「がん」になったとき、「治療法」と「どう生きるか」の選び方
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ryomiyagi

2021/06/11

日本人の2人に1人が「がん」になると言われる時代。がんになる可能性は誰もが持っています。「まさか自分がなるわけない」と思っているところに、その「まさか」がやってくることは珍しくありません。その時、あなたはどうしますか? 人生100年時代、がんについて考えておくことは、自身の生き方を考えることでもあります。がんになってからも自分らしく生き続けるために、あるいはそもそもがんにならないために、私たちは何をするべきなのか?

 

 

「がんとともに生きる」という選択

 

「いつかは自分もがんになるかもしれない」。2人に1人は人生のうちで何らかのがんになるといわれている以上、そう考えることが無駄な心配ではないでしょう。免疫学を専門にする藤田紘一郎先生も、いつか自分が「がん」になる日を想定して生きている1人。もしがんになったら、藤田先生は次のようにするつもりだと話します。

 

(前略)まずは詳しい検査を受けるでしょう。がんの性質や、どの程度まで進行しているのかを客観的に知るためです。その答えは、今後、自分がどのように生きて行くかの指針になります。
万が一、たちの悪いがんや、治癒不能とされる状態だった場合、私は病院に入院するのではなく、インドネシアのカリマンタン島へ飛ぶでしょう。
そこが、私自身の原点ともいえる場所で、世界で最も好きなところだからです。
進行が緩やかながんや早期発見だったとしても、好きな場所、行きたい場所をゆっくりめぐるでしょう。(中略)
ただ、どちらのケースであっても、私はがんの標準治療を受けないと決めています。

 

病気を治すことを生業にしてきた藤田先生ですが、がんになっても治療を選ばないというのです。
がんの標準治療とは、「手術」「放射線治療」「抗がん剤治療」三つ。これらが保険が適用されるがん治療方法の中心です。治療を始めれば、当然それまでのように仕事をし、家族と過ごし、あるいは自由に旅をする生活は出来なくなります。治療の副作用に苦しむこともあるかもしれません。

 

がんになると、多くの医者は「治る」「治らない」かで、その後の方針を決めようとします。ですが、がんには第三の道もあることを知っておいてほしいと思います。「がんとともに生きる」という道です。

 

がんとの共生とは、がんが暴れないよう食や生活を改善しながら普段通りに生きること。藤田先生はこの第三の道を、がんになっても自分らしい人生を生きるための選択肢として示しています。

 

転機となった、弟の死

 

このように藤田先生が、がんを積極的に治療しない決断した裏には、弟をがんで亡くした過去があります。
藤田先生の弟も、医師でした。静岡市民病院で整形外科部長をしていた藤田先生の弟は、手術が上手いことで知られた人物でした。日々ランニングなどの運動を欠かさないスポーツマンだったにもかかわらず、ある日初期のすい臓がんを患っていることが判明します。
当時まだ50代。切除すれば治るだろうとのことでしたが、いざ手術で開腹してみると、すい臓以外への転移が発覚しました。
「なんとしてでも治したい」という思いがあった藤田先生の弟は、「治療をすれば、生存率が2%上がる」という主治医のその言葉に希望を託し、放射線治療と抗がん剤治療を始めました。しかし、治療の副作用が強く出たことで症状が悪化し、がん発見から10か月後には亡くなってしまいます。つらい治療に耐え続けた末の、死でした。

 

亡くなる直前、弟との思い出を藤田さんは次のように振り返ります。

 

亡くなる数日前、「兄貴、カサブランカを買ってきてくれないか」と弟が言いました。
私は静岡市内の花屋さんを駆けまわり、両手いっぱいのカサブランカを抱えて病室に戻りました。
その花束を見て、「きれいだな。とてもいい香りがする」とうれしそうに微笑んだ顔が今でも忘れられません。

 

「命の長さよりも大事なのは、生き方ではないか」。そう強烈に感じたといいます。弟の死から20年以上たった今も、その時の思いは藤田先生の胸に残りました。

 

60代までの人は治療も視野に入れるべき

 

一方で、藤田先生はがんの標準治療を全く否定しているわけではありません。
年齢などの条件によっては、治療は選択肢として必要だといいます。

 

がんは、年齢によって進行のしかたが違ってくる性質を持っているためです。
個人差はありますが、だいたい75歳を過ぎたら、がんの進行は遅くなります。
これは、あらゆるがんに共通します。がんとつきあいやすい、とてもいい年齢になる、ということです。

 

81歳の藤田先生も、がんの進行がゆるやかな年齢。そのために、がんを抑えながら共生するという選択肢が取りやすいのです。それに対して若い世代では、がん細胞が増えやすく、がんの成長スピードは速くなります。
藤田先生は、60代までの人は治療をすることも視野に入れたほうが良いとすすめます。

 

また、がんの種類によっても治療が向いているものもあるそう。

 

がんの種類によっては、手術をすればほとんど治る、というタイプのものもあります。若い人は進行が速いことが多いので、早めに病巣を切り取ってしまうのは有効な選択肢の一つともなるでしょう。こうしたことは、検査を受けるとだいたいがわかります。

 

ただし、がん細胞の増殖があまりにも速いものや、治療が難しいものは、 標準治療を受けることで逆に命を縮めたり、生活の質を著しく落としたりすることもあると藤田先生は指摘します。
そこで考えるべきことが、「生き方」です。
がんになったとき、誰もが自分のこれからの人生に不安を感じ、恐れを抱くはずです。

 

だからこそ、「自分はどのように生き、どのように死んでいきたいのか」を、あらかじめ想定しておくこと。
すると、がんになっても自分にできることがたくさんあると気づけます。
ここが「がんと共生する」という未知の大切な一歩なのです。

 

自分の死生観と年齢、治療をどう折り合わせていくのか。藤田先生はそれこそが、がんになったときに最も大切なことだといいます。
いつか自分にもやってくるかもしれない、がん。その時が来て慌てないために、藤田先生著のがん入門書『もしも、私が「がん」になったら。』を参考に、自分らしい生き方を考えてみると良いかもしれません。

 

文/藤沢緑彩

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