無能な人、役に立たない人に使えるインテリ悪口「植物だったらゲノム解析されてる」
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2021年12月22日発売の書籍『教養(インテリ)悪口本』(堀元見著・光文社刊)より、今日から使えるインテリ悪口を抜粋してお届けします。イラッときたときやモヤモヤしたときに使って、ディスりたい気持ちを教養に変えてみてはいかがでしょうか。

 

生物学の世界には、「モデル生物」という概念がある。有名なところで言うと「マウス」だ。要するに「皆が研究に使うスタンダードな生物」だと考えていい。
植物研究の世界にもこういうスタンダードがあり、その代表選手が「シロイヌナズナ」である。
シロイヌナズナは2000年に植物として初めて全ゲノム配列が解読された。その後20年で世界中の研究機関が協力してそれぞれの遺伝子の機能を解明していった。現在地球上で最も研究が進んでいる植物の1つと言っていいだろう。

 

そんなシロイヌナズナは、人間にとって何の役にも立たない植物である。食べられないし、薬にもならないし、利用価値が全くない。
なぜ、利用価値が全くない植物の研究が進んでいるのだろう?
実は、役に立たない植物であることが、モデル生物として好都合だったのだ。役に立たないからこそ、各国の研究機関が躊躇なく発見を公開できるからだ。
例えば、生産量を爆増させるのに役立つ遺伝子配列を見つけたとしよう。これがもし小麦だったら大騒ぎである。「従来の3倍の効率で小麦を生産できる!」となったら、発見した研究機関は、独占して利用したいと考えるだろう。特許を取って他者が使えなくしたり、発見を秘匿したりするに違いない。
しかし、シロイヌナズナではそういうことは起こらない。何の役にも立たない植物なので、利権が絡まないのである。

 

そういうワケで、シロイヌナズナについては国際的な研究協力がめちゃくちゃ進み、ここ20年で様々な遺伝子の機能が明らかになった。植物の基礎研究に大いに貢献したと言えよう。「怪我の功名」ならぬ「無能の功名」である。
このシロイヌナズナの特徴を活かしたインテリ悪口こそが、「植物だったらゲノム解析されてそう」だ。
世間では、無能な人に対して「新人が使えないんだよね~」みたいな表現が跋扈しているが、これは下品な印象を受けないだろうか? 「使えない」はあまりにも安直で機知に乏しい表現だし、言ってて楽しくない。

 

ここはぜひ、無能ゆえに研究が飛躍的に進んだシロイヌナズナに思いを馳せながら、「植物だったらゲノム解析されてる」とか「国際研究協力に向いた題材」とかそういう言い回しを使うことにしよう。
「ちょっと聞いてよ~!ウチの新人が植物だったらゲノム解析されてると思うんだよね~」から会話を始めれば、下品にならずに知的でユーモラスなやり取りになること請け合いだ。
あと、裏返すと「無能な人も意外に役立つときがある」という話でもあるので、フォローにも使えるかもしれない。
「私、全然仕事できない…」と落ち込んでいる同僚に「大丈夫! シロイヌナズナは役に立たないから研究が進んだんだよ!!」と優しく声をかけると元気づけられるかもしれない。おちょくるな! とぶん殴られるかもしれない。試す際はくれぐれも自己責任でお願いしたい。

 

使用例
「異動してきた佐藤さんのこと、正直どう思う?」
「う~ん……なんていうか……植物だったらゲノム解析されてそうかな……」

参考文献
・ 斉藤和季『植物はなぜ薬を作るのか』(文春新書)
・田畑哲之『シロイヌナズナ ゲノム塩基配列決定プロジェクトのゴールを迎えて』(日本農芸化学会『化学と生物』vol.38、No.10、2000年)

 

補足メモ
話を簡単にするために、シロイヌナズナの特徴として「利用価値がないこと」だけを取り上げて論じたが、実際にはもっと色々な特徴が関与している。

 

例えば、「ゲノムサイズが小さいこと」がある。当然ながらゲノムサイズが小さい方が解析が簡単なので、解析の対象としてはありがたい。

 

他にも、「室内で栽培しやすい」「繁殖サイクルが短い」という、研究室で扱いやすいみたいな利点もある。
シロイヌナズナはこういった様々な条件を兼ね備えているため、モデル生物としての地位を獲得したのである。単に無能なだけではない

 

そう考えると、単に無能な人に使うよりも、「無能で扱いやすい人」とか「無能で繁殖サイクルが短い人」とかに使う方がよりハマっているかもしれない。皆さんも色々試してみて、しっくり来る使い方を見つけてほしい。

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