『革命キッズ』著者新刊エッセイ 中路啓太
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BW_machida

2021/07/30

世界は嘘で満ちている

 

世界は嘘で満ちている。
体制側や権力が、みずからに都合のよい嘘をしばしばつくのはもちろんだが、反体制や反権力を標榜する側だって嘘をつく。また、専門家や権威とされる人々の言葉がすべて正しいとも思えない。そもそも、彼らのあいだにも意見の対立や論争があるし、新たな研究成果や、政治体制の変化などによって、それまでの権威が否定されたことは、歴史上、枚挙に暇がないのだから。

 

そうなると、「誰かの言うことが正しいか否かを、どう見極めればよいのか?」という問いが湧きあがる。しかし、その問い自体は重要であるものの、それに勝るとも劣らず重要な問いがあると思われるのだ。それは、「嘘だらけの世界にあって、どうやって正気を保って生きていけばよいのか?」という問いである。「正しさ」とか「真相」などというものは、物体同士の衝突や摩擦によって生じる火花のごとく、嘘と嘘とがぶつかり合う中で、時折ちらりと姿をあらわす体のものかもしれず、そのようなものばかりを追い求めていると、死にたくなるほどくたびれてしまいかねないと思うからだ。

 

拙作『革命キッズ』は、嘘で塗り固められたさまざまな「大義」の狭間にあって、なんとか自分の生を確立しようともがく人々の物語であると言える。デモ隊が大挙して国会議事堂を取り巻いた、過去の実際の事件をヒントにしてはいるが、殺し屋や、国際的謀略機関のエージェントなどが暗躍する、まったく荒唐無稽なフィクションだから、それをリラックスして楽しんでいただければ、著者としては幸いである。

 

けれども、何が正しいかよりも、嘘だらけの世界でいかに生きるかに焦点を当てたこのフィクション(嘘)は、荒唐無稽ながらも、他の嘘にぶつけることで、ひょっとすると仄かながらも「真相」の火花を放つかもしれない。そのようにも、著者は思っている。

 

『革命キッズ』
中路啓太/著

 

【あらすじ】
ある政治家から学生運動の支援を依頼された元革命派の闘士・天野春男。今は転向しているが、政治の裏で暗躍するフィクサー・玉城寿三郎には怨みがあるー。政治の季節。学生たち、欲深い政治屋、そして天野。勝つのは誰か。対決の時が迫る!

 

中路啓太(なかじ・けいた)
1968年東京都生まれ。2006年、『火ノ児の剣』で第一回小説現代長編新人賞奨励賞を受賞。近著に『ミネルヴァとマルス 昭和の妖怪・岸信介』『昭和天皇の声』など。

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