新世代アート企業「チームラボ」には役職も営業マンもなし
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『ミラノ万博日本館広報資料より』

 

2015年、「地球に食料を、生命にエネルギーを」をテーマに、約140の国や国際機関が参加して、イタリア北部ミラノ郊外でミラノ万博が開催されました。

 

日本館は四季折々の農村風景に加え、「いただきます」「もったいない」という日本人独自の食に対する感謝の精神や、農林水産業における技術を体験型の展示で紹介していました。

 

同館は各国展示館の中で最も人気が高く、最長10時間待ちの日もあったといわれています。結果的に全入場者の1割にあたる約228万人が来館、優れた展示館に贈られる展示デザイン部門・金賞も受賞しています。

 

なぜ、これほど日本館の人気が高かったのでしょうか。その秘密を解く鍵は、大胆な「クリエイターの登用」と「最先端デジタル技術による双方向体験型」の展示にありました。展開されるライブ・パフォーマンス・ショーは、高い創造性と先端デジタル技術によるまったく新しい視覚・身体体験で、世界中から訪れた来館者の度肝を抜いていました。

 

ミラノ万博・日本館の成功は、伝統的な日本の価値観や考え方が、最先端テクノロジーの創造的活用によって、世界最高レベルの作品を生み出し得ることを証明しています。しかも、その中心的役割を担っていたのは、チームラボやライゾマティクスといった新世代の日本企業です。

 

2015年のNHK大河ドラマ『花燃ゆ』は、吉田松陰の妹である主人公が、激動の運命に翻弄されながら、その志を新時代へと引き継いでいく物語ですが、この番組のオープニング・タイトルバックはチームラボによるものです。

 

立体的に表現された「花燃ゆ」の題字が、水に溶けるように変化していき、およそ2分30秒間に500万本の花が咲き散っていく様は、松陰のまいた「種」が花開き、世界を一変させることを表しているそうです。

 

チームラボは2000年の年末、代表を務める猪子寿之氏が、「インターネットの誕生に衝撃を受けた」こと、そして「友だちとずっと一緒にいたかった」ため、東大の同級生ら5名とともに同社を設立したことに始まります。

 

設立当初から、同社ではアート作品を創作していました。しかし、それだけでは企業としては成り立ちにくく、会社存続のために始めた企業のシステムやホームページ制作請負が評判を呼び、業績も徐々に拡大してゆきます。

 

自らを「ウルトラテクノロジスト集団」と名乗り、現在、その事業領域は多岐にわたっています。いずれも最新のデジタル技術と、高いクリエイティビティの融合が大きな特長といえます。

 

チームラボの企業運営は、部長や課長といった「役職がなくフラットな組織」「ルールを極力減らす」「売上目標どころか営業マンすらいない」など一見型破りに思えるようなものばかりです。

 

しかし、メンバーの自主性に委ねるという同社の経営方針は、複雑化する情報社会において、クリエイティビティを効果・効率的に発揮する上では理にかなっています。

 

私たちがいかに論理性という常識に縛られ、直感力をおろそかにしているか、猪子氏の言葉を紹介したいと思います。

 

「すごいテンションが上ったり、すごい感動したり、でもそれを言葉で説明することができないような感動の領域があって。その『言葉にできない領域』は、論理がないので再現性がない。(他の企業がコピーできない)そういったものがこれからの社会では差異を生むと思っています」

 

言語化できない価値を増幅して作品化するチームラボの存在は、これからも世界中で必要とされていくはずです。

 

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アート×テクノロジーの時代

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宮津大輔(みやつだいすけ)
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