『木乃伊の都』著者新刊エッセイ 金澤マリコ
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2021/06/25

大航海時代の冒険者

 

十年ほど前、とある歴史シミュレーションゲームにのめり込んだことがあった。
主人公の船乗りが、金を工面して船を仕立て、水夫を雇い、交易品を仕入れ、大海に乗りだすところからゲームが始まる。

 

時は十六世紀、大航海時代。不完全な海図しかなく、羅針盤やアストロラーベやクロススタッフを頼りに一攫千金を夢みて世界に漕ぎ出す命知らずの冒険者。航海の途中では嵐にも遭うし海賊にも襲われるし敵の船団と戦闘にもなる。「〇〇では今、毛織物が高値で取り引きされています」などの情報も次々と入ってくる。面白すぎて、暇さえあればゲーム機を握っていた。何がそれほど面白かったかといえば、時代背景が実に丁寧に描かれていたからだと思う。交易ルート、船舶の装備、戦闘技術、さまざまな交易品とその相場……時代の雰囲気がリアルに感じられた。

 

残念ながら私のゲーム熱は、親指が腱鞘炎になったことで強制終了せざるを得なくなった。戦闘シーンで親指を酷使したせいだ。ゲームをきわめるには若さと体力が必要だと痛感した。

 

思えば小学生の頃から、ある種の歴史上の人物や地名に妙に反応し、その言葉に接するだけでワクワクする人間だった。最初は小学校五年生のときの「アウグストゥス」。彼のことを調べまくり、初代ローマ皇帝といえども私生活では悩み多き人間だったのだと知った。高校生の時には「バビロン」「空中庭園」「パルミラ」に嵌まった。森有正氏の『バビロンの流れのほとりにて』に、なんて美しいタイトルなのだろうと感激した。
もちろん、「大航海時代」も私のキーワードの一つだ。この時代の物語を書くことができて幸運だと思っている。願わくは、そのワクワクの一端でも読者の方々に伝わりますように。

 

『木乃伊の都』
金澤マリコ/著

 

【あらすじ】
十六世紀の長崎・口之津。十歳の次郎丸は、貿易商ペドロに誘われ、貿易船を見学することに。しかしそれは罠であり、次郎丸は日本人奴隷として売られ、母はペドロの妾となったことを知る……。壮大なスケールで描く歴史冒険ミステリー!

 

【PROFILE】
かねざわ・まりこ
千葉県生まれ、静岡県在住。2014年、「ベンヤミン院長の古文書」で島田荘司選第7回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞優秀作を受賞し、2015年に同作でデビュー。

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