発達障害の子に「プログラミング教育」を!コミュニケーションの相手を変えて才能を拓く
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ryomiyagi

2021/05/13

「なんだか周りの人のようにうまくやれない」「人とモノの見方が違う」「生きるのがしんどい」。違和感を方えながら生きてきた大学教授のもとに生まれた子どもは、発達障害だった! 自分もその傾向があった父親は時に悩み苦しみ、そして開き直りながら、障害と付き合う生き方を模索していく――。発達障害親子のユニークな日常奮闘記『大学教授、発達障害の子を育てる』(光文社新書)を紹介します。

 

 

学校選びのポイントは

 

どんな親にとっても、子どもにどういった教育の機会を与えるべきか、は大きな問題だ。
本書の著者で自閉症スペクトラム障害の子を育てた岡嶋裕史さんは、発達障害の子の学校選びについて次のようなアドバイスをする。

 

それぞれのご家庭の方針や、医療機関・教育機関の方針があるので、あくまでも個人的な意見だが、迷ったらより手厚いサポートがある学校に行く方がいいのではないかと思う。
ポイントはクラスサイズとカスタマイズだ。

 

発達障害の子は小学校に上がるとき、普通級か、特別支援学級か、特別支援学校のどれかを選ぶことになる。普通級は基本的に、30~40人の児童を相手に一人の教師がクラス運営を行う。一方、特別支援学級のクラス編成は数人単位だ。特別支援学校では、児童・生徒と教員の関係はほぼ一対一。より一人の生徒に時間や手間をかけたケアを受けられることは大きなメリットだ。
普通級にもメリットはある。自閉症の子は、定型発達の子どもよりも知識や技能を身に付けるのに時間がかかる。興味のない事柄は歯牙にもかけないからだ。岡嶋さんの息子の場合もそうだった。関心のないことは、まるでこのように存在していないかのように振る舞う。活発な普通級の子どもたちと学ぶことで、刺激されて成長するかもしれない。

 

あのきらっきらっした疲れ知らずの元気な子どもたちが、自分の子どもを毎日刺激してくれたらどんなにいいだろう! その行動や立ち居振る舞いの10分の1でも真似してくれたら、かなり真っ当に見えるのでは? などと考えてしまう。

 

混合教育はどちらにとっても負担が大きい?

 

それでは発達障害のある子は普通級に混じるほうが良いのか? 岡嶋さんは、発達障害の傾向を持つ自分自身の経験から次のようなことを話す。

 

定型発達の子の集団に、自閉症や境界域の子が入っていくのは、とても大変だ。ぼくは、今でいう境界域にポジショニングされる人間だと思うが、幼稚園、小学校、中学校と人生のどのステージでもやたらと苦労した。

 

岡嶋さんは、聴力に問題はないのに人の話を聞くことに困難があった。どうでもいいような生活音と、先生の声といった重要な情報も同じように聞こえてしまうのだ。だから授業を聞くときも友達と話す時もかなりの集中力が必要で、放課後にはいつもへとへと。コミュニケーションがうまくできず、クラスの中では疎外感を感じていた。
ほかの子どもたちにとっても、混合教育は難しい。成長途上にあって自分自身の悩みも抱えているはずの学童期・思春期の児童・生徒たちに、自分と違う存在について知識を付け受け入れてもらうのは荷が重い可能性がある。岡嶋さん自身、混合教育の中で障害のある子のケア役になった子が疲弊するのを見たそうだ。

 

混合教育は、理念としてはとても美しいし、将来的な社会のあるべき姿なのかもしれない。ただ、障害者を隔離して、まるで存在しないかのように振る舞う教育は論外としても、現時点では完全な混合教育は定型発達の子にも、自閉圏の子にも負荷が大きいかなと考えている。適切な区分、ある程度の区分は必要だと。自分のまわりの、あくまで極小の事例ではあるけれど、少し距離があったほうがお互いに尊重できているように見えるのだ。

 

特別支援学級でもプログラミング教育を

 

発達障害の子の教育について、岡嶋さんは自身の経験からプログラミングをすすめる。

 

自閉スペクトラムの子は、人とは違う経路やメカニズムで情報が入ってきて、そして出て行く。そりゃあ発語は遅れるだろうし、コミュニケーションは苦手だろう。でも、この場合、入出力機構は止まっているわけではなく、歪んでいるだけである。
だから、コミュニケーションの相手を変えれば、機能する場合がある。

 

そこで登場するのが、コンピューターだ。人間同士のコミュニケーションには難があっても、コンピューター相手ならうまくできるのではないかと岡嶋さんは言う。というのも、岡嶋さん自身がそうだったからだ。人との意思疎通がうまくいかず苦痛を感じ続けてきた岡嶋さんにとって、コンピューターとの意思疎通は快適で、楽しいものだった。コンピューターの立場に立ってコンピューターの言葉で、コンピューターにしてほしいことを伝えるのがプログラミングだ。自閉症の傾向がある人の中でこうしたコンピューターとのコミュニケーションが得意な人を、岡嶋さんは自分以外にも見てきた。

 

ぼくは、10歳の時に自作のプログラムが雑誌に掲載されて、はじめてこの世界に居場所を見つけたような気になれた。IT業界を見渡せば、すました顔で仕事をしているが、「明らかにぼくと同類ですよね」という人にぽこぽこ出くわす。

 

発達障害の子の親として、子どもには何かしら楽しめる仕事を見つけて税金を払う側の人になって欲しいと岡嶋さんは願っている。同様に子どもを思いやるすべての親にとって、『大学教授、発達障害の子を育てる』はヒントを与えてくれるだろう。

 

文/藤沢緑彩


『大学教授、発達障害の子を育てる』
岡嶋裕史/著

 

文/藤沢緑彩

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