大分県大分市出身。早稲田大学第一文学部卒業。『乱世をゆけ 織田の徒花、滝川一益』で第9回角川春樹小説賞を受賞し、デビュー。近著に『家康の猛き者たち 三方ヶ原合戦録』がある。

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