『新しい世界で 座間味くんの推理』著者新刊エッセイ 石持浅海
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ryomiyagi

2022/01/03

登場人物の成長 石持浅海

 

長寿シリーズの中には、時間が止まっているものが少なくありません。
作中では、探偵役や周辺の人物は年を取らず、同じ人間関係の中で話を重ねていきます。シリーズ探偵を安定的に活躍させるための、定番の手法といえるでしょう。

 

安楽椅子探偵ものだと、その傾向が顕著です。なにしろ自分が事件に巻き込まれたわけではないから、事件によって心境の変化が生じたりといった「乱れ」が生じる心配もありませんし。

 

僕が十八年間続けている『座間味くんシリーズ』も、安楽椅子探偵ものです。けれど登場作である長編『月の扉』では、探偵役である座間味くんは、ハイジャック事件にしっかりと巻き込まれています。続く連作短編が『月の扉』から数年後という設定になってしまったため、時間を止めるのに失敗しました。おかげで、初登場時には二十代だった座間味くんも、今はすっかり中年です。

 

物語世界で時間が流れるため、執筆の最中、ずっと「今は『月の扉』から何年後」という意識を持ち続けてきました。そうしてシーズンを重ねるうちに「あれ? このまま続ければ、もう少しであのとき人質になった一歳児が二十歳になるんじゃないか?」ということに気がつきました。酒を飲みながら謎解きをするシリーズなので、登場させるためには、成人を迎えてもらわなければなりません。大人になったあの子に語り手を任せれば、素敵な話ができるのではないか。

 

本作『新しい世界で』で、ようやくそれが実現しました。語り手はハイジャック事件の人質だった、玉城聖子。この短編集の中でも時間は流れ、聖子は大学生から社会人へと成長していきます。一歳で危機に陥り、不幸な少女時代を過ごした彼女は、はたして安住の地を見つけられたのか。

 

そんな親戚のおじさんおばさん視点でお読みいただければ嬉しいです。

 


『新しい世界で 座間味くんの推理』
石持浅海/著

 

【あらすじ】
大学生の玉城聖子、警視庁の幹部、会社員の座間味くん。世代も性別もバラバラだが、不可解な話を肴に酌み交わす仲だ。杯を干すほど冴える推理。極上の酒。かけがえのない友。不可解な謎。鮮やかな反転。2021年の掉尾を飾る、短編本格ミステリの精華!

 

石持浅海(いしもち・あさみ)
1966年愛媛県生まれ。2002年、『アイルランドの薔薇』で長編デビュー。03年『月の扉』が各種のランキング企画上位にランクイン。近著に『殺し屋、続けてます。』『君が護りたい人は』などがある。

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