日本の警備ビジネスは東京オリンピック・パラリンピック2020を乗り切れるか?
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東京オリンピック・パラリンピック2020まで、あとわずか2年となった。

 

2020年の東京五輪の警備はスカスカになる――。警察庁が民間の警備会社の人員確保について実態調査を行ったところ、90%以上の業者が人手不足を感じていることが19日、有識者会議の「報告書」で分かった。2年後に迫った東京五輪では大量の警備員が必要だ。そうでなくとも、深刻な人手不足のご時世。大丈夫なのか。(日刊ゲンダイDIGITAL2018年4月25日9:26配信)

 

はたして、日本の警備業は東京オリンピック・パラリンピック2020を乗り切ることはできるのだろうか。

 

2018年現在、日本では東京オリンピック・パラリンピックに向けた準備が各方面で進められている。警備業に限っていえば、セコムと綜合警備保障が大会のオフィシャルパートナーとなって、警備体制の中軸を担うことが決定している。

 

では、この2社に警備を任せておけば安心だろうか?

 

『警備ビジネスで読み解く日本』(光文社新書)を刊行した仙台大学体育学部准教授の田中智仁氏は、そんな日本の警備体制に警鐘を鳴らしている。

 

ここでは、2012年開催のロンドン大会、2016年開催のリオデジャネイロ大会を振り返ってみよう。

 

2012年に開催されたロンドン大会では、世界最大手の警備会社であるイギリスの「G4S」が1万400人の警備員を配置する予定だったという。ところが、開会の約1週間前になって「採用プロセス」を理由に4000人しか警備員を配置できないことが明らかになった(ロイター通信2012年7月15日配信)。同配信の記事によると、G4S社のニック・バックルズ最高経営責任者(CEO)は、イギリスBBCのテレビで、「心から申し訳なく思っている」と述べたという。

 

このことは、世界最大手の警備会社であっても1万人規模の警備員を確保するのは容易ではないことを物語っている。

 

一方、2016年のリオデジャネイロ大会はどうだったか。
この大会では、1万6000人の警備員を確保する予定だった。
しかし、警備会社の破産などによって、開会直前に人員不足が判明。元警察官を動員するなどして対応に奔走したものの、結局、人員不足のまま開会を迎え、観客の整理誘導などで混乱したといわれている。

 

東京オリンピック・パラリンピック2020では、必要な警備員の数は1万4000人と試算されているが、前述の田中氏によると、重要なのは次の二点だという。

 

1.「1万4000人」という数字は、東京湾に面した「コンパクト五輪」の会場配置を前提としている。その後、計画の見直しによって9都道府県42会場の設定が決まった。これによって必要な警備員の数が大幅に増えることは避けられない。

 

2.「1万4000人」という数字は、あくまで「大会に直接関わる警備員」の数を示している。これには、大会とは直接関係ない警備員は含まれていない。

 

田中氏によれば、以上の二点を考えると、全体で大幅な「警備員の増員」は避けられないのではないかと予想している。

 

実際、2018年4月には、共同企業体(JV)が設立され、準大手14社を中心に、全国の警備会社が100社以上参加する見通しとなっている(『産経新聞』2018年4月4日付全国版朝刊)。

 

JVが設立されるということは、遠方から東京へ出張してきて、付け焼き刃の訓練で警備業務にあたる警備員も少なくないと田中氏は予想している。

 

ということは、仮に必要人数の警備員を確保できたとしても、すべての警備員が事前のシミュレーション通りに対応できるとは限らず、また、遠方から集まる警備員の宿泊先の確保、会場までの移動手段の確保などを考えると、当日に警備員が現場に来ることができない事態も想定されると田中氏は指摘している。

 

東京オリンピック・パラリンピック2020を目前に控えて、難題が山積する日本の警備業――。

 

そのとき、何か起きるのか。大会の成功を祈るばかりである。

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警備ビジネスで読み解く日本

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田中智仁(たなかともひと)

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