何度も再読するだろう、「岩田さん」の珠玉の言葉たち 

高井浩章 経済記者

『岩田さん』株式会社ほぼ日
ほぼ日刊イトイ新聞/編

 

 

55歳の若さで亡くなった元任天堂社長、岩田聡氏のインタビューや語録を収集・再構成した本書は、すでに関係各方面から絶賛されている。私にとっても、現時点で「今年のベストスリー」入り必至のヒットだ。おそらく今後、何度も読み返して、「オールタイムベスト20」の一角を占めることとなるだろう。

 

白状しておくと、私は任天堂の信者だ。インベーダーブームの尻尾をリアルタイムで経験した40年来のゲーマーであり、「ゼルダ」の最新作が出れば、対応ハード購入を含めてプレイを半ば自らに義務付けているほどの信者だ。本書に収録されている、世界最高のゲームクリエイター宮本茂氏と、長年、岩田氏と親交のあった糸井重里氏が思い出を語るインタビュー部分では、おもわず涙があふれた。

 

そんな「ゲーマー成分」を抜きにしても、この「岩田さん」は稀有な一冊であると強く推したい。感動を薄めたくないのでここでは引用は避けるが、岩田氏の人生観、経営論、ゲームへの情熱、そのすべてに知性と愛情があふれている。

 

初読の際、「これは」と思う発言に出会うたびに付箋を貼っていったら、2~3ページに1枚というペースになってしまい、「これはどうせ何度も通読する本だ」とマーキングをあきらめたほど金言・名言の宝庫だ。

 

「まわりの人がしあわせそうな顔をする」「みんながハッピーであることを実現したい」を信条とした稀有な経営者にしてゲームクリエイター、そして何より自身がゲームを愛するゲーマーであった岩田氏の歩みを凝縮した本書。岩田氏のご冥福を改めてお祈りするとともに、この「語り継がれるべき語録」を残すことに尽力した関係者に謝意を表したい。

 

 

『岩田さん』株式会社ほぼ日
ほぼ日刊イトイ新聞/編

この記事を書いた人

高井浩章

-takai-hiroaki-

経済記者

1972年生まれ、愛知県出身。経済記者・デスクとして20年超の経験がある。2016年春から2年、ロンドンに駐在。現在は都内在住。三姉妹の父親で、デビュー作「おカネの教室」は、娘に向けて7年にわたって家庭内連載した小説を改稿したもの。趣味はLEGOとビリヤード。noteで「おカネの教室」の創作秘話や新潮社フォーサイトのマンガコラム連載を無料公開中。

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