気球で火星一周、太陽系一高い山登山…夢の「火星旅行」ガイドブック発刊
ピックアップ

ryomiyagi

2022/01/12

気球で巡る火星一周旅行ルート

 

先ごろ、前澤友作氏(『ZOZO』創業者)が12日間の宇宙旅行より無事帰還した。日本人の民間人としては秋山氏(元TBS記者)に次いで2人目だが、その費用を(秘書兼通訳の同行者の分も含めて)全額自己負担するという、全くの個人旅行としては初めて。カザフスタンのバイコヌール宇宙基地から打ち上げられたソユーズMS-20から、ISS内に入った際の「宇宙は本当にあった」の一言は、確かに日本中のお茶の間に届いた。そして、そんな様子を中継するワイドショーは、「宇宙旅行時代の幕開け」を口々に宣言していた。

 

そんな絶妙なタイミングで『火星の歩き方』(光文社新書)が発刊された。著者は、JAXA宇宙科学研究所教授の臼井寛裕氏と理学博士の野口里奈氏とJAXA宇宙科学研究所の庄司大悟氏のお三方。まさに狙いすました発刊だけに、手にした時はおもしろ本か? とも思ったが、このラインナップを知れば、本書の本気度が知れるというもの。
まず本書タイトルの『火星の歩き方』は、かつて高度成長時代を謳歌する日本人が、老いも若きも海外へと雄飛した当時に一世を風靡したガイドブック『地球の歩き方』(ダイヤモンド社。現在は学研プラス)を模したものだが、それだけに当時を知るシニア層には「これは本物のおもしろ本かも」と訴えてくるものがある。

 

45億年、手つかずの自然を味わい尽くす旅へ! 気球で回る火星一周プラン

 

若い方々は知らないだろうが、幸いにも私は、アポロ11号が月面に着陸(1969年7月20日)し、人類が初めて月に降り立った瞬間をTVにかじりついて目撃している。全世界に中継されたあの瞬間、世界がざわめくのを感じたものだ。と同時に、このアポロ計画には陰謀論がつきまとい、「本当は月に行っていない説」と「宇宙人遭遇隠ぺい説」は常に囁かれ続けてもきた。正確には、この二点が覆されたわけでも立証されたわけでもないが、それでも同氏がISSから発した「本当に宇宙はあった。本当に宇宙ステーションはあったよ!」の一言は、それまでの陰謀諸説を払しょくする勢いと説得力がある、まさに一般人を代表するような正直な感想だった。
そして(私を含む)多くの人たちが、来るべき「宇宙旅行時代」の幕開けを実感した。

 

おそらく地球の場合、知らない場所を旅行するときにまず参考にするのは、ガイドブックだと思います。ガイドブックがあれば、その土地のホテルや観光名所、さらには歴史や文化まで、完全とはいかずとも知ることができます。何も分からないことに比べれば、そのときの安心感は段違いでしょう。実際、世界各地のツアー旅行を企画したトーマス・クックもガイドブックを出版しています。火星を旅行するときも、おそらく事情は同じはずです。
そこでこの本では、火星が旅行の対象となる時代を見越し、ガイドブック仕立てで火星の面白い場所を紹介してみたいと思います。

 

火星(左)と二つの衛星フォボス(中央)とダイモス NASA/JPL-Caltech/GSFC/Univ.of Arizona

 

果たして火星は、将来、地球人類が生きていける場所なのか。火星人は居るのか。UFOの基地はあるのだろうか。などなど、私たち地球人が、まだ宇宙に行ったことがない頃から、ずっと抱き続けた「火星」への憧れと疑問が幾つも湧き上がってくる。
と同時に、思っていた以上に近い将来、まるで海外旅行に出かけるような気軽さで宇宙に旅立つ日が来るのではと、誰もが思う今だからこそ、火星には完璧な旅行プランを携えて望みたい。
そんな読者の期待に応える、豪華著者陣が出したプランが「気球でまわる火星一周」「オリンポス登山」「火星の極地へ」だ。
わずかながらも大気(空気ではない)があり、地球に比べておよそ3分の1しかない重力の火星では、すでにドローンが活躍しており、そういった意味でも気球による移動には説得力がある。標高2万メートルを誇る、太陽系最高峰と言われるオリンポス山は、登らずとも観光の目玉だろう。そして、火星移住を思い描く際に必ず問われる「水問題」を解き明かす、謎の地下水源や氷床を有する南北の極地は、オリンポス山と並ぶ観光スポットに違いない。

 

出発地に関しては火星ではなく、火星の衛星ファボスを設定してみました。そこから、ロケットで見渡す限り平地が広がるアマゾニス平原に降り立ち、気球に乗って東向きに移動します。途中、太陽系最大級の火山ともいわれるオリンポス山や、タルシス三山、“火星の亀裂”とも言えるようなマリネリス峡谷、ヘラス平原、イシディアス平原を経ながら、最終目的地であるエリシウム平原へと向かいます。(中略)
「なぜエベレストに登るのか」と尋ねられた登山家のマロリーが「そこにエベレストがあるから」と答えたことは、近代登山の性格を表しているといえます。まさに、「山に登ること」が登山の目的です。(中略)
そして、火星には地球と同様に様々な山がありますが、おそらく最も人々の興味を掻き立てるのはオリンポス山のはずです。なぜなら、第2章でも述べた通り、オリンポス山は火星ではもちろん、太陽系全体を通しても最も高い山の一つだからです。(中略)
火星一周ルートでは気球に乗って空から火星の面白い地形を巡りました。そのため、火星の地下については余り取り上げてこなかったのですが、南極域の地下には、どうしても外せない場所が一つあります。それは、氷の下にある湖です。(中略)
観測データを解析したところ、深さ約1・5kmの地点に、レーダーに強く反射する面が見つかりました。研究チームは、二酸化炭素の氷など、様々な可能性を検討してみたのですが、その結果、この反射面は液体の水で作られたものであるという結論にいたったのです。

 

などと、三人の専門家が立てた火星旅行プランは、それでなくとも掻き立てられた好奇心に、さらに色どりを付けていく。
本書『火星の歩き方』(光文社新書)は、21世紀を象徴するであろう宇宙旅行を、それまでの「ただ思い描く」だけだったものを「早く行きたい」とぐっと手元に引き寄せ、さらに期待の一冊として書棚に並べたくなる夢の詰まった一冊だった。

 

文/森健次

 

『火星の歩き方』
臼井寛裕 、 野口里奈 、庄司大悟 (著)

関連記事

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitterで「本がすき」を

RANKINGランキング