「見守る子育て」を実践中の私さえ、力をもらった本 『小児科医のぼくが伝えたい 最高の子育て』

吉村博光 HONZレビュアー

小児科医のぼくが伝えたい 最高の子育て』マガジンハウス
高橋孝雄/著

 

 

私も2児の父として、子育てに迷うことがある。しかし正直にいうと、自分が若くないこともあって、あまりストレスなくやりすごしている。子ども達に何かを訊かれればシッカリと答えるが、基本的に、彼らの意志を尊重する見守る子育てをしているからだ。

 

本書は、「理想の親を目指す子育て」ではなく、私のような「見守る子育て」を推奨した本である。小児科医の著者には専門的な知識があるし、子供と接した経験も豊富だ。本書を読んで私は、大船に乗ったような安心感をもらうことができた。

 

私にしてそうなのだから、理想の親を目指して疲れ果てている人が読んだら、きっと涙腺が崩壊してしまうだろう。ネットには、そのようなレビューがあふれていた。本書から、引用する。

 

・母乳が出なければミルクでOK。おかあさんがラクな方法を選びましょう。 
・「理想の母」を追い求めないで。子どもが好きなのは、いまのおかあさん。
・保育園に預けて、働くおかあさん。短くても濃い時間があれば大丈夫です。 
・「早くしなさい」と言いすぎない。子どもから考える力を奪います。 ~本書第2章より

 

これだけで、肩が軽くなった方もいらっしゃるのではないだろうか。子育ては「見えない常識」との戦いという面があるが、その多くは都市伝説の類だと私は考えている。そもそも、書店にいけば様々な主張の育児書が並んでいる。結局のところ、子育てに正解はないのだ。

 

では、何を目指して子育てをすればよいのだろう。本書には、「共感力」「意志決定力」「自己肯定感」の三つを身につけること、と書いてある。そのためには、親の価値観を押し付けるのではなく、子供が自分で考える時間が必要だというのだ。

 

本書で展開されるのは、「こうすべし」という説教ではなく、ゆるやかなゴール。親はずっと遠くにそのゴールを見据え、子供たちの成長を見守り、ゆっくりと過ごせばよい。この夏休みは、旅行につき合わせるのではなく、のんびりと過ごしてみてはどうだろう。

 

子どもの人生をよりよくするには、持って生まれた才能や個性をそのまま花開かせてあげればいいだけ。情報に振り回されるのは無意味です。  ~本書第2章より

 

本書だって、もちろん、情報の一つだ。上記の引用文を解釈すれば、本書に感服したからといってアキラ100%ならぬ孝雄100%になってはならない、という意味にもとれる。多種多様な情報に触れるのは有益だが、もとの自分が少し変わるだけで良いのだ。

 

情報に振り回されるということは、つまりロストアイデンティティである。じつは私もダイエット本や育児書、ビジネス書を次々に読み漁ってきたのだが、50歳近くになるとこの辺の機微がわかってきた。最も大切なのは、自分自身を見失わないことである。

 

そんなことを考えていると、こんな言葉をみつけた。「親だけでなく、育児をする人みんなが健康でいることが大事です」いやはや、ごもっとも。育児のストレスで不健康になるのは本末転倒だ。子供も心配するし、罪悪感を持つだろう。

 

本書には、他にもヒザを打つ言葉が多数あったので、引用したい。

 

「勉強しなさい、は逆効果。伸びるタイミングは自分でつかませる。」
「習い事は、長続きしなくてもいい。むしろいろいろなものに挑戦させるべき。」
「どんな子どもでも、みんな、才能のシグナルを発信しています。」
「不登校の子どもには、休息が必要。「行かなくていいよ」と伝えます。」 ~本書より

 

本書は主張に一貫性があり、かつ一つ一つのセンテンスに力がある。そこから力をもらうだけでも、読んだ意義はある。もちろん、一字一句覚える必要などない。これだと思ったものだけ、吸収するような感覚で読めば良いと思う。

 

新学期が始まると、様々な出来事が起きるだろう。子を叱って型にはめるのが親の仕事だと思うと、親自身が楽しくない。善悪の区別のない日々の出来事の中に、変化や成長を感じてみてはどうだろう。ありのまま(天然色)の子育てのワクワク感をもらえる本だ。

 

『小児科医のぼくが伝えたい 最高の子育て』マガジンハウス
高橋孝雄/著

この記事を書いた人

吉村博光

-yoshimura-hiromitsu-

HONZレビュアー

出版総合商社トーハンで本屋さんへの販売提案を行うほか、書評などを通じて一般の方々に本を紹介する活動を行っている。また、書店×IT「マクルーハンの本棚 」第2弾として企画した「AI書店員ミームさん」は、テレビで取り上げられるなど、業界内外で大きな話題となった。私生活では、2児の父で介護中。趣味は競馬と読書。そんな日常と地続きの本をご紹介していきたい。


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