「死」への危険性が増す「肥満」。肥満で病気のリスクはどれくらい高まるのか。
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「太るのはイヤ」と思っている方は多いでしょう。実際、ウォーキング、ジョギング、ジムでのトレーニング、水泳、等々、太らないための努力を行っている方は多いと思います。しかし、どうでしょう。世の中を見渡してみると、太っている人が減っているようには見えません。

 

実際、日本に限らず、世界では肥満者が急増しています。そして今問題になっているのは、「健康を損なう肥満」が世界中の人々に蔓延しつつあることです。

 

なぜ、世界で肥満者が急増しているのでしょうか。
答えは簡単です。現代は美味しいものがあふれている時代です。そう、「食べ過ぎてしまうから」です。
しかし、考えてみてください。では、私たちはなぜ食べ過ぎてしまうのでしょうか。
意思が弱いから?

 

愛知県岡崎市にある基礎生物学研究所は、2016年、ノーベル生理学・医学賞を受賞した大隈良典氏がオートファジーの研究をしていた場所として知られています。そこで現在、食欲と肥満の仕組みを明らかにする研究を進めている新谷隆史准教授の最新刊『一度太るとなぜ痩せにくい?』(光文社新書)では、研究の歴史がまだ浅いという「肥満」についての興味深い数々のエピソードが綴られています。本書の記述から、その一部を紹介しましょう。

 

肥満は万病の元

 

肥満自体は病気ではありません。しかし、肥満状態では、病気の確率がグンと高まります。
肥満によって発症のリスクが高まる疾患としては、「糖尿病」「高血圧」「高脂血症(脂質異常症)」「脂肪肝・脂肪肝炎」「がん(悪性腫瘍)」「高尿酸血症(痛風)」「心筋梗塞・狭心症」「脳卒中」「腎臓病」「睡眠時無呼吸症候群」「ひざや股関節の痛みや変形」など、様々なものが知られています。

 

特に肥満者は、「メタボリックシンドローム」にならないように注意する必要があると、新谷准教授は述べています。
メタボリックシンドロームとは、「肥満」(正確には内臓脂肪型肥満)にプラスして、「高血糖」「高血圧」「脂質異常」の3つのうち、2つ以上が重複した状態のことをいいます。それぞれの異常がたとえ軽度であったとしても、複数の異常が同時に生じているメタボリックシンドロームでは、動脈の内壁が厚くなり、また硬くなる「動脈硬化」が進み、心筋梗塞や脳卒中など、「死」に直結する重篤な疾患に陥る危険性が大きく跳ね上がります。

 

では、BMI(肥満の指標であるボディマス係数)、あるいは体重が増加すると、どれくらい病気になりやすくなるのでしょうか。

 

まず、BMIが1高くなると、糖尿病の発症リスクはおよそ20%増加すると推定されています。また、肥満と血圧の関係について解析したいくつかの研究によると、BMIが25以上の肥満者では、高血圧を発症する確率は、BMIが18~25未満の人の2~3倍増えると推定されているといいます。

 

さらに、日本人男性約5000人を4年間追跡調査した研究では、高コレステロール血症の発症リスクは、BMI21~21・9の人に比べてBMI27~27・9の人で1・8倍、BMI29~29・9の人で2・7倍になることが報告されているそうです。また、同じく日本での研究結果から、メタボリックシンドロームを発症すると、心疾患を発症する割合は、1・9倍になることが示されているといいます。

 

一方、肥満と直接関係がないように見えるがん(悪性腫瘍)についても、多くの研究から両者の相関性が高いことが明らかになっていると述べています。実際、国立がん研究センターは、肥満によって男女ともに大腸がんと肝臓がんが増えること、閉経後の女性が乳がんにかかるリスクが増加することを報告しています。また、欧米人を解析した研究によると、がんによる死亡リスクは、BMIが22・5~24・9の人に比べると、BMI30~34・9で1・3倍、35~39・9で1・5倍、40~49・9で1・7倍になることが示唆されています。

 

このように、肥満になると様々な疾患を発症する確率は高くなり、その結果、死亡する危険性は高まることになります。例えば、世界中の様々な地域における肥満の危険性について調べた2016年の論文によると、東アジア人はBMIが22・5~25で最も死亡率が低く、BMIが5増えるごとに死亡リスクは約30%上昇することが報告されているのです。

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一度太るとなぜ痩せにくい?

一度太るとなぜ痩せにくい?食欲と肥満の科学

新谷隆史(しんたにたかふみ)

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