何に見えるかは本人次第。 見え方の違いを楽しむユニークな絵本
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BW_machida

2021/04/20

客観的には同じ図形であるにも関わらず、2つあるいはそれ以上の形に見えるものを「多義図形」という。たとえば北アメリカでは、外で遊んでいる野ウサギを鳥と間違えてしまうことがあるらしい。芝生で草を食べているウサギを見て、アヒルが寝転んでいるとかん違いしてしまう、なんて具合に。疑うにしても、まずはこの「見間違い」を経験してみるべきだろう。

 

 

『アヒルかも!ウサギかも!』は、そんな見え方の違いを楽しむ絵本だ。表紙には、青い空を背景に、小さな鼻を「クンクン」ひくつかせた可愛らしいウサギが描かれている。しかし、ウサギの耳をくちばしに見るとどうなるだろう。そのとき、ある人には白いアヒルがくちばしを開いて「グワッグワッ」と鳴いているように見えるかもしれない。描かれているのはアヒルかもしれないし、ウサギかもしれない。あるいは、べつの何かかもしれない。

 

 

本書の構成もユニークだ。物語は「ねぇ、みて! アヒルがいるよ!」「アヒルじゃなくてこれは ウサギ!」と声を掛けあうようにして進んでいく。パンを与えてみたり、人参を食べさせてみたり。草むらに隠れられると、たしかにどっちなのか頭を悩ませるところだ。地面を跳ねているようにも見えるし、空を飛んでいるようにも見える。けれど、絵本に描かれているのがウサギかアヒルか(あるいはべつの何か)であるかは、あまり重要ではないかもしれない。

 

 

「じっさいに じぶんのめで たしかめてみよう。アヒルなのか ウサギなのか(そうじゃないなにかなのか)。なににみえるかは どうみるかによって ちがってくるよ。」

 

その言葉の通り、読者は同じものを見ていても人によって見方が異なること、そして、どの見方も決して間違ってはいないということを学べるはずだ。もし何が描かれているのか分かったとしても、どう見えるかは結局のところ本人次第だ。

 

本書はアメリカで25万部も売れたロングセラー絵本で、メーガン妃がアーチー君に読み聞かせをしたことでも話題になった。ぱらぱらとページをめくっているだけでも充分、子どもの気に入りそうだが、さまざまなものの見方を養うきっかけとしてもぜひ役立ててほしい。

 

アヒルかも!ウサギかも!』光文社
エイミー・クラウス・ローゼンタール トム・リヒテンヘルド/著
せきねみつひろ/訳

馬場紀衣(ばばいおり)

馬場紀衣(ばばいおり)

文筆家。ライター。東京都出身。4歳からバレエを習い始め、12歳で単身留学。国内外の大学で哲学、心理学、宗教学といった学問を横断し、帰国。現在は、本やアートを題材にしたコラムやレビューを執筆している。舞踊、演劇、すべての身体表現を愛するライターでもある。
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