糖化パンデミック!今からすぐ始めるべき「本当のコロナ対策」とは
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ryomiyagi

2021/12/13

 

世界保健機関(WHO)は26日、南アフリカで新たに見つかった新型コロナウイルスの変異型を最も警戒レベルが高い「懸念される変異型(VOC)」に分類し、「オミクロン型」と名付けると発表した。(2021年11月27日 日経新聞より)

 

12月1日は11月30日に感染が初確認されたナミビア人外交官の濃厚接触者ではない、国内2人目の感染者が確認された。
新たな変異体が出現……世界は、このアフリカ南部で発生した変異体の脅威に激しく動揺している。転じて東京では、新規感染者が9人死亡者は6日連続0人(11月28日現在)と嘘のような記録を更新し続け、街はマスク姿の人々で賑わっている。これまでの経緯を考えれば、これらの数字に浮かれる気にこそならないが、とはいえ、死亡者ゼロにはそれなりの説得力があるように思う。ただ、だからといってコロナが終息したわけではない。日本政府が終息を図る能力を持っていないことは明白だし、なにより医療現場の新型コロナの対応力は、この2年間ずっと変わらず、同じことが言われ続けるままに今を迎えている。実はこのことの方が、変異種の出現以上に危険なことではないだろうか。
『肥満・糖尿病の人はなぜ新型コロナに弱いのか』(光文社新書)を入手した。著者は、清水泰行医師。
政府のコロナ対応を語るとき、必ずと言ってやり玉にあがるのは「コロナ病棟の増設」や「ベッド数」とか「人員の確保」だが、本書は違った。
著者は、このウイルスが猛威を振るい始めた頃から言われている「重症化するリスク」についての対処法を、それがいかにないがしろにされているかを解説してくれている。

 

2020年、世界中が目に見えない小さなヤツに翻弄された。もちろん新型コロナウイルスである。人によっては感染の不安に陥り、人によっては死の恐怖に慄いた。新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより日常生活まで変更や制限を余儀なくされた。(中略)
しかし、新型コロナは恐れても、平気で糖質過剰摂取を行い、「コロナ太り」まで招いている。コロナ太りは、自らを新型コロナウイルスの感染時に重症化するリスクを高くするにもかかわらず、そこには恐怖を感じていないのは非常に不思議だ。
新型コロナ感染の重症化だけでなく、様々な病気の原因は糖質過剰摂取にあると考えられる。新型コロナウイルスのパンデミックは怖いのに、糖質過剰摂取により体を蝕んでいる「糖化パンデミック」のことは、多くの人が大して意識していない。

 

痛烈なパンチだった。これは本書の、冒頭の一節だ。
この2年間というもの、連日ニュースは新型コロナウイルスの猛威を伝え、ワイドショーは「医療崩壊の危機」を叫び続けた。そして同じように、「重症患者の推移」を伝え、深刻な顔で基礎疾患を有する人のリスクを語ってきた。にもかかわらず、国民が留意すべきは「手洗い・換気・マスク・ディスタンス」と「声高にしゃべらないこと」であり、決して「糖質制限」ではなかった。この一つをとっても、この間のコロナ報道や講じられてきたコロナ対応は的外れだ。

 

新型コロナ感染で重症化、死亡リスクの高い要因として、男性、高齢、肥満、糖尿病、高血圧などがある。
19件の研究、1万801人の患者を合わせた分析(メタアナリシス)では、新型コロナ感染による糖尿病患者と非糖尿病患者の死亡率は、それぞれ21.3%と6.1%であり、非糖尿病と比較して糖尿病の死亡の可能性は2.39倍であった。糖尿病患者の重症化は1.43倍であった。

 

糖尿を患う人とそうでない人の死亡率の違いは、いつかのワイドショーで同じような数字を言っていた。たしかにその時のコメンテーターは、この2倍以上の死亡率の高さに驚き、基礎疾患を持つ人に対して一層のコロナ対策(と言っても出来ることはマスクと換気ぐらい)を促していた。
本当にそれでよかったのだろうか。
感染による重症化のリスクが高いのは、「糖尿病」と「高血圧」と当初から言われていたのに、ただ「気をつけなさい」ではいけなかったはずだ。
やれ「アンチエイジング」だ「美しいボディライン」だのとのたまう際には、糖質オフを声高に唱え、それに即したレシピやサプリの紹介までするのに、コロナ感染の重症化リスクを語る際にはそこまでは言及して来なかったように記憶している。

 

余りの人気にシリーズ化が続く天才女医を主人公したTVドラマで、困難な手術を終えた主人公が、病院の屋上でガムシロのオンザロックを一気飲みする、毎度お馴染みのシーンがある。手術で疲れた脳に、素早くエネルギーを供給しなければいけない……というメッセージだ。そういえば厚労省も「脳にはブドウ糖が必要」と言い続けている。
たしかに、脂質やタンパク質よりも素早くエネルギーとして利用できる糖分は、人間が活動していく上で、とても重要な役割を持っているし、なにより味覚に訴えるものが大きい。
しかし、そんな今現在も、国内は言うに及ばず世界中でコロナ感染拡大が危ぶまれ、重症化の危機に怯えているというのに、一向に「糖質制御」は言われない。
おそるべき野放図とアンバランスではないだろうか。

 

また著者は、「果糖」は生存に有利だった と、まだ人類が狩猟採取民だった頃の生存を賭けた進化を語る。

 

進化の過程では食糧や水が不足し、飢餓との戦いであった。生き残るためのメカニズムの重要な成分として、人類は果糖を選んだ。
我々の身体は、食糧以外からも果糖を得る手段を持っている。自分の体の中で果糖を作ることができるのだ。

 

なるほど。まだ人類が、生きるための糧を求めて営みのほとんどを費やさなければいけなかった時代のサバイバルに、最も大切なエネルギーを、体内で作り出すことのできる果糖を選択することで勝ち抜いたと著者は教える。
と同時に、にもかかわらず現代人は、体内で自己生成できるはずの果糖を過剰に摂取し過ぎているとも言い募る。野菜嫌いで果物ばかり口にする私には、とても耳の痛い言葉だ。

 

さらに著者は、

 

スイスで行われた研究では、通常の病院食を食べていた慢性心不全の患者と、個別に栄養状態を評価して、それに応じて個々の食事内容を変えた食事をしていた患者では、30日後の死亡率は、通常の病院食を食べていた方が2倍以上高かった。
つまり、病院食というのは健康食でもなんでもなく、患者それぞれで違うニーズを全く満たしていないのだ。(中略)
新型コロナ感染でも、ホテルなどでの療養の食事は、コンビニ弁当とほとんど変わらないようだ。食事=エネルギーではない。食事は人間の体を形作ったり、正常な代謝を起こすための材料、原料を体の中に取り入れることである。

 

と、「重症患者のベッド数」とか「看護スタッフの数」ではない、極めてわかり易く、かつ具体的な改善プランを提唱している。

 

『肥満・糖尿の人はなぜ新型コロナに弱いのか』(光文社新書)は、わかっていたつもりで全く理解していなかった、今からすぐ始めるべき「本当のコロナ対策」を教える救国の一冊だ。

 

文/森健次

 


肥満・糖尿病の人はなぜ新型コロナに弱いのか
清水泰行/著

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