書店員が語る、ノンフィクション本大賞『ぼくイエ』ヒットの裏側

樋口麻衣 勝木書店本店

『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』新潮社
ブレイディみかこ/著

 

【勝木書店本店でも大展開】

 

『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』が「Yahoo!ニュース|本屋大賞2019ノンフィクション本大賞」を受賞しました。著者のブレイディみかこさん、おめでとうございます。とにかくたくさんの人に読まれてほしいと思っていた作品ですので、この受賞は私にとっても本当に嬉しいことでした。受賞発表後、店頭でもたくさんの人が購入されていて、現在、累計23万部という大ヒットとなっています。
 

このような大ヒットになったのは、もちろん、作品自体が持つ魅力によるところが大きいと思います。それに加えて、発売前からこの作品を応援させていただいていた立場から考えると、もう一つの大きな要因があったと思います。それは、「この作品を届けたいという思いの強さ」です。

 

発行元の新潮社では、この本を届けるため、「チームブレイディ」が組まれたそうです。チームブレイディの皆様は、感想を送ったすべての書店に、その書店独自のオリジナルPOPを作って届けてくださいました。また、定期的に「ぼくイエ」通信というメールで、この作品に対する思いや動きを伝えてくださいました。この作品を読んだ書店員はきっとそれぞれの売場で、この作品を届けたいという思いを強くしていたことと思います。普段は「点」でしかない、「届けたい」という思いが結びつき、結びついた思いが熱量の渦となって、この作品を盛り上げる力になったと感じています。この作品には、「読むと誰かに伝えたくなる、誰かと一緒に考えたくなる」という、熱量の種があります。本を売る立場の人たちで育てられた種は、今度は読者の間でも育てられ、さらに大きな熱量となっているので、この作品が広がっていくと信じています。

 

この本の帯には、「一生モノの課題図書」というキャッチコピーが書かれています。これから先、社会は変化し続け、私たちを取り巻く問題もますます多様になっていくことでしょう。そして、社会が変化するだけでなく、私たち自身もまた、日々たくさんの人と出会い、変化し続けています。だからこそ、この本の大きなテーマである、エンパシーという言葉を心に刻んでおきたい。どんな時代のどんな人にとっても、この本は「一生モノの課題図書」であると心から思っています。私はこれからもずっとこの本を届け続けます。読まれた方も、もしよろしければ誰かに届けてください。どうかたくさんの人に届きますように。

 

樋口さんの『ぼくイエ』書評はこちら!

 

『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』新潮社
ブレイディみかこ/著

この記事を書いた人

樋口麻衣

-higuchi-mai-

勝木書店本店

1982年福井県生まれ。担当は文庫・文芸書。書店員となるきっかけとなった『異人たちの館』(折原一著)が2018年本屋大賞の超発掘本に選ばれる。過去のブックレビューとして、WEB本の雑誌「横丁カフェ」がある。好きなジャンルはミステリですが、書店員になって読書の幅が広がって、毎日読書が楽しいです!

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