沖縄に行けないなら、この本を読めばいい。「自分モード」で生きるための『直感と論理をつなぐ思考法』

一ノ瀬翔太 編集者

『直感と論理をつなぐ思考法』ダイヤモンド社
佐宗邦威/著

 

小浜島の宿「はいむるぶし」で泊まった部屋。(写真:一ノ瀬翔太)

 

『直感と論理をつなぐ思考法』に書かれているのは、「他人モード」の人生に終止符を打ち、「自分モード」で生きるための戦略である。

 

ところで私は4月の半ば、妻と一緒に沖縄を旅行した。4泊5日、小浜島2泊→本島2泊の旅程。はじめの2日間は雲が出ていて、2日目の午後は土砂降りだった。元々のんびりするつもりだったからよいのだけれど、唯一予約を入れていたシュノーケルも中止になって、オーシャンビューの部屋で「バチェラー・ジャパン」シーズン2を一気見したり、グレッグ・イーガンの『宇宙消失』を読んだりして過ごした。3日目以降は快晴で、レンタカーを借りて美ら海水族館やアメリカン・ビレッジ、国際通りなどを観光して回った。

 

沖縄自体のすばらしさとは別にもうひとつ貴重だったのは、他人や時間に急かされずに過ごす時間がとれたことだ。普段は月1冊ぐらいのペースで本を作っていて各種締切に追われているし、どうしたら本が売れるか、どんな本に需要があるかということばかり考えている。そうすると、『直感と論理をつなぐ思考法』で言うところの、会社や世間ありきの「他人モード」の思考に陥りがちだ。旅行中は日常のサイクルから一時的に離れて、自分はそもそも何がしたいのか、この先、妻とどんなふうに生きていきたいのか、ということを「自分モード」で考えた。そういう時間の欠如と、それに気づいてさえいなかったことを、私は沖縄の地ではじめて認識したわけだ。

 

『直感と論理をつなぐ思考法』によれば、「他人モード」の思考には限界があり、「自分モード」から生まれる「妄想」「ビジョン」を駆動力にすることで、真のブレイクスルーが生まれるという。とはいえ、「自分モード」になるためにしょっちゅう旅行に行くわけにもいかないので、本書では、「自分モード」の時間を毎日の生活の中に人為的に作り出す(デザインする)ための方法がいくつも紹介されている。

 

たとえば、ノートを買い、毎朝15分、自分の欲望や妄想をありのまま書きつけること。LINEやTwitterの通知は私たちを「他人モード」に引き込むから、スマホやPCではなく紙のノートを使うのがよい。ノートに向かう時間をスケジュール予約することも忘れずに。「自分モード」に入るための「余白」を、空間的・時間的に作り出すわけだ。ただし、そうして得られた直感がそのまま世界にインパクトをもたらすことはなく、今度はそれを「論理」の領域で具体的な成果物に落とし込んでいくプロセスが欠かせない。本書はそのためのメソッドまでをも、具体例を豊富に交えて教えてくれる。

 

そういえば、以前に本欄で紹介した『〈効果的な利他主義〉宣言!』は、「気の毒な他人を助けたい」という「直感」にもとづく慈善行為を、いかに科学的・客観的な「論理」に落とし込むかという話だった。また書評とは、「この本おもしろ!」という「直感」を文章の「論理」で広く他人に向けて表現する試みに他ならない。さらに言えば、本というプロダクト自体が……(以下略)。「直感」と「論理」のあいだに一切が成り立つのが世の理だとすれば、この世に生きる私たちにとって、『直感と論理をつなぐ思考法』は明らかに必読なのだ。

 

 

『直感と論理をつなぐ思考法』ダイヤモンド社
佐宗邦威/著

この記事を書いた人

一ノ瀬翔太

-ichinose-shota-

編集者

1992年生まれ。東京大学教育学部を卒業したのち早川書房に入社し、現在ノンフィクション書籍の編集者。担当書にマイケル・ウォルフ『炎と怒り』、スティーブン・スローマンほか『知ってるつもり』、岡本裕一朗『答えのない世界に立ち向かう哲学講座』、アジェイ・アグラワルほか『予測マシンの世紀』など。


・Twitter:@shotichin

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